総会報告 ……2000.9.9(土)
 


●これまでの活動

1、銀行の「貸し手責任」の理念の確立に向けて

 会が発足したのは、96年1月です。 発足した当時は、日本では、まだ銀行の貸し手責任という言葉は、今日ほど一般 的にはなっておらず、むしろ借り手の責任ばかりが強調される風潮の中にあって、会は、
1)、バブル期の銀行の融資行動およびその被害の実態を明らかにさせる。
2)、調査研究活動を通じて得られた成果をもとに、銀行の貸し手責任を明確化する立法措置を国会や政府に働きかけてゆく。
3)、問題を社会に広く訴えて社会的支持を得て、運動を広げていくことを目標として高く掲げ、活動していくことを参加者全員で確認しました。 その後、日産生命、山一証券、日債銀、長銀など金融機関の相次ぐ経営破綻とそれにともなう金融スキャンダルの発覚により、多くの人々にもバブル期における金融機関の腐敗ぶりが明らかとなり、銀行の貸し手責任を追及する私たちの活動には多くの支持と共感が寄せられてきています。
  今日までの会の活動の詳細は、別紙の活動年表のとおりですが、とりわけ、昨年2月14日の「銀行の貸し手責任を問う二時間劇場・騙す」は、銀行被害者その他多くの団体との共同のもとに1800人の参加者を得て、集会を大きく成功させることができたことは、特筆すべきことだといえるでしょう。

