銀行の貸し手責任を問う会会報 No.2 (1996.7.10)

レンダー・ライアビリティをめぐるアメリカの最近の状況について~楠本くに代氏を招き研究会ひらく

4月24日の研究会は、楠本くに代氏(消費者問題研究者)を講師に招き、東京都労政会館で開かれ、約80人が参加しました。楠本さんは3月26日から4月6日まで資料収集のため訪米、そのホットな情報をもとに、一、アメリカにおける変額保険の問題-性格、規制、売り方、融資・担保など-、2、金融取引における消費者保護-監視機関、消費者保護法-、3、レンダー・ライアビリティ(銀行の貸し手責任)訴訟の最近の状況などを中心に報告しました。豊富な事例と、見識にもとづいた楠本さんの話は、参加者に多大な感銘を与えました。(編集部)

私がこの資料収集を意図したその問題意識は、日本の金融政策は終始一貫、産業保護ということに重点が置かれて、私たち消費者を保護する視点というものが全くなかった。その結果 が、バブル期の無軌道な金融機関の行動を生み、現在に至っている。ですから私たちは、いま起こっている金融取引における様々な問題をひとつひとつ解決していく中で、新しい消費者保護のシステムをそういう解決の中からつくりあげていかなければならないのではないかと考えました。そういう観点から、私は六つの問題意識をもって調査にのぞみました。

私がこの資料収集を意図したその問題意識は、日本の金融政策は終始一貫、産業保護ということに重点が置かれて、私たち消費者を保護する視点というものが全くなかった。その結果 が、バブル期の無軌道な金融機関の行動を生み、現在に至っている。ですから私たちは、いま起こっている金融取引における様々な問題をひとつひとつ解決していく中で、新しい消費者保護のシステムをそういう解決の中からつくりあげていかなければならないのではないかと考えました。そういう観点から、私は六つの問題意識をもって調査にのぞみました。

第二点目は金融取引一般に消費者保護のシステムが存在しない。消費者保護の法律もないし、もちろんその監督する機関もない。アメリカではそうしたシステムも、また、金融機関を監督する機関もしっかりと整っていると聞いていたので、その法制度の問題とそれを監督する機関の問題をしっかりみてきたい。

三点目は、そうはいっても、法システムがないから消費者は救済されないというのでは非常に困るわけなので、何らかの方法で訴訟以外にもっと簡単に、消費者が救済されるようなシステムを調べてみたい。

第四番目には、消費者から預金を集めてそれを運用して利益を得ている銀行に、その利益を地域に還元するという視点が日本には全くない。アメリカではこうした問題がどのようになっているのか。

第五番目には、いま非常に問題になっている、住専だとか、その他の不良債権についてきちっとしたシステム作りが必要ではないか、しかもそのプロセスの中に、社会政策的な視点が必要である。そうした問題がアメリカでは、どのようになっているのか。

六番目は、いま日本では、「アメリカのレンダー・ライアビリティは、鎮静化傾向にある」というようなことが一部で言われているが果 たしてどうなのか、もしそうでなかったとしたら、一見、鎮静化と見えるレンダー・ライアビリティの現象を私たちはどのように捉えて、どう活かしたらいいのか。

こういう六つの問題意識を持っていったのですけれども、実際に自分の足で歩いてみたら、いろいろな新しい視点が得られました。

今回訪れたのは証券取引監視委員会(SEC)、ニューヨーク州銀行省(banking department)預金保険機構(FDIC)資料室、連邦準備制度(FRS)資料収集のみ、証券業協会(NASD)、銀行協会(ABA)、全米仲裁協会(AAA)、チェース・マンハッタン、ブラウン・ブラザーズ、ニューヨーク生命等でした。

