【C F D取引における海外証券会社の無法取引 実態報告書】

中小企業等金融債務者保護推進議員連盟 総会報告2023.6.6

C F D取引における海外証券会社の無法な取引の実態の報告書

事案のご説明

( 1 )弊社は、都内で自己資金の投資、運用を行っています。今回弊社が経験した事例は、いま岸田内閣が推し進めようとする「貯蓄から投資」という政策が、何の規制もないまま進められたばあい、どれだけ投資家、消費者を危険に晒すことになるかのさきがけとなる出来事であると考え、ご報告する次第です。

②取引口座開設とニッケルC F D取引の開始

ご報告する事件の相手方である外資系証券会社(以下、「A社」といいます)は、英国に本拠を置く金融機関の日本法人として、東京にオフィスを構え、関東財務局に金融商品取引業者、並びに経済産業省に商品先物取引業者として登録されています。同社は、金融オンライン取引で、C F D (Contract For Difference)取引と呼ばれる差金決済取引を提供しており、HP上では「世界31万人以上のトレーダーが選ぶC F D世界No.1」と謳っています。

弊社は、A社が、日本国内において、他社が追随できないほどの幅広い商品先物(コモディティ)の銘柄をA社がC F D取引で提供していたため、2021年半ばに同社に口座を開設しました。また、弊社は日々、市場の需給に関して日々確認をしており、電気自動車用バッテリーに用いられ、将来的な需要増大が予想されるニッケルに注目していました。そのような中、20221月以降、弊社は日本で唯一ニッケルC F Dを取引できるため、同社ニッケルC F Dの買いポジション(買い建玉)を保有しました。

(3)事件(取消しと無断売買)の発生

① 2022年224日にロシアがウクライナに侵攻したことに伴い、供給不安がより高まると、ニッケル価格が大きく上昇し始めました。

侵攻から2週間が経過した38日、前日に続いて、ニッケル価格がさらに高騰したため、弊社はA社にてニッケルC F Dの保有買いポジションすべてを決済し、利益を確定させました。翌日、39日朝にA社から受信した日次の取引報告(ステートメント)でも、弊社の利益が確定していることが記載されていました。

②弊社は39日、出金処理をA社に依頼しました。しかし、同日夕方、A社は出金拒否を通告してきたのです。

そればかりか、A社は39日の出金拒否通知の僅か数分前に、前日8日の取引に関して、すでに成立した取引を取り消すと通告してきました。この成立した取引の取消だけでも前代未聞のところ、なんとA社は、弊社が前日8日に売却(決済)した価格と同じ価格で、弊社名義の新たなニッケルCFL)の買いポジションを勝手に立て直すことも通告してきました。これは、明確な無断売買です。

③ A社が、既に成立した弊社の取引を一方的に取り消した理由は、ロンドン金属取引所(以下「LME」といいます。)が、38日に高騰したニッケルの取引を停止した上、成立した取引まで取り消す異例の措置を発表し、このためA社の第三者のカバー取引がキャンセルされたというものです。なお、LMEからの一連の措置発表は我々がポジションを全て決済した後に、発生したものです。

 

④ A社は弊社の売り注文(決済注文)に全て応じており、これは相対取引の中で決済取引が全て成立したことを意味します。また取引所取引でもないため、LMEでの取引と、 A社と弊社の取引は一切関係ありません。さらに、A社の取引先、及びその先で何が起ころうと、我々、顧客にとってみれば何も関係のない出来事です。

⑤ その後、弊社はA社に抗議し、取引取消は容認できない旨伝えましたが、相手にされず、39日夜、A社は同社の重要事項説明書の禁止事項にあたる無断売買を敢行しました。

 

⑥ 利益の喪失と損失の拡大

弊社を含め本件取引を行っていたA社の顧客は結局、2022316日にLMEがニッケル取引を再開した後も、A社にて322日まで売買ができませんでした。その間、ニッケル価格は暴落を続け、我々はA社より、底なし沼に落とされたに等しい、無断で作られたポジションの損失がどこまで拡大するもわからない異常なまでの恐怖感を強いられました。そして322日、A社が、問題の買いポジションを強制決済する形で幕が閉じられ、

3月8日に得られる筈の弊社の利益は奪われてしまいました。

 

(4)最後に

以上が弊社の事例となります。日本には英国等と異なり、特に商品C F D取引にはしつかりとした法規制がありません。したがって、しかるべき法規制を設けることが急務であると考えます。そのうえ、A社は日本の監督当局から認可を得ているにも関わらず、本国からの指示に従うだけで、日本法人独自のリスク管理体制、コンプライアンス体制が存在していません。したがって、認可の妥当性に関しても改めて調査を行うべきだと考えます。さらに弊社の調査では、日本市場から得られるA社の稼ぎの計上は、日本にある同社( 40億円)より、英国本社(160億円)の取り分の方が4倍大きく、グループ内で実体のない利益の付け替えが行われている可能性が高く、海外の不当な利益の流出についても、合わせて調査をしていただく必要があると考えています。

■用語のご説明

( 1 )差金決済取引(C F D取引)

C F D取引では、証拠金を預託し、株式、株価指数・商品価格を参照し、開始取引時(建玉)時と、終了取引時(決済取引時)の価格差により決済が行われる取引です。差額だけをする取引ですので、利益がでたら、利益分のみ受け取り、損失が出たら損失分のみを支払うという方たちで取引を行います。も同じ差金決済取引の一つです。預託した証拠金に

(2 )相対取引

相対(店頭)取引の定義は、売りたい人と買いたい人がそれぞれ11の場合の取引のことで、当事者同士であらかじめ「価格」「数量」「決済方法」を決めてから行います。また「取引所外取引」の一つでもあります。いわば、二者の間だけで、条件の合意があれば成立する取引のことで、弊社とA社のC F D取引も同様です。

相対取引のため、顧客の利益はA社の損失となりますが、通常、証券会社は顧客との相対取引の結果、自身の損失のリスクを抱えないよう、自らリスク管理(第三者の金融機関に証券会社が行うカバー取引)を行っています。しかし、A社がどの様にリスク管理を行うかは、成立した相対取引には関係ありません。

以上