消費者法ニュース1月号に、融資一体型変額保険被害について、
国連の「ビジネスと人権作業部会」に通報する旨の椎名弁護士の記事が
掲載されました。
【三菱UFJ 銀行の略奪的融資を
国連ビジネスと人権作業部会へ通報】
銀行の貸し手責任を問う会
事務局長 弁護士 椎 名 麻 紗 枝
1980年代後半に自殺者も生むなど大きな社会問題となった融資一体型変額保険の被害は、40年経過しましたが、いまもって、問題が解決したわけではありません。
その最大の原因は、被害者が裁判に訴えても、裁判所が、「借りたら返せ」の論理で、銀行の提案融資による貸し手責任を認めず、借り手の自己責任を強要しているからです。しかし、銀行の融資一体型変額保険の販売は、「融資の二大鉄則」(正当な資金使途、十分な返済力)を大きく逸脱しただけではなく、バブル崩壊を目前にして、返済が不可能になることを予見しながら、詐欺的手法で過剰な融資を押しつけ、バブル崩壊後、銀行は貸付金の回収のために、債権者の自宅などの不動産に競売を強行するにいたりました。
そのため融資一体型変額保険の被害者の多くは、銀行からは、利払いをしないと担保に取られた自宅を競売にかけると脅かされ、生活を切り詰めて利払いを継続してきました。
しかし、ここにきて、被害者も高齢化し、利払いに窮するに至ったところ、三菱UFJ銀行は、被害者の年金などを入金する口座の預金を取り立て、また、担保にとっていた住居に競売の申し立てをすると通告するにいたってきました。年金も奪われ、生活してきた住居を失えば、まさに生存そのものが脅かされます。
ところで、アメリカでも、2008年に、サブプライムローンの債務者400万世帯が、急激な利払いのため、利払いが出来なくなり、住んでいた自宅を差し押さえられ、ホームレスとなる深刻な事件が発生しました。サブプライムローンの債務者は、金融機関による「略奪的融資」と呼んでいます。しかし、サブプライムローンでは、融資金で購入した自宅を差押えるのに対し、融資一体型変額保険では、融資金で購入した変額保険ではなく、元々持っていた自宅などの不動産を差押えするのですから、銀行の略奪性はサブプライムローンよりはるかに酷いといえます。
このような金融機関の略奪的融資による生存的財産権侵害は世界中で起こりうる問題であり、三菱UFJ銀行による融資一体型変額保険事件は、大規模かつ組織的な事例です。そこで、三菱UFJ銀行の被害者は、国連ビジネスと人権作業部会に対し、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、三菱UFJ銀行の「略奪的融資」についての実態調査とそれに基づいて三菱UFJ銀行の人権侵害を是正する勧告を求めて、通報することを決意したものです。
国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」は、ビジネスと人権に関するもっとも権威ある規範として国際社会に定着しています。
日本でもジャニーズ性加害事件で広く知られましたが、今後銀行融資についても、この指導原則が採用され、略奪的融資による人権侵害が是正されることを望みます。
※サブプライムローン債務者の箇所ですが、掲載紙には40万世帯と記載されましたが、
正しくは400万世帯となります。