一、変額保険

まず第一に、変額保険なんですけれども、私はこの変額保険というものに対して、かねてから非常に大きな疑問を持っていましたので、日本での変額保険での問題状況というものを話しました。そして、銀行が変額保険の保険金を一括融資をして、変額保険を買わせるというような契約がアメリカにもあるのですかと、質問しました。するとニューヨーク生命で私のインタビューに応じてくださった二人の方は、一様にものすごく驚いた表情をされて、それはもう絶対にやりません、というお話でした。その後、証券取引監視委員会とか銀行協会にも同じような質問をしてみました。どこで聞いても、変額保険の保険料に融資をしてそれで変額保険を買わせるというような、売り方は聞いたことがない、非常に驚いた、こんなふうな言い方でした。それで私は、具体的にそれは何か法的根拠があるのですが、何か法律によって禁止されているのですかと質問をしたのですが、やはりそれについてはどなたもはっきり分かりませんでした。  そこで帰ってきてからいろいろ調べてみました。まずは、レギュレーションTに関係があるのではないかというような示唆があったので、レギュレーションTとは何かを調べてみました。

これは、証券取引法第7条で、証券会社等が投資家に投資をする時に、その50㌫までの融資しかできないという規定、それがレギュレーションtだったわけです。そのすぐ後のレギュレーションuというところがありましたので、これも読みましたら、これは銀行が有価証券の購入や保有を目的とする、資金の貸付に対する融資の限度は、やはり50㌫だという規定がレギュレーションuのなかにあります。グラス・ステイーガル法に関係があるのではないかと聞いたので、調べて見ました。グラス・ステイーガル法というのは、1933年にできた銀行法ですが、銀行の投資家への融資ということを非常に好ましくないという考え方が随所に見えます。しかしながら、ここでも変額保険そのものにはぶちあたることができませんでした。

ともかく結論として今まで分かったことは、アメリカでは、日本の様に無制限に証券投資に対し融資をしていない。そこで日本における変額保険に対する融資が、はたして不公平な取引に当たらないのかどうかを、これからしっかりと資料をもとにつめていかなければいけないと感じています。

次に担保の問題ですが、証券取引委員会に行った時に、日本では家や屋敷を第二担保に提供するというような融資の受け方をしているが、同様のことがアメリカにもありますかと聞いたら、そのような融資の仕方は聞いたことがない。証券を買うのだったらその証券だけが担保になる、といっていました。

アメリカには担保の制限をするいろいろな法律や判例があります。ウィリアム判決という有名な判決があるのだそうですが、これは、5年間にわたって同じ売り手から5種類か6種類の家財を融資を得て買った人が、一番最後のところでお金を支払えなくなってしまった。ところが全部の商品に対してお金を支払うまでは、売り手が全ての家財に担保権を持つという条項が入っていたために、この人は全商品を担保として取られると言う結果 になってしまった。こういう担保の付け方について裁判所は、パブリックポリシーに反するとして破棄差し戻しをしている。その根拠となった非良心性の法理というのは、例えば一方が選択の余地がない場合、また契約条項に一方の当事者に極めて有利な条件が入れらている場合、或いは非常に細かい字で書かれた契約条項を理解できずに契約し、結局リスクを負うことになる様な契約事項の時に、裁判所は非良心性の法理に基づいて、契約無効の判決をくだしている訳なのです。アメリカはご存じのように判例法の国ですので、こういうふうに一つ一つ出てきた判決がそれぞれ次の判決への法律の役目をしているわけです。

アメリカには担保の制限をするいろいろな法律や判例があります。ウィリアム判決という有名な判決があるのだそうですが、これは、5年間にわたって同じ売り手から5種類か6種類の家財を融資を得て買った人が、一番最後のところでお金を支払えなくなってしまった。ところが全部の商品に対してお金を支払うまでは、売り手が全ての家財に担保権を持つという条項が入っていたために、この人は全商品を担保として取られると言う結果 になってしまった。こういう担保の付け方について裁判所は、パブリックポリシーに反するとして破棄差し戻しをしている。その根拠となった非良心性の法理というのは、例えば一方が選択の余地がない場合、また契約条項に一方の当事者に極めて有利な条件が入れらている場合、或いは非常に細かい字で書かれた契約条項を理解できずに契約し、結局リスクを負うことになる様な契約事項の時に、裁判所は非良心性の法理に基づいて、契約無効の判決をくだしている訳なのです。アメリカはご存じのように判例法の国ですので、こういうふうに一つ一つ出てきた判決がそれぞれ次の判決への法律の役目をしているわけです。

