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第5回(2005年)活動報告、活動方針(案)
銀行の貸し手責任を問う会(2005.10.15)


1.活動報告

(1)、金融被害者をとりまく環境

@、金融被害者に対する取立は第2ステージに
 本年5月下旬に、大手銀行・金融7グループは2005年3月の決算報告を行い、各行とも、不良債権比率を4〜1パーセントに低下させ、不良債権の処理は政府の目標どおり達成したと発表しました。マスコミもこれをうけて不良債権処理はほぼ峠を越えたと報道していますが、「不良債権」が銀行の帳簿から消えたとしても、「不良債権」そのものが消えたわけではありません。
 銀行は、「不良債権」を競売にかけても、債権全額を回収しきれません。回収できなかった債権は、無担保債権として、残ってしまいます。銀行は、無担保となった不良債権を抱えていても、意味がないばかりか、不良債権比率もはかばかしくは改善されないため、銀行は、無担保・無剰余となった「不良債権」を他に売却して、オフバランス化して不良債権比率を低くしているのです。
そしてこれを買い取った債権者は、金融サービサーに債権回収をさせているのです。
 金融被害者に対する取立が、銀行から、金融サービサーに移行し、債権処理の第2ステージに入ってきたのです。
金融サービサーは、平成10年に「債権管理回収業に関する特別措置法」にもとづき、弁護士法の特例として、法務大臣の認可をうけて債権回収業を行うものですが、不良債権処理は、うまみのあるビジネスだと考え、外資系、銀行系の外に、いわゆるサラ金業界からも参入し現在90社を越えます。
 不良債権処理がいかにうまいビジネスかは、2月16日の衆議院予算委員会での中津川博郷衆議院議員(当時)の追及で、その一端が明らかになりました。整理回収機構(RCC)は、法務大臣許可9番の許可を得て、債権回収業務を行っていますが、整理回収機構は、無担保・無剰余の債権を一律1000円で買い取り、現在までに6342件買い取り、その債権回収額は、約112億円にのぼっているのです。なんと1700倍という闇金融顔負けのぼろもうけです。

A、新たな金融被害の多発
 変額年金被害が多発し、全国の生活センターにも、変額保険年金に関する苦情が一番多く寄せられています。変額年金は、変額保険と同様、株や債券を中心に運用され、運用成績が悪いと受け取る年金も減ってしまうというもので、投機性の高いものです。変額年金の手数料は、ほかの金融商品と比べて格段に高額の手数料が得られることから、銀行は販売に力をいれています。ある大銀行のばあい、個人年金の販売手数料は、売り出した初年度の02年度は、50億円以下だったのに、04年度には、250億円に急増しています。
ところで、 変額年金は、もともとは外資系保険会社がもちこんだ商品です。銀行窓口での個人年金保険の売り上げ上位に名を連ねているのも外資系、とりわけアメリカ系の保険会社です。これは、90年代の日米協議、ブッシュ大統領と小泉首相が合意した「規制改革イニシアチブ」などで、アメリカ政府は、外資系保険会社への規制緩和を求め、保険商品の銀行窓口販売に自由化を要求してきました。
変額保険が、日本に持ち込まれた経緯とまったく同じです。変額保険も、もともとは日本ではニーズがないにもかかわらず、アメリカからの金融市場開放の強い要請に従って、変額保険についての十分な審議も行わずに、認可したものです。
 そして、変額保険は、投資信託と同じに、運用の成績が悪ければ、その損失は、契約者の損失になるというハイリスクの金融商品であることから、アメリカでは、証券性を認められ、証券諸法が適用されているものです。しかし、日本では、その点についての十分な検討もまた法的規制も行わずに、保険として認可し、保険業法のみの適用においてきたものです。しかも、バブル末期に、大蔵省の不動産、建設、金融の3業種への融資規制が強められる中で、銀行は、その余った金を個人向け融資に向けました。大銀行は、相続税対策をセールスポイントにした提案融資を競いました。その代表的なものが、融資とセットにした終身一時払い変額保険の販売です。アメリカでは、一時払いの変額保険は、リスクがあまりにも高いとして、販売を自粛されているものです。
ところが、日本では、一時払い保険料に大型フリーローンによる億単位の融資を行ったのです。融資とセットにされたことで、そのリスクは、比較級数的に増大します。大蔵省は、当然、銀行が保険料に巨額な融資を行って変額保険契約をさせていることは知っていながら、これを放置したのです。
変額保険による未曾有の金融被害がもたらされたことについては、大蔵省には重大な責任があります。ところが、政府、大蔵省(現金融庁)は、性懲りもせず、ふたたび変額保険年金の販売を許し、その結果被害を多発させているのです。