2、銀行被害と加害構造の実態解明に向けて
a、銀行被害は人権問題であることの理解と支持を広く求める
銀行被害は、バブル期における銀行の節度を失った融資拡大によって生み出された構造的被害であり、被害者とその家族の生活を奪うという点では、他の人権侵害事件に劣らぬ 重大な人権問題です。
 しかし、銀行被害は、単なる金銭トラブルととらえられがちなところに加えて、一般 の人にある銀行への根強い信頼が、銀行被害を人権問題だと理解する妨げとなっています。 会は、多くの人に、銀行被害は人権問題であるとの認識を深めてもらうために、被害と加害構造の実態を広めることを重視し、そのための活動に力を注ぎました。
 「銀行の貸し手責任を問う二時間劇場・騙す」もその活動の一環です。
  銀行被害者が大勢の人の前で自らの被害体験を語ることは、山田厚史氏がこれをセコンドレイプと評されましたように、たいへんな苦痛であるにもかかわらず、多くの銀行被害者が、「銀行の貸し手責任を問う二時間劇場・騙す」をはじめ、会の主催する各種のシンポジウムや集会において、またマスコミからの取材に応じて、自らの被害体験を勇気をもって語ってくれました。
 この結果、銀行被害に関する多くの人の認識が変わり、銀行被害を社会問題としてうけとめられるようになってきています。
  また、会は、銀行被害者66名自らの被害体験を手記としてまとめられたものを編集して「金融被害者怒りの手記」第1集、第2集として発表しましたが、いずれも大手都銀の悪質な詐欺まがいの共通 の手口を明らかにし、金融ビッグバンによる金融自由化に対する警鐘として、大きな反響をよびました。
b、国会への要請活動
 会は、金融消費者保護法の制定はもちろん、構造的被害である銀行被害の救済のためには、立法権をもち、また国政調査権をもつ国権の最高機関である国会を重視し、変額保険被害者の会はじめ各銀行被害者の会とともに、機会あるごとに、銀行被害の実態解明と被害の救済、金融消費者保護法の制定を求めて、国会議員への要請活動を行ってきました。 このような活動を通じて、国会議員の中にも、この問題についての認識が深まり、衆議院、参議院の各種委員会で、これらの問題が数多くとりあげられました(詳細は、怒りの手記第3集の巻末資料参照)。
  昨年2月には、超党派の国会議員による金融消費者保護法を制定させる議員の会(小沢辰男会長、海江田万里事務局長)が発足し、12月13日には、右議員の会の有志44名の衆議院議員の申し立てにより、銀行被害の実態解明のために、衆議院規則第56条の3にもとづく予備的調査が開始されました。
 衆議院議員44名が、銀行被害の実態調査の必要性を認め、予備調査に着手したことは、意義深いものです。
 会は、被害の実態解明こそは、被害の救済をはかるうえで欠かせないものだと考えていますので、今回の予備調査を被害解明の第一歩と位 置づけ、さらなる実態解明のために、ひきつづき、国政調査権の行使に注目していきます。
c、大蔵省、金融監督庁への要請活動
 銀行法24条、25条、26条、27条、28条、29条は、銀行に対する監督権限を規定しています。金融機関に対する監督権限は、大蔵大臣から、金融監督庁長官、さらに、金融庁長官と変遷していますが、監督庁は、一貫して、銀行に対する監督権限は、金融機関の経営の健全性についての監督権限しか有せず、個別 の取引について銀行を指導し、監督する立場にないとして、銀行が不当な競売をかけてきたからといって、それについて競売を取り下げるように銀行に指導することはできない、クレームがあるのであれば裁判手続きによれという対応に終始しています。 大蔵省も金融監督庁の担当者も、銀行被害者が、裁判手続きで競売を停止させるためには、競売価格の4割からの保証金を積まなければならないという裁判の実態を知らないのです。
 ところで、個別の取引でない銀行取引などないのですから、大蔵省や金融監督庁のいうとおり、銀行の個別 取引について監督庁は、指導監督する権限はないということになれば、暴力団、総会屋、ノンバンク、その他いかがわしい取引先との取引についても、監督庁は、銀行を監督指導することはできないということになるでしょう。
 3年前に、第一勧銀など大手都市銀行による総会屋への巨額な融資が社会問題となり、大蔵省の監督権限の甘さが批判されましたが、この時はさすがに大蔵省も、総会屋への融資は、銀行の個別 取引であり、大蔵省は、個別取引については監督権限はないとい弁明してはいないのです。
 そもそも、多くの銀行が不良債権の山を抱えて経営の危機に直面し、70兆円もの公的資金を注入することにしたのも、まさに大蔵省が銀行の個別 の取引について監督権限を怠ったからではありませんか。
 金融庁は、過去の反省にたって、銀行のゆきすぎた営業活動にたいして、厳しい目を向けるべきなのです。
 なお、会の所属弁護士が、大蔵省、金融監督庁へ監督権限発動の申し立てを行った結果 、各被害者の会、議員の会に所属する議員の援助のもとに、27人の銀行被害者の競売の取り下げをかちとっています。しかし、他の2人は、銀行の強い拒絶にあって、競売が強行されてしまいました。
d、国賠訴訟の検討
 また、会は、変額保険につき、国賠訴訟を検討する委員会を発足させ、専門家の協力もえて、変額保険がいかにバンクビジネスになっていたかを研究してきていますが、この研究は、他の銀行被害者の加害の構造の解明にも役立つものとなると思います。

