銀行の貸し手責任を問う会推薦図書《金融被害からわが身を守る好著》
■『大人のマネー学入門』<リスク編・だれかの得とあなたの損>
    (実務教育出版、1400円)
 なぜ私は本書を上梓したか 著者・楠本くに代さんの訴えとお願い
   (本書の「はじめに」から) 
     目次と著者プロフィール(←クリック)      

 金融危機は、「貯蓄から投資へ」第一歩を踏み出した人々に、多大の損害を与えました。その原因の一つとして、多くの人が投資のリスクを理解しないまま、投資の世界に入ってしまったことを挙げることができます。 投資をするには、何はさておき、投資のリスクを知ることが肝心です。

 自分が買いたいと思う投資商品のリスクを知り、そのリスクを取れるかどうかを検討してから買うことが大原則です。
 しかしながら、書店の金融関係の書棚には、「こうすれば儲かる」「ラクに簡単にお金持ちになれる方法」といった、耳に心地よい本が多救並んでいますが、リスクについて述べられた本はあまり見かけません。
 そこで、本書はこれまで一般の皆さんがなかなかアプローチできず、見過ごしがちだったリスクの側面から金融問題をながめ、わかりやすく、具体例に即して情報提供することに注力しました。
 本書は、私の主婦としての視点や体験と、東京都消費生活センターなどで金融の苦情相談を受けて被害救済に取り組んだり、秀明大学で金融消費者問題や金融リテラシーについて講義をしたり、金融消費者問題研究所を拠点に、全国各地の消費生活相談員や行政職員対象の講座を行い情報交換をしたりしたプロとしての体験から生まれたものです。
 具体的には、商品分野ごとに――投資信託、株式、債券、保険、預金―― 一般の人々が日常接する商品を取り上げ、どんなリスクがあるかを書きました。また、被害に遭わないためには、現在、どのような苦情や被害が生じているかを知ることも大事ですので、苦情や被害についても書きました。さらに、私たちの取引が、どのように法で保護されているか、トラブルが生じた場合、法はどのような紛争解決機関を用意しているか、金融機関が破綻した場合、私たちの資産はどうなるかというセーフティーネットの問題も書きました。全部で58項目。3時間程度で読める分量です。
 もうすぐ入ってくる退職金をどうしようか考えている方、すでにリタイアしてこのまま預貯金にお金を入れておいていいものかどうか迷っている方、生活設計を任されている主婦の方、社会に出たばかりでこれから給料の一部を運用し将来の生活のために備えようと思っている方、そして、特にどの世代であれ、401 kで商品選択を現実にしなければならない状況にある方−そうした方々に是非読んでいただきたいと思っています。
 さまざまな読み方があると思いますが、まず目次にさっと目を通して、金融市場におけるリスクの全体像をつかんでください。次に、すすめられているあるいは関心のある項目を重点的に、契約場面に自分かいるつもりで読んでいただければと思います。
 加えて、本書は、英米国の一般向けの本、米国のSEC(証券取引委員会)や英国のFSA(金融サービス機構)の出している一般向けの冊子やパンフレットから多くを学んで書きました。投資の歴史の長い英米国では、投資が生活の一部になっています。そして、投資のリスクを理解し、それらを引き受けて消費者が投資できるよう、噛み砕いた方法を工夫して読み手にリスクを伝えています。リスクは、オブラートに包まずに残らず伝えなければならないというエトスが根付いているようです。それを何とか日本バージョンでお伝えできればと、注力しました。関心のある方は、巻末の参考文献のいくつかに当たってみてください。
 本書を通して「リスクや仕組みを理解するまでは、金融商品を買わない」という基本的な姿勢を学んでいただけることを願っています。   楠本くに代