(2)、活動報告

@、「ノンフイクション劇場・騙すパート4・大蔵省の国家的犯罪」の公演
当会は、変額年金をはじめ、金融被害の多発が続くのは、大蔵省が、融資一体型変額保険被害について責任が問われていないからであると考え、融資一体型変額保険被害の発生に大蔵省は、重大な責任があることを広く世論に告発すべく、2004年3月19日に赤坂区民センターで、「ノンフィクション劇場「騙す」のパート4・大蔵省の国家的犯罪」の公演を行いました。
 シナリオ・演出は、これまでのノンフイクション劇場と同様、東京芸術座の稲垣純氏。
当日は、会場300席はほぼ満席となりました。東京芸術座の俳優の方々、融資一体型変額保険被害者の会はじめ、銀行の不当競売を許さない会、銀行被害者の会の有志の迫真の演技で、大蔵省の国家的犯罪を浮き彫りにしました。出席された多くの方々から、大蔵省と大手銀行に対する怒りの声がよせられ、融資一体型変額保険被害者の方々からも、あらためて国賠訴訟への決意が表明されました。

A、金融サービサー被害の実態調査についての取り組み
銀行が回収困難と考え、1000円で売却した「不良債権」を、尋常な方法では、このような高率の回収はできません。
凄まじい取立を行っているのです。
まず、主債務者に対しては、法的脅しの手段として、債権者破産申立があります。債権者破産申立は、破産の全体件数約22万件のうち、約1パーセントに過ぎません。自己破産が、ほとんどなのです。
 債権者が破産申し立てるには、かなり高額な破産予納金を裁判所に納付しなければなりませんが、資力をなくしている債務者に破産申立をしてもそれに見合う回収をはかれないことが多いため、債権者が破産申立をするのはきわめてまれなのです。しかし、弁護士、会計士、司法書士など、破産宣告により、資格を失ってしまう人にとっては、破産宣告は、死活問題であるため、これらの人たちに対しては、破産申立は、有効な回収手段になります。本人が、資力がなくとも、破産申立されるのが嫌なら、親類中、あるいはどこからでも借金してでも、返済しろと脅すわけです。
 また、親族への不動産の売却を、詐害行為であるとして、これの取り消し訴訟を起こすこともあります。売却した代金を銀行に返済しているにもかかわらず、買いとった親族が、金融サービサーから、詐害行為取り消し訴訟をおこされたケースもあります。もちろん、このケースは、詐害行為にはならないので、金融サービサーは、訴えを取り下げましたが、債務者や親族は、詐害行為取り消し訴訟を起こされただけで、びっくりしてしまいます。破産申立、詐害行為取り消し訴訟など法的手段を脅しに使って回収をはかるというのが、金融サービサーの常套手段になっています。ただ同然で買い取っているので、いくら裁判に時間とコストをかけても、十分、元がとれると踏んでいるのです。
 そして、なによりも、金融サービサーによる不良債権回収の特徴は、連帯保証人に対する過酷な取立です。無担保となり、債務者からの回収が見込めなくなった不良債権は、連帯保証人に対する取立しか回収の道が残されていないからです。
 当会が行った連帯保証問題のシンポジウムで脇本肇さんから、整理回収機構からの取立の過酷さが報告されたように、情け容赦のない取立が、連帯保証人にも及んでいる実態が明らかになりました。脇本さんは、いとこに預けていた印鑑を勝手に使われて、岡山に持っていた不動産を担保にいれられ、おまけに極度額1億5000万円の連帯保証人にもさせられてしまいました。いとこが借金した金融機関は破綻したために整理回収機構が、この債権を買い取って、脇本さんに裁判を起こしてきたのです。整理回収機構が裁判所に証拠として出してきた保証書、担保設定書などの書類には、脇本さんの署名はひとつもなかったのに、脇本さんの印鑑が捺されていることが原因で脇本さんは敗訴してしまいました。脇本さんは、控訴しましたが、整理回収機構は、裁判中であるにもかかわらず、担保設定された岡山の不動産だけではなく、1審の判決の仮執行宣言にもとづいて、脇本さんに連帯保証債務を履行せよとして、担保にはいってもいない脇本さんの東京の自宅など総ての不動産に強制競売をかけてきました。まさに身ぐるみはぐやりかたです。整理回収機構の理念は、契約の拘束性と同時に、個人の尊厳を脅かすような回収は行わないことを謳っていますが、実態はまったく違います。
 公的金融サービサーにしてこのような実態なのです。民間の金融サービサーによる取り立ては、いっそう凄まじいものがあります。
当会は、金融サービサーの取立の実態を調査すべく、大阪の「銀行の貸し手責任を問う会・関西」と共同して、本年6月4日に、「金融サービサー被害電話相談110番」を開催いたしました。当日、およびそれ以降に電話相談の件数は、東京、大阪で、合計約70件でしたが、相談の内容は、連帯保証人に対する取り立てに対する苦情が多いのが特徴でした。連帯保証人に対する給与の仮差押さえは序の口で、連帯保証人が妻と共有している自宅にまで、連帯保証人の持ち分の仮差し押さえをしてきています。先順位の住宅ローンの抵当権があり、剰余はないのにです。連帯保証人を、心理的に追いつめ、回収することが狙いです。
いま、不良債権の回収は、担保不動産の競売から、人的保証である連帯保証人に対する回収に移行し、悲劇はさらに拡大してきています。不良債権処理は終わったのではなく、主たる債務者から連帯保証人へと被害は広がり、深刻さを増してきています。