3、金融消費者保護法の制定に向けて
 バブル期における銀行の過剰押し付け融資によって未曾有の被害が、引き起こされた原因のひとつには、金融取引なかんずく銀行取引に消費者を保護する規制が整備されていなかったことがあります。そのために、会は、早急な金融消費者保護法の制定を求めてきました。
 しかし、96年11月に、金融ビッグバンが宣言されましたが、金融ビッグバンの先進国のイギリスとは異なり、金融消費者保護法の制定はおきざりにしたままでした。規制のないままさらなる金融自由化に突入するならば、その被害の拡大は火を見るより明らかです。
 やっと99年7月6日に、世論の批判をうけて、金融審議会により、第一部会中間整理(第一次)(以下中間整理という)が、さらに12月21日に「中間整理(第二次)」が発表されましたが、この中間整理は、バブル期における金融機関のあり方を厳しく検証しようとする姿勢はまったく見受けられず、かえって、中間整理は、「取引ルールを明確化することは、利用者のモラルハザードの発生を防止すること等を通 じて、業者に対し、安心して取引を行うことを一層可能にするという側面もある」と述べるなど、金融機関のモラルハザードよりも、利用者(消費者)のモラルハザードに厳しい目をむけており、問題をすりかえています。
 会は、99年8月31日、中間整理の問題点として、
(1)金融取引における消費者理念の不在
(2)取引の規制、とりわけ不招請勧誘の禁止
(3)規制に対する監督権限
(4)紛争処理のための第三者機関の設置
などの項目にわけて意見書を作成して提出しました。 しかしながら、銀行業界をはじめとする金融界の強い反対で、金融サービス法は、先送りされ、ひとまず金融商品の販売・勧誘ルールを整備するためとして、金融商品販売法がさきの通 常国会で成立しました。しかし、金融商品販売法は、包括的な金融消費者保護法とは内容においても、遠く及ばないだけではなく、金融機関の行為規制としても不十分なものです。 いうまでもなく、取引規制を考える上で、過去に多数起きた具体的被害の検証は不可欠です。被害を検証することによって、どのような取引規制がなされていれば、このような被害は防げていたかを究明することにより、なによりも必要な取り引き規制を見いだしうる近道だからです。ところが、金融商品販売法は、取引の規制として、金融機関の説明義務を規定するが、勧誘については適性の確保に努めなければならないとするのみで、英国で禁止されている押しつけ勧誘を禁止してはいません。80年代からの金融緩和・自由化政策によって、銀行の取引先であった大手企業が、市場からコ ストの低い資金調達が可能となったことから、企業の銀行離れがすすみ、貸し出し先に躍起となった銀行は、借金の必要のなかった人に、相続税に対する不安を煽り、さまざまな提案融資を行ったのは、周知のとおりです。その代表的なものが、変額保険であり、不動産共同投資です。日本においても、押しつけ勧誘が禁止されていれば、このように大規模な被害にはならなかった筈であることを考えれば、このような押しかけ勧誘は、禁止されるべきなのです。また、金融商品販売法は、説明義務についても、説明を要求される「重要事項」と要求される説明の程度についても、たとえば、変額保険のばあい、金融商品販売法は、たんに元本欠損が生ずるおそれがあること、それが有価証券市場における相場の変動によると説明すればよいことになるので、従来変額保険で判例のレベルにも達していないことは問題です。
 いずれにしても、包括的な金融消費者保護法の制定は急務です。その法の内容については、あくまでも過去の被害の検証は欠かせません。たとえば、包括保証、信用保証委託、過剰担保や逆迂回融資(事業者の信用に不安があるばあい、その事業者から商品を購入する顧客の資産を担保に顧客に融資する形をとって、その融資金を事業者に事業資金として使わせる方法)に典型的なように、リスク分担が、公平ではなく、一方的に消費者に苛酷な負担をおわせることがひろく行われていますが、それについての規制がありません。また金融欠陥商品についても規制がなされる必要があります。