こうした法律、あるいはモデル法、あるいは判例に、共通する前提は、クレジットの担保権は、abusive(濫用とか口汚いという意味)であってはいけない。それから通 常はローンの担保は購入した商品に限定されるべきである。こういうコンセンサスがあるということなんです。

●変額保険の性格・規制・売り方

まずニュウヨーク生命で、売り方について聞いてみました。

保険会社は、最初に顧客に、会った時に分厚い案内書を渡す。その一番最初のところにリスクの告知がある。絶対に、利益がある、儲かるという事は説明してはいけない。しかもこの案内書は、自分が勝手に作ってようというのではなくて、証券取引監視委員会の方にファイルされているという事でした。  ともかく変額保険というのは保険と証券と両方兼ね備えた商品であり、この基になるのがいわゆる投資信託そのものであって、だから証券としての規制がされる。それだけにディスクロージャーには非常に気を使っている。それで、しっかりとその商品の特性を説明するように徹底的にトレーニングをしている。こういうふうないいかたをしていました。契約書を持って行って渡した後でも、尚かつその会社によって違うけれども、10日から20日間の猶予期間がある。その猶予期間は無条件で解約できるようになっているということでした。

売る時に一番注意していることは何かと聞いたところ、証券という性格を持っているから適合性という事に私たちは一番注意している。最初に会った時に徹底的に事実調査をする。どういう調査をするかというと、まずその人が保険に入っているかどうか、年齢、収入、投資の経験があるかどうか、資産はあるのかどうかをしっかりと把握する。そしてそれを会社に持ち帰ってにんなで検討するんです。と言っていました。お年寄りに売るときは、非常に神経質になります、と言っていました。何に一番注意するかと言えば、やはりなんと言ってもお客が主体なんだから客に十分な収入があるかどうか、そこにやっぱり一番重点を置いて、客の立場に立ってそれを判断します、といっていました。変額保険の商品特性に合った非常にしっかりとした売り方をしているし、システム的にもきちっとしている事を強く感じた訳です。

続いて証券業協会に行きました。証券取引監視委員会が一応大まかな監督をする訳ですが、実際のディスクロージャーに関する取り締まりをするのはこの証券業協会なのです。売り方の規制だとかチエックをしたり、いわゆる広告の規制をしたり、売り手の(ブローカー)の養成をしたりしている。もしも違反した場合には罰則を課す。このように証券業協会は非常に重要な地位 を占めています。変額保険にはどういう規定がされているのか、と聞きましたら、証券に当てはまるすべての規制が変額保険にも適用されている。また、特にディスクロージャーの問題として、広告規制だとか文書規制だとかそういうものが変額保険には特別 にプラスされています、と言っていました。このようにNASDが非常に大きな役割を果 たしているようです。

以上のような話を聞きまして、日本との落差に非常に私は驚きました。日本では、変額保険という新しい商品が社会的に受け入れられる様になるための基礎作りも十分なトレーニングもないままで売られてしまった。しかも証券としての位 置づけがされていなかったので、適合性というような事にも全く関係なくうられてしまったわけです。従って、保険会社の社会的役割とか公共性の視点などが、著しく欠いていたのではないかという事を強く感じました。

銀行に関しましては、やはり、一番問題なのは銀行が融資をしたということですね。行政は、証券としてきちんと規制すべきではなかったのかと思います。リスクがあると知りつつ、しかも保険料以上の融資をするというようなあり方を、当初から認めるべきではなかったのではないでしょうか。