B、連帯保証制度の見直しを求めて
 当会は、一口に不良債権と言っても、不良債権を生じさせた原因が、債務者の側にあるのか、債権者の側にあるのか、あるいは不可抗力によるのか、それらを分類した上で、不良債権の処理を行うべきだと主張してきました。ところが、政府金融庁は、そのような区別をせずに、銀行に対し、不良債権処理の号令をかけてきた。銀行も、生き残りをかけ、その不良債権処理のために、みずからの責任を棚上げして、押しつけ過剰融資の被害者の自宅などに不当な競売をかけてきたのです。しかし、競売(物的担保の処理)が終わっても、なお残債権が残ってしまっている。そのために、連帯保証人(人的担保)から回収するために、連帯保証人の給与や自宅に仮差し押さえをしてくるケースが増大してきています。とりわけ、金融サービサーに債権が譲渡されると、連帯保証人への取立はより強硬になっています。
 しかし、もともと連帯保証は、利他性、情義性、軽率性という特質があります。つまり、保証人のリスクは、本来は債権者(金融機関)が負うべきものを連帯保証人にそのリスクを転嫁させるというものであり、連帯保証人は、契約により、一方的に不利益をうけるという相互性のない不公平な契約なのです。しかも、我が国では、民訴法228条4項により、印鑑が捺されていると、その文書は本人の意思にもとづいて作成されたと推定されるということになっているため、連帯保証人になった人は、保証書の内容について説明をうけていないとしたら、それを連帯保証人の側で、それを立証しなければなりません。しかし、それを立証することは困難です。昔から、連帯保証で泣かされた人の話は枚挙にいとまがないくらいです。
 当会は、法律改正については、民訴法228条4項(印鑑偏重)の廃止とあわせて、連帯保証制度の改善に取り組み、これらの法改正を国会議員に要請し、03年6月には、中津川博郷、前田雄吉衆議院議員ら87名の衆議院議員による「金融機関などからの借入の連帯保証の実態に関する予備的調査」が行われました。
このような国会議員の動きの中で、法務省も、2004年秋の通常国会に連帯保証制度の法改正案を提案することになりました。しかし、法務省の改正案は、包括保証を無効とするというだけのものであり、きわめて不十分な内容でした。
 そこで、当会は、国会議員に、銀行被害者の現状について理解を深めていただき、連帯保証問題はじめ、金融トラブル紛争処理機構の設置など、銀行被害者の立場に立った立法化に取り組んでもらうべく、2004年6月25日に民主党の国会議員有志との懇談会を行いました。
 また、7月17日には、南青山会館で連帯保証問題シンポジウムを開催しました。
過酷な債権回収の被害にあっている人たちの被害体験をもとに、連帯保証問題はどう改善されるべきかをテーマにしたものです。パネリストは、甲斐道太郎大阪市立大学名誉教授、田口良一氏(金融実務家)、中津川博郷衆議院議員(当時)。
当会は、法務省が正式に国会に、連帯保証制度の見直しのために、民法の一部を改正する法律案を提案したのをうけて、「連帯保証制度の改正についての意見書」を発表し、衆参の法務委員会の委員に送付しました。
当会は、改正案は、極度額の定めのない包括保証は、無効とするだけでは、連帯保証人の保護としてはきわめて不十分であり、連帯保証人の保護として、保証契約における適合性の原則を導入すべきこと、つまり、債権者(金融機関など)は、連帯保証人の資力、資産などから万が一のばあいに、連帯保証人さらにはその家族を破滅に追いやる危険性のある保証はさせてはならないこと、金融機関から連帯保証人に対し、保証契約の内容について開示されていないばあいには、締結された契約には拘束されないこと、債権者(金融機関など)の保証契約の内容だけではなく、債務者の信用状態の悪化など説明義務の強化、また、これまでの包括保証人に対する保護措置などを具体的に提言しました。
そして、11月20日に、法務省の改正案についてのシンポジウムをウイメンズプラザで開催した。パネリストは、平野裕之立教大学教授のほか、中津川博ク衆議院議員、星川清一氏の3名。
 