 九○年代初めに、バンクビジネスとして売られた一時払いの変額保険は、金融被害として未曾有の被害をもたらした教訓から、金融商品については、十分な規制が必要です。 金融ビッグバン以降、イギリスにおいても、膨大な金融商品があふれ、一般 消費者は、その中から適切な選択をすることは困難な状況となっています。コンシューマー・アソシエーションは、消費者は、他の商品とはことなり、金融商品の特質からその金融商品について最低の安全性についても確信をもてないのが現状であるとして、不良な金融商品は市場から排除されるべきであるとして、FSAに、消費者がリスク水準の最低基準を満たした物の中から選択できるように、金融商品についての厳しい規制を要請しています。
4、金融被害の救済に向けて
 我が国は法治国家である以上、銀行被害の救済手段として、司法的救済が保障されていなければなりません。
 しかし、日本の裁判所は、国連人権委員会からも、人権救済の役割を果たしていないという批判をうけているほどで、世界のレベルから見ても、日本の裁判所は、きわめて官僚的でその後進性が指摘されています。日本の裁判官には、国民に奉仕するという姿勢は弱く、一個人より、大企業を無批判に信用する体質があります。
 とりわけ、銀行との裁判では、この傾向は顕著です。
 最高裁も、予備的調査に対する回答で、銀行が訴えた裁判で、銀行が全面的に敗訴したケースは過去3年間で3件しかないという報告を出しています。
 バブル期の銀行の詐欺まがいの商法を少しでも知る人から見れば、裁判所が銀行を勝訴させ、銀行被害者を敗訴にするなどということは、明らかに不公正なことであることがわかります。
 金融被害者怒りの手記第三集(裁判所篇)は、銀行との裁判を闘った被害者の方々が、いかに日本の裁判所は、銀行被害者にとって、救済の役に立っていないかということを告発したものですが、とりわけ、裁判所が、銀行被害者に過大な立証責任を負わせながら、銀行に対しては、必要な証拠の提出も命じないことへの不満と怒りはたいへん大きなものがあります。
 近代民事訴訟法では、当事者対等の原則(武器対等の原則)を実質的に保障するために、証拠に近接しているものに立証責任を課すというのが原則になっており、日本においても医療過誤訴訟では、医療機関に立証責任を転換するということはしばしば行われているのに、銀行との裁判では依然、被害者に立証責任を負わせているのです。
 医療過誤訴訟と同様、証拠や専門的知識(武器)は、金融の専門家である銀行が独占しているのが実態であることを考えれば、当事者対等の原則を保障するためには、裁判所は、銀行に証拠の提出を命じるべきなのです。
 最高裁が、銀行に対し、銀行稟議書などの文書は内部文書であるとして、文書提出命令の対象となる文書ではないとした平成11年11月12日最高裁決定は、早急に改めさせなければなりません。
 他方、裁判とは別に話合いによる解決を望むばあい、民事調停制度があります。
従来は、民事調停は、近隣との間の境界の争いや友人との間の金の貸し借りなどの紛争のように、対等な立場の当事者間の紛争を互いに相手の立場に立って、互譲の精神で解決をはかるというものでしたが、近年は、金融機関、金融業者との間の調停が圧倒的に多く、昨年は、民事調停の70パーセント以上を占めています。これらの調停では、金融機関、金融業者には互譲の精神はかけらも見受けられず、調停委員も、強硬な金融機関、金融業者の態度に説得を諦めてしまうというのが実態です。調停も、粘り強く話合うということはまれで、通 常3、4回で不調になっています。したがって、調停の成立件数も30パーセント以下です。調停を担当する裁判官が、調停の非力を嘆いているほどなのです。
 このような日本における司法の現状にたって、いま多くの金融被害者の問題を早期に解決をはかるためには、イギリスのオンブズマン制度のように、調停案にたいして、債務者の側が同意したばあいには、金融機関の側ではそれを拒否できないという制度を導入した、第三者機関による仲裁制度の確立が強く望まれます。
 また、妥当な仲裁案が、提案されるためには、仲裁機関の構成が公正であることと、さらに、問題の解明のために、仲裁機関には、監督庁に認められている文書提出を求めることができる権限を与え、もし金融機関が提出を拒むばあいには、提出しないことにペナルテイを科すなどの強力な権限を付与することが必要です。
 会は、会発足時から、このような第三者機関の設置を求めてきましたが、金融トラブルの増大にともない、金融庁などでも検討されているようですが、金融庁の考えているのは、全銀協などの業界の中に設置するというもののようであり、公正中立性に大きな問題があります。

