『無法回収』「不良債権ビジネス」の底知れぬ深き闇(椎名麻紗枝・今西憲之共著、講談社、1700円):なぜ本書を出版したか&目次・著者プロフィール(ページ末尾)
はじめに
消費者金融業界に大きな変動が起きている。二〇〇二年に約二万七〇〇〇社あった貸金業者は、二〇〇八年六月末現在、八二七二社にまで減っている。約七割の激減である。灰色金利の撤廃、過払い利息の返還請求訴訟の多発などにより、かつてのような「サラ金業のうまみ」がなくなったからだ。 | |
そのため、大手消費者金融は、金融サービサー業務に活路を見出そうとして債権回収業務に参入してきている。カネを貸してその利息で儲けるのではなく、銀行など金融機関が持つ不良債権をできるだけ安く買い取り、可能なかぎり高い金額を回収して、その差額で儲けようというのだ。 |
はじめに
序章「債権回収」の無間地獄
・三石三鳥≠フサービサー
・債権回収の専門家
・不良債権ビジネス、儲けの構図
・チェリーピック方式で高騰した債権価格
・「第二のサラ金地獄」の始まり
・一般人に広がる回収の網
・ターゲットは個人の未納年金・税金
第一章 骨までしゃぶる「回収の闇紳士」
・ある日突然、不幸のどん底に
・外資が狙った三〇兆円不良債権市場
・社会の歪みは「弱者」に向かう
・三井住友銀行とゴールドマン・サックス
・不公平な脱法行為
・下町の喫茶店の悲劇
・金融機関のマネーゲーム
・不穏な債権譲渡
・待ち受けていた「地獄」
・録音された回収マンの桐喝
・債務者は「奴隷」か?
・元借金王の怒り
・よみがえった幽霊債権
・ジャパンリアルティ社の謎
・見え隠れする「闇の世界」の住人
第二章RCCの罪と罰
・虚像の国策会社
・「血も涙もある回収」の嘘
・RCCは旧住専巨額債務者になぜ甘い?
・五四億円を免除された「ミスター住専」
・恣意的すぎる債務免除
・連帯保証人までしやぶり尽くせ
・地方銀行の裏切り
・「一族で責任をもって返してください」
・RCC送りは死刑判決
・不当競売から不法侵入までなんでもあり
・一貫性のない回収計画とご都合主義
・伝家の宝刀「財産調査権」
・筒抜けの個人情報
・国税・税務署が情報源!?
・RCCが落札額を極秘にする理由
・不良品の抱き合わせ販売
・「闇の世界」の影
・正体不明の管理会社
・民主党・原口議員の追及
・得体の知れない登場人物
・満井忠男被告の証言
・口封じの刑事告発
・朝鮮総連詐欺事件の真相
・安倍元首相への手紙
・企業再生ならぬ企業つぶし
・未来を根こそぎ奪うRCC
第三章 回収の手先と化した裁判所
・「粕屋ホテル」の破産
・売却益狙いのスキーム
・「お飾り」の破産管財人
・疑惑の事業譲渡先選定手続き
・異例ずくめのスピード結審
・記録から消えた四人目の裁判官
・「裁判官の独立」を侵す暴挙
・RCCの破産申し立ての変質
・破産手続きの「奇手」
・RCCに洗脳された裁判所
・元裁判官の告白
・裁判で勝つのはRCC
第四章 京都の名刹をめぐる「謀略」
・何有荘をめぐるRCCの謀略
・ダイヤモンドファクターと満井被告
・債権譲渡の「偽装」
・「国策捜査」疑惑
・奇妙な裁判
・人間への温かさを欠く裁判官
・有罪認定は正しかったか
・「被害者」「加害者」逆転の構図
・「悪質な債務者」というレッテル貼り
・違法な執行保全命令
・手回しのよすぎる破産申し立て
・「証人」への恫喝
・「国家権力や。逆らったらあかん」
・RCCからの配達証明
・脅してサインさせた上申書
・宗教法人解散命令の申し立て
・裁判所の正体
第五章RCC歴代社長のスキャンダル
・中坊公平初代社長のマスコミ操作
・腰砕けのジャーナリズム
・朝日新聞社への「恫喝」
・RCCは「ハゲタカ」か?
・「平成の鬼平」の詐欺疑惑
・中小企業の死刑場
・社長直轄案件で「謀議」を主導
・もう一つの隠された「詐欺」
・策に溺れて大赤字
・「起訴猶予」で社長も弁護士資格も返上
・かなわなかった「叙勲」の夢
・二代目社長・鬼追氏の「口利き」
・取り立て対象から顧問料!?
・不透明な顧問企業の実態
・軽率すぎる行為
・「時効」でも消えてなくならない悪行
第六章 棄民国家・ニツポン
・サブプライム問題より酷い日本の銀行犯罪
・「貸し手責任」を無視する放置国家
・RCCと銀行の共同戦線
・増大する破産申し立てを利用した「脅し」
・連帯保証人に迫る魔の手
終章「ハゲタカ」から国民を守る方法
・債務者は、取り立ての対象にすぎないのか
・銀行融資の「無法地帯」が、「略奪的融資」を生んだ
・債権者優先の法整備という愚策
・あべこべの裁判所
・なぜ銀行だけが独り勝ちするか
・裁判所は、なぜ銀行の味方なのか
・新たな立法が必要だ!
1 債権譲渡に一定の規制 303
2 債務者、債権者対等の実質的保障
3 回収のルールづくり
◆最後に
◆参考資料
◆共著者のプロフィール◆
■椎名麻紗枝(しいな・まさえ)
1942年、茨城県に生まれる。弁護士。1964年に中央大学法学部を卒業し、同年司法試験に合格。医療過誤、被爆者問題、薬害エイズ・HIVなど、人権問題に関わる。バブル期に、大銀行が「フリーローン」を使って個人への押し付け過剰融資を実行し、その結果、住む家を失う、自殺に追い込まれるなど、個人が食い物にされてきた実態を知る。以後一貫して被害者の救済・弁護活動に奔走している。1996年1月より「銀行の貸し手責任を問う会」事務局長。著書には『原爆犯罪――被爆者はなぜ放置されたか――』『離婚・再婚と子ども』(以上、大月書店)、『100万人を破滅させた大銀行の犯罪』(講談社)などがある。
■今西憲之(いまにし・のりゆき)
1966年、大阪府に生まれる。ジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。著書には『内部告発権力者に弓を引いた三人の男たち』(鹿砦社)などがある。