C、変額保険国賠訴訟の研究
 当会では、変額保険被害は、変額保険のリスクの説明を怠ったという個々の銀行員や生保の外務員の責任問題に矮小化されれるべきものではなく、未曾有の変額保険被害をもたらした構造、いいかえれば加害の構造にメスをいれるべきであると考え、5回にわたる専門家による融資一体型変額保険の欠陥商品性の研究成果をもとに、「国賠訴訟研究会」を発足させ、検討してきました。
従来の変額保険訴訟では、変額保険のリスクについての説明をうけたかどうかが主な争であったため、裁判も、被害者毎の個別訴訟にならざるを得ませんでした。
東京三菱銀行、日本生命など、日本を代表する大手銀行や生保に対し、個人個人の被害者が裁判を挑んでも、力の差はあまりに違いすぎます。しかも、日本の裁判は、立証責任は証拠を持っていない被害者に課されていながら、証拠開示も認められていないという「当事者武器対等の原則」が破られている裁判制度にあって、被害者が勝訴することはほとんど不可能と言ってもよいでしょう。事実、変額保険被害者のほとんどが、敗訴に終わっています。しかし、敗訴したからと言って、被害者が、その被害を甘受することはできません。
 変額保険被害者の会は、敗訴判決をうけた以後に行われた銀行の競売に対しても、粘り強い抗議行動を行い、これを取り下げさせています。しかし、今後も不当な競売は続くでしょう。
 そこで、本年8月、融資一体型変額保険被害者の会の有志が、「変額保険の被害者救済」と「被害をもたらした加害構造の真相解明」と「再びこのような被害をひきおこさせない」ために、国賠訴訟原告団を結成しました。
 一方、銀行の貸し手責任を問う会関西でも、代表世話人の辻弁護士らを中心に、変額保険国賠訴訟に関心が寄せられ、大阪の弁護士と共同で、研究会が発足しました。
 法的には、研究しなければならない問題も多くありますが、変額保険の国賠訴訟は、法廷だけを主戦場とするのではなく、21世紀にふさわしい新しい大型訴訟として、国内外のさまざまな方々の協力を得て、新しいモデルケースとなる訴訟に発展させる必要があります。