 


●これからの活動

 

1、公正な第三者仲裁機関の設置
 金融被害者の救済の現状は、前述したような状況にあることをふまえ、銀行被害者の早期の現実的な救済の方策として公正な第三者による仲裁機関の設置が急務であると考え、会として、プロジェクトチームをつくります。プロジェクトチームは、会外の研究者の参加も得て、仲裁機関の設置について、仲裁機関の性格(行政組織法上の位 置付けなど)、権限、仲裁申し立ての対象、仲裁委員の選任方法、仲裁委員の公正を担保するための方法、仲裁委員会による仲裁案の拘束力、および仲裁委員会による仲裁案についての不服申し立ての方法など具体的な法案の骨子を準備して、これを議員の会に働きかけ、議員の会より、議員立法により、法案の成立をはかります。
2、金融被害の実態と銀行の貸し手責任の解明
 44名の衆議院議員有志による予備調査による報告をてがかりに、議員の会を通 じて さらなる被害の全体像の解明を求めます。
 金融機関の不良債権は、公的資金の注入された今も、依然、金融機関はもちろん、金融庁も、その実態を、国民に明らかにすることを拒否しています。しかも、不良債権問題の処理が、先送りされているために、不良債権は増大化する中で、今後も金融機関の経営破綻は多発する恐れなしとはいえない状況にあります。
 ひきつづき、金融機関の不良債権問題は、我が国の最大の懸案事項です。そのような現状を踏まえ、世論、マスコミに働きかけるならば、大手都銀頭取を、国会に喚問して、不良債権の全容を明らかにさせる「不良債権解明特別 国会」を開催させる条件はあるといえます。
 とりわけ、個人向け不良債権は、系列ノンバンクにつけかえているため、その全体は隠されていることを明らかにして、系列ノンバンクの抱える不良債権、とりわけ個人向け不良債権の全体像を明らかにさせる。とりわけ個人向け融資の多くが、いわゆる三業種規制が強まり、バブル崩壊が始まった以後に多いことを明らかにして、銀行の背信性を明らかにして、大手都市銀行の融資の在り方についての反省を求め、その反省に立って、個人被害者に対する救済措置についての、頭取の考えを明らかにすることを求めます。
3、融資一体型変額保険についての国賠訴訟の検討
 融資一体型変額保険が、一番多く売り出されたのは、バブル崩壊がはじまった平成二年以降であり、ちょうど今年が10年目になります。そのため、借入金の返済期限が10年の満期を迎え、銀行から返済を迫られた人たちからの、相談が目だって多くなってきています。
 今年は、変額保険の第二の山を迎えているといえるでしょう。
 ところで、会は、4回にわたって、各分野の専門家による融資一体型変額保険の欠陥商品性の研究会を開催してきた結果 、融資一体型変額保険の欠陥商品性については、解明がすすみました。
 そのため、会は、融資一体型変額保険の欠陥商品性をもとに、国賠訴訟の検討会をつくり、約1年、さまざまな分野の研究者の協力も得て、検討を重ねてきた中で、変額保険がバンクビジネスとなっていった経過については、次第に明らかになってきました。
 また、同時に、大蔵省が、融資一体型変額保険は、欠陥商品であったことがわかっていたにもかかわらず、大蔵省はこれの販売を容認して、被害が多発するままに放置していたことも明かになっており、明らかに大蔵大臣には権限不行使の違法があります。
 ところで、三菱自動車が、欠陥車を30年隠してきたことが明るみに出て、今、世論からも企業責任が厳しく問われていますが、融資一体型変額保険も、多くの金融問題の専門家が指摘しているように、金融商品としては欠陥商品なのです。
 伝えられるところによれば、東京三菱銀行は、欠陥車を隠していた三菱自動車を三菱のイメージを損なうとして厳しく叱責したということですが、東京三菱銀行も、いまもって融資一体型変額保険の欠陥商品性を隠しているのですから、欠陥車を隠していた三菱自動車とまったく同じ体質であり、三菱自動車を非難する資格はありません。
 三菱自動車の企業責任と同様に、欠陥商品である融資一体型変額保険を販売した東京三菱銀行をはじめとする大手都市銀行の企業責任も厳しく問われなければなりません。 そもそも、国賠訴訟の目的は、融資一体型変額保険の被害者の全体的解決にありますので、国賠訴訟はそのひとつの選択にすぎません。もし、これらの研究成果 をもとに、「不良債権解明特別国会」で、大蔵省の監督責任および東京三菱銀行をはじめとする融資一体型変額保険を販売した大手都銀の企業責任を追及する中で、全体の問題解決がはかられるのであれば、それにこしたことはありません。
  そのためにも、国賠訴訟研究会を充実させ、多くの情報収集に努めます。
4、今後の研究会のテーマ