日本における変額保険問題はどう考えても構造的な被害としか言いようがありません。行政も企業も、消費者保護の視点をすっぽりと忘れて、企業の利益のみを追及していたのではないでしょうか。これは、日本の金融政策の全般 に係わる問題と全く同じ質を根っこのところで持っていて、それで今こうした問題が生じてきているのではないかと言うことを、アメリカからの情報でとても強く感じました。

二、金融機関における消費者保護

アメリカの銀行というのはいろいろな種類があって監督機関もそれぞれ違います。例えば、国法銀行は通 貨監督官が監督しています。州法銀行は連邦準備制度と、banking departmentという州の銀行局も関与していますし、州法銀行であるけれども連邦準備制度のメンバーではない銀行は預金保険機構が監督しています。日本の信販会社のようなものは連邦取引委員会が指導している。それらの機関の基にあるのは何かというと、いろいろ消費者保護法に基づいて連邦準備制度が規定を作っています。その規定に基づいて監督をしているのですが、それぞれの監督機関が消費者との窓口を必ず持っています。

具体的には連邦準備制度の消費者窓口がどうなっているのかというと、まず消費者苦情を受ける窓口を設けて、銀行についてのいろいろな質問に答えている。二点目は、自分達の監督下にある銀行の苦情を調査し、その苦情がどういう法律に違反しているのか、どういう規定に違反しているのか、それゆえにどういう不公平な取引であるのかという事を、いちいちしっかりと検査する。そして消費者に15日以内に書面 で回答を与えるわけなのです。もしも15日以内に回答を与える事ができない場合には、この苦情はこうこうこういう理由で調査するのに何日位 かかるのという事を、書面で出すそうです。

消費者が苦情を提起するプロセスは、まず第一に当該銀行と消費者が話し合うのが原則で、そこで解決できないときに、書面 で連邦準備制度の相談窓口に苦情を申し出る事になっています。この書面は、名前、住所、電話番号、エリアコード、それから苦情に関係した銀行員の名前、それから苦情に関係した銀行員の名前、銀行のカード・ナンバー、通 帳の番号までも記入します。それからどういう苦情の内容であるかを、書面があればそのコピーを添えて一緒に送ることになっています。

こうした苦情を受けた場合、連邦準備制度はどういう対応をするかというと、消費者問題の専門スタッフがいて銀行とコンタクトを取る。そして情報と記録を銀行から出させて、もし分からない事があれば消費者にまた電話で尋ねて、得た資料を分析し、結果 を書面で消費者に送る。もしも法律に抵触するような行為があった場合には、何々の規定に違反した行為があったので、銀行にこういう改善命令を出したということまできちんと書面 に書いて消費者に送ります。このプロセスはいい加減にされている訳ではなくて、レギュレーションAAという法律に基づいて行うわけです。

こうした消費者に対する苦情対応は、本当に隅から隅まで張りめぐらされていて、例えば開示に関する真実法だとか、預金についての預金真実法、クレジット情報の利用に関する法律、それから地域再投資法だとか、不当な債権回収に関する法律など、消費者保護法は網の目のように張りめぐらされているわけなのです。それらの消費者保護法に基づいて規定を作り、それぞれの監督機関で消費者の苦情を集めてそれに対応している。しかも書面 できちんと消費者に回答を与えている。これぞまさに法治国家だと感じました。

日本は金融自由化を全てアメリカから学んだわけですが、消費者保護法の法律とそれを監督するシステムがあるかというと、これは全くブランクになっています。30年間私たちは異常な状況に置かれていたのだということを強く感じました。数年前に、大幅な金融制度改革がされましたが、あのときに消費者に係わる保護のシステムは、全く作られませんでした。わずかに金融制度調査会の報告の中で、利用者利便という項目があったのですが、そこに何が書いてあったかというと、金融自由化によって消費者は商品選択の自由、多様化のメリットを受けるんだから自己責任がある、という事を滔々と言っている。しかし、金融自由化で一番被害を受けるのは弱者である消費者だと思うのです。ですから金融自由化の前提としては、どうしても、消費者を保護するシステムとか法律、それを監督する監査システムというものがなければいけないと思うのですが、そういうものには全く触れられていません。そういう消費者保護の状況なのだという事を私は強く感じました。

