会の目的

「銀行の貸し手責任を問う会」は学者、研究者、弁護士有志の呼びかけにより1996年1月20日に発足しました。

会の発足までの一年間「銀行の貸し手責任を問う」のテーマで5回のシムポジウムを開催してきましたが、毎回シムポジウムには、100名を越える人々の参加がありました。参加された銀行被害者の多くはバブル期に銀行の「提案融資」の名のもとに、押し付け過剰融資の被害にあった人たちでした。被害者の多くに共通 していることは、もともとは借金の必要などなかったのに、銀行から、このままでは相続が発生したら、家を売らなければ相続税が支払えなくなると脅かされ、変額保険、不動産共同投資、海外不動産などの購入や、立体駐車場の建築をすすめられ、その資金の貸付を強いられたのです。金融被害の代表的なサラ金被害の場合でも、サラ金業者が無理やり借り手のところまで押し掛け、借金をさせることはないのに、銀行被害の場合は銀行の方から狙いをちけて借り手のところに押し掛け、借金の使途を提案して借金を勧める提案型融資が行われたのです。イギリスでは、Unsolicited call(招かれざる訪問)として禁止されているものです。

このような銀行の押し付け融資が行われたのは、1982年以降の金融緩和・自由化政策によって企業の銀行離れが進むなかで、貸し出し先の確保に躍起となっていた都市銀行が、資金使途と年収についての厳格な審査基準をもとに融資するというこれまでの融資姿勢をかなぐり捨てて、ともかく不動産さえあれば資金使途も問わず、年収も度外視した大型フリーローンの導入による融資を競ったことによるものです。しかも、銀行被害の場合、被害者の多くが、年金暮らしの高齢者であるのに、一億円を超える莫大な借金をさせられていることです。

このように年金暮らしの人にまで、多額の借金を押し付け融資すること自体、潜在的不良債権をつくり出すことになることはわかっていたのであり、バブル期の無軌道な銀行の融資行動を端的に示しています。のみならず銀行被害の被害体験が具体的に物語っているように、銀行は豊田商事まがいの詐欺商法すら行っていたのです。

ところがバブルの崩壊により、銀行は多額の不良債権をかかえることになりましたが、銀行は不良債権の処理にあたってきわめて不合理な債権回収を行っています。すなわち、バブル企業の不良債権に対しては銀行は貸し倒れ金として処理しながら、個人債務者、しかも銀行の詐欺商法の被害者に対しても、銀行は個人債務者の自宅を競売してまで回収をはかろうとしているのです。
 しかし、バブル企業の場合に、借り手の計算において借り入れしているのですから、借り手の自己責任というべきですが、銀行の押し付け提案による融資を受けた個人債務者の場合は、もっぱら銀行の計算において融資が行われたのです。なによりも銀行の貸し手責任が問われなければなりません。

ところで、大型フリーローンの被害者は、100万人に及ぶと思われます。これらの人たちは、長い人生を堅実に働いて取得した生活の基盤である自宅を銀行に奪われ、まさにホームレスになってしまうという事態が進行しているのです。また、そのために精神障害さえ引き起こされたケースさえあります。

銀行被害は、個人債務者と銀行との金銭トラブルという言葉で片づけられる問題ではなく、まさに人権問題です。

そして今、金融ビッグバンが動き始めていますが、これは第一次規制緩和をはるかにしのぐ大規模なものです。消費者保護の法的規制がないままに、消費者の自己責任だけが強く求められることになれば、どれだけ多くの被害者がうみだされることになるでしょうか。

私たち銀行の貸し手責任を問う会は、1996年1月に発足して以来、バブル期の無軌道な銀行の融資行動によってもたらされた変額保険や不動産共同融資をはじめとするたくさんの銀行被害者のために、「銀行の貸し手責任」についての社会的コンセンサスを広め、銀行取引についての消費者保護の立法化とさらにその被害の迅速な救済のための公正な仲裁機関の設置を目指して活動してきました。今後も銀行による人権侵害の救済に向けて、研究および活動を行っていきます。どうぞ積極的なご参加およびご協力をいただけますようお願い申しあげます。