 会としては、下記の問題について、研究会、シンポジウム、電話110番あるいはホームページなどを通 じて、問題点を深め、改善策についての提言を行っていきます。
a、「保証人問題と裁判被害110番」
 商工ローンでは、根保証が大きな社会問題となり、貸金業規制法において改善が見られましたが、銀行の保証人問題は、根保証以上に保証人の立場を危険なものにする包括保証が横行し、しかも保証人にその保証書すら交付しないというのがまかりとおっています。 そして、裁判所は、それを容認し、銀行が包括保証の説明を保証人におこなっていなくとも、保証人の印鑑さえ押してあれば、保証人の署名がなくとも、保証は有効と認めるのです。 おそらく、このような裁判所の判決に数知れない人が泣いているはずです。
  裁判被害ともいうべき、保証人問題について、「保証人問題と裁判被害110番」を実施して、被害の実態を告発していきます。
b、日本における担保設定と競売制度の問題点
 日本では、担保設定に関しても、貸し手の債権保全の視点からしか、研究されてきませんでした。
 自宅あるいは店舗など生存の基盤である不動産にたいする担保設定については、借り手の生活破壊をもたらさないように、担保規制を行うべきです。
 また、競売手続きにしても、債務者の権利はきわめて制限されていて、競売に有効な異議を申し立てる権利が限られています。
 外国との比較において、日本における担保設定と競売制度の問題点について学習会を行います。
c、議員の会との懇談会の開催
 議員の会の小沢辰男会長は、前回で衆議院議員を引退されましたが、海江田万里事務局長をはじめほとんどの議員は、さきの衆議院の総選挙で当選されました。
 議員の会は、9月25日に会の総会を開き、会長を選出するとのことですので、その後に、議員の会との懇談会をもち、議員の会の活動を強めるよう要請したいと考えています。
d、金融被害者怒りの手記第4集(裁判所篇)の続刊
 第3集は、東京地裁、東京高裁のそれぞれ民事部の全裁判官と最高裁の裁判官全員に郵送しました。
 怒りの手記は、裁判当事者の痛烈な裁判官批判です。 裁判官は、裁判当事者が自分の行った裁判についてどう考えているかなどほとんど考えてたことはないと思われます。この手記を読んだ裁判官は、実名をあげられた裁判官はもちろん、そうでなくとも、裁判当事者がこのような批判をもっていることを知って、おそらく大きなショックをうけたはずです。
 良心的な裁判官の中には、これを真面目にうけとめようとする裁判官もあらわれるなど、変化のきざしも見られてきています。
  第3集発行のあとに手記を寄せてきていただいている方もいますので、第3集に間に合わなかった方で手記を乗せたいという方のために、第4集を発行したいと考えています。
e、「あるべき金融消費者保護法について」のシンポジウム
 過去の被害の事例を検証して、あるべき金融消費者保護法を考え、法案の骨子を策定します。
f、「金融被害者の救済のための仲裁機関はどうあるべきか。」のシンポジウム
 海外、および国内の他の紛争処理に関する仲裁機関の例を参考にして、被害者救済につながる仲裁機関の在り方について考えます。
g、仮題「裁判官を裁く裁判劇」
 裁判当事者の見た裁判官を、多くの人に知ってもらい、海外の裁判官との比較においてあるべき裁判官を考えます。
5、会報の発行と財政と組織の前進に向けて
 会報の担当者がやめられて、後任が見つからなかったために会報の発行が遅滞してしまうことになり、会員の皆様にはご迷惑をかけてしまいました。今後は、4カ月に一回は会報をお送りできるように努めたいと考えています。また念願の会のホームページも9月から開設されることになりましたので、これからは情報は、ホームページを通 じてもお届けできると思います。
 また、会費についても、十分集金活動ができずに、結果的には財政に負担をかけることになってしまいましたので、今後はこれを改めます。財政は、会員が増加すれば、会財政も潤沢になるので、会員の増大をはかるべきでしたが、会員拡大は意識的に取り組まれずにきてしまったことの反省に立って、積極的に会員の拡大をはかります。会は、会の趣旨に賛同する個人であれば、誰でも参加できることを特徴としており、したがって、会は、銀行被害者はもちろん、学者、弁護士、銀行員をふくめ多彩 な方々が参加されておりますのに、それぞれの特徴を生かした活動ができませんでしたので、今後は、ぜひ多くの会員の方々、世話人の方々の力を発揮していただけるような会の活動をめざします。
 会報の発行をはじめ広報活動や、シンポジウムの開催など会の活動を今後発展充実させるうえで、多くの会員の皆様のご協力をいただきたく、もし、ご協力いただける分野がありましたら、ぜひお申し出いただき、積極的なご参加をお願いいたします。



NEWS

 


NEWS