三、レンダー・ライアビリティ訴訟

レンダー・ライアビリティ訴訟について私は尋ねてみたいことが二つありました。一つは、日本では今レンダー・ライアビリティ訴訟は下火になっている、鎮静化の方向にある、というような考え方があるが、これに対してどう考えたらいいのか、ということです。 鎮静化という事に対する見方は三つくらいあると思います(紙面 の都合で省略-編集部)。その三つの見方を銀行協会で述べましたところ大体同じような見方をしているようで、ちょっとほっとしました。

私が鎮静化していますかと聞くと、確かに控訴審の段階では銀行にとって有利な判決が出ているし、州法等でもかなり銀行に有利な方向に法律の改正がされている部分もある。だけれども銀行が多くを学んだ事が大きな原因ではないだろうか。しかし、同時に銀行経営に与える影響は依然として深刻なんですよ、と言っていました。銀行は訴訟に対応するために非常に強力な部門を作り上げてきたのだそうです。過去の例から考えていつ何時新しい分野のレンダー・ライアビリティ訴訟が提起されるか分からない。現に訴訟も起きていない、それが深刻な状況になってきているということでした。

次に私は、よく一般的にレンダー・ライアビリティというのは、企業と銀行を律するのであった消費者は関係ないじゃないですかと聞かれるが・・・と言いましたら、銀行協会の人は、確かに主として中小企業と銀行のトラブルがレンダー・ライアビリティのケースになっていることが多いけれども、レンダー・ライアビリティというのは、一般 法に基づいて、あるいは制定法に基づいて提起されるものであるわけだから、これは必ずしも業者間を律する法律ではないんですよと言っていました、大体同じ様な見方をしているなということを感じてきました。

最後に、短い旅行でしたけれども、違う角度から新しい視点を得る機会に恵まれたことを喜んでいます。問題点がたくさんあって、これをこれから調べていくのが大変だと思いますが、本とかそういうものではなくて、足で歩いて聞くということがとても大事だということを強く感じました。

(文責 編集部)


日本でも銀行評価システムを---講演を聞いて

4月24日の研究会で楠本さんから銀行の貸し手責任をめぐる、アメリカにおける最近のホット情報の報告を聞き、金融をめぐる日本の乱脈な仕振りとあまりにも乖離していることにビックリしました。

特に感動したのは、アメリカでは、地域再投資法に基づき、銀行の地域還元評価の12項目があると聞いたことです。これは、ディスクロージャーと並んで、消費者・利用者の側から銀行を選ぶ重要な視点であり、これが銀行の地域への再投資や、地域貢献度のバロメーターとして、社会的監視システムへの重要な第一歩だと思います。

日本にはこのように、消費者・利用者の側から銀行を評価する仕組みやルールは現存しませんが、消費者運動として、日本版の地域貢献度評価に取り組む価値があるように思います。参考までにアメリカの地域還元評価の12項目を紹介しておきます。(M)

●地域還元評価項目 一.地域のクレジット・ニーズ
 1.地域のクレジット・ニーズを探る為の活動
 2.役員会の関与のしかた
二.市場調査とクレジットのタイプ
 3.市場調査と住民にクレジットサービスを知らせる為のプログラム
 4.オリジナル商品
 5.政府関連ローンのプログラムへの参加
三.地域内のクレジット分布と営業所開閉の記録
 6.クレジットの提供、拒絶等の分布
 7.営業所の開閉と営業所のサービスの記録
四.差別その他違法なクレジット
 8.地域再投資法ステートメントに反する活動
 9.差別その他違法なクレジットの証拠
五.地域の発展
 10.地域の開発、再開発プロジェクトへの参加
 11.地域のクレジット・ニーズにこたえうる能力
 12.その他の要素