2、会の活動の課題と活動方針

(1)、債務者に対等な立場の保障を


バブル崩壊後、不良債権処理が、国際公約とされて以来、不良債権処理の迅速化のための法整備が進められてきています。競売手続きの迅速化、担保債権の流動化のための法改正。しかし、それらの法改正では、不良債権処理を急がされる債務者の存在は無視されています。
 不良債権処理の現場では、債務者は血の涙を流させられているのに、債務者を保護する手だては何ら講じられていないのです。
本来、債務者は、取引の一方の当事者です。
しかし、不良債権処理がなににも優先される中で、債務者は、単なる取り立ての対象としか見られずにきています。債務者は、銀行など債権者に対して対等な当事者であるという基本的な関係が見えなくさせられています。
 それを端的に示す事例は、不動産会社の社長らが、債権者の強制執行を妨害したとして、逮捕された事件です。報じられたところによれば、その社長らは、債権者である整理回収機構(RCC)に、預金口座を差し押さえされそうだと気づき、預金口座から1億円を引き出したことが、強制執行を妨害したとして、RCCから、告発され、これをうけて東京地検が社長らを逮捕したというものです。しかし、一般的に考えて、債権者から、預金口座を差し押さえされそうになったら、それを免れるために、預金を引き出したことが、刑事事件として処罰されるべき事件になるのでしょうか。詳細は報じられていなかったのでわかりませんが、その不動産会社の債権者は、RCCばかりではないでしょう。従業員もいれば、その他支払わなければならない取引の相手方もあるでしょう。、もし預金口座が差し押さえをうければ、それらの支払いもできなくなります。そういう事態になれば、会社は倒産の危機を迎えるかもしれません。経営者としては、そういう事態を回避するために、口座から預金を引き出すのは、債務者として当然の行為です。
 債務者は、債権者からの取り立ての対象ではなく、債務者としての権利が認められなければなりません。
 銀行は、大きな組織力を背景に、使いかってのよい法案の立法化が可能ですが、債務者は、個々バラバラであり、債務者の権利を保護する法案の立法化はまったくすすんでいません。しかし、ここにきて、不良債権処理が、第2ステージに入り、債務者だけではなく、連帯保証人にまで、過酷な取り立ての手が伸びてきていることに対し、これを憂慮する国会議員らによって、債務者保護の法案を検討する動きも出始めてきています。

@、金融取引におけるインフォームドコンセント

 銀行と債務者との関係は、医師と患者との関係に似ています。どちらも、専門家として、相手に対して、優位の立場に立っているからです。しかし、周知のとおり、医療行為
において、かつては、医療行為を受ける対象としてしか見られていなかった患者も、ずいぶん前から、医師と患者とは対等な契約関係にあると考えられ、専門的な知識を有する医師は、患者に対して、十分な説明をし、患者の同意(インフォームド・コンセント)にもとづいて、医療行為を行うべきであるとされています。
これに対し、銀行取引は、説明義務はこれまで軽視されてきました。金融庁も、最近は、銀行に対して、強く説明義務を求めるようになってきていますが、平成12年に成立した金融商品販売法では、説明義務の対象商品から融資ははずされています。銀行が、説明義務を言われるようになったのは、そう昔のことではありません。融資一体型変額保険訴訟など、バブル期に提案融資の名目でさまざまな資金使途を提案し、融資を勧誘し、その後、銀行の提案どおりの返済が行えなくなった債務者から、銀行に対し、説明不足を理由に訴訟が多発しましたが、銀行は、それらの裁判で、金を貸したら返すのは常識だ、連帯保証人になったら、債務者が払えなくなったら、かわって払わなければならなくなるのは、子どもでも知っていることだから、銀行は融資契約や、連帯保証契約に、いちいち説明する義務はないと主張していた程です。
 裁判所も、金融機関の説明義務を軽視し、説明義務違反を認めるばあいでも、不法行為としての側面でしか見ていません。裁判所は、契約の成立を本人の印鑑が捺されているかどうかで判断していますが、説明義務を尽くさないばあいには、医療行為におけるインフォームドコンセントと同様に、契約の同意がなかったとして、契約そのものの成立を否定すべきです。金融取引にも、インフォームドコンセントの概念を導入すべきです。

A