過剰融資による被害者の訴え

三月二五日に開かれたフォーラム「銀行の過剰融資による消費者被害と貸し手責任-住専問題と不良債権処理のあり方を考える」(主催・銀行の介して責任を問う会)でつぎのような被害の事実が切々と訴えられました。

■京都のSさん  取引銀行 三和銀行

若い頃にモデルをしていたが、引退して喫茶店をはじめた。しかし、体をこわしてからは、医者と仲良くつき合いながら生活をしてきた。

母一人、娘一人の生活。1986年一人娘の将来を考えて、自宅を売却して女子専用のマンションを建てる計画をたてた。自宅の売却も決まり、すべては青写 真どおり進んでいた。 ところが、仮住まい先のマンションのオーナーの口利きで会った三和銀行四条大宮支店の支店長に「そんな程度の借金では相続税対策にも何にもならない」「自宅の売却はやめなさい。手付け金の倍返しの資金もマンションの予定地の購入資金もすべて三和銀行が全責任をもつ」といわれた。銀行の言うとおり、自宅の売却もやめた。次々に億単位 のお金を貸し付けられ、不動産を買わされた。借金はあれよあれよという間に四億円にふくらんでしまった。収入のない私は、不安になったが、銀行は「全部三和がみるんですから。利息も用意します」と言う。

ところが、バブルがはじけた1991年10月、三和銀行は突然私を呼び出し、「支店長が替わったのですぐに物件を売ってください」と言う。三和が全部面 倒をみるからと言ったではないかと言うと「私が貸したわけではない。貸したものは貸したもの。返さないのであれば法的手続きをとるしかない」と言って95年2月、自宅をはじめ、三和銀行にすすめられて買った全ての不動産に競売をかけてきた。

三和はカネを貸すとき、娘に「お母さんに何があっても三和が面倒をみるから大丈夫。名前だけこの用紙に書いておいてください」と言ってサインさせた。印鑑は押していない。しかし、銀行は「前の人がどう言ったかは関係ない」という。娘はとうとうノイローゼになり、自殺未遂をした。そのうえ、両眼とも網膜剥離をおこし、今ではほとんど失明状態。(なお、後日三和銀行は、Sさんに対する競売申し立てを取り下げました。)

■東京のKさん  取引銀行 さくら銀行

満79歳。僅かな年金で暮らしている。京橋に僅かな土地をもっていたところ、三和建物のセールスマンに強引にすすめられて、両隣の人と一緒に8階建ての小さなビルを建てた。持ち分は2階、3階の50坪。建築費用は三和建物の仲介でさくら銀行から借りた。金額は1億2000万円。銀行が依頼した会社の担保査定報告書を見せてもらったが、土地・建物の評価額は3億9000万円にもなっていた。融資の手続きは、三和建物と銀行がやり、私は立ち会っていない。三和建物が収支計画書をもってきたが、坪3万円から2万5000円くらいでテナントは確実につく。さくら銀行も、場所がいいからテナントは確実につくという。しかし、実際には、坪1万から1万2000円くらいしかつかなかった。銀行や三和建物の言った半分以下の資料ですから、借入金の返済もままならなくなった。

すると、95年10月、突然裁判所から競売手続きの書類が送られてきてびっくり。全く何の予告もなしに、藪から棒に競売申し立てにあい、びっくりして銀行に行ったが取り合おうともしない。何とかやりくりして毎月15万円程度なら返済できると申し出たが、さくら銀行は、貸したものはかしたもの15万円程度ではお話にならないと木で鼻をくくったような返事。どういうふうにこれを解決したらよいのか皆目見当がつかないので当惑している。

■東京のYさん  取引銀行 富士銀行

クラシックカーを使った富士銀行の節税対策で3億円以上の損害を受けた。

平成2年、私がビルを売ったことを聞きつけて、銀行は節税対策として銀行融資とクラシックカーを購入がセットになった方法をすすめた。富士銀行と三菱商事が税理士を入れて作ったもので、問題点はすべてクリアしているという。

その仕組みは次のとおり。銀行から資金を借りてクラシックカーを購入する。ただし三年後に購入価格と同額で売り主が買い戻すという買収保証がついている。買った車はリースする。減価償却や購入資金の利息を経費に計上できるので、節税対策になる。そのあとは、買収保証で車売り主に買い取ってもらい、その代金で銀行の借り入れ金を返済する。銀行は、取引の相手は三菱商事で子会社のジャビックが契約するので絶対安全と繰り返した。

私は、買う車の種類をきめるだけであとの手続きはすべて銀行がやった。売り主の会社にも、契約は銀行の支店長室でおこなわれ、三菱商事の社員も同席した。すっかり銀行を信用して、全部で四台、三億二〇〇〇万円のクラシックカーを買った。

ところが、一年もたたないうちに売り主のジャビックが倒産してしまった。三菱商事もジャビックは子会社ではなく、業務提携をしていただけで買い取りの責任はないという。そのうえ、三億二〇〇〇万円で買ったクラシックカーだが、もともと一億円程度の価値しかなく、今売っても三〇〇〇万円以下といわれた。

銀行を相手にした裁判では負けたが裁判所も「従来の都市銀行の通常の営業活動に対し、相当積極的な営業活動であり、いささか辟易する面 もないでわない」と言う。大手の都市銀行がこんなにひどいことをしたということを是非わかってほしい。


変額保険被害者・弁護士らが久保大蔵大臣と面談

五月一七日、変額保険の被害者四名と担当弁護士三名が、久保大蔵大臣と面 談致しましたので、その概略をお伝えします。

当日列席した被害者は、変額保険事件により自殺された方の遺族、裁判中にもかかわらず競売を受けた方などであり、遺族として、残された子供達に被害が及ばぬ ようにしなくてはならない、土地家屋を処分して借家住まいを始めた、銀行の取り立てに怯える日々が続いたなど、変額保険事件により壊された生活について訴えました。

これに対し大臣は、「五月十一日のテレビ朝日の報道(ザ・スクープ)は見た、個人的には義憤を感じる、銀行のことも分かっている、問題の本質がなんであるか考えたい」など、率直な気持ちを表明されました。

これに対し大臣は、「五月十一日のテレビ朝日の報道(ザ・スクープ)は見た、個人的には義憤を感じる、銀行のことも分かっている、問題の本質がなんであるか考えたい」など、率直な気持ちを表明されました。

変額保険被害者の会では、今後も行政側との対話を進め、被害の回復方法を策定して行きたいと思っています。 

(S・O)


「あとがき」

*よく、政治家と政治屋は違うといわれる。英語でいうと、ステーツマンとポリティシャン。銀行にも、バンカーとバンク・クラークという区別 があるという。銀行家と銀行屋。バンカーはてっきりゴルフ用語とばかり思っていた。

*一昔前の銀行小説で話題になった、アーサー・ヘイリーの「マネー・チェンジャーズ」。信用不安で取り付けにあった銀行家が、預金を引き上げようとする顧客にガードマンをつけて送ると申し出る。「どうして」と顧客が問う。「ひいきにしてくださった人だから、お別 れするときも友達のままでいたい」取り付け騒ぎは、これを機会におさまることになる。

*三谷一馬「彩色江戸物売図絵」の一葉「異風の托鉢」猫の面をつけ、銭を投げると、一人が「おねこ!」と叫び、仲間が「にゃごにゃご」と唱和したという。他に、朝顔売り、すだれ売り、すすき売り。会員のなかには、こうした物売りで季節の変化を感じ取られた経験のある人も多いのでは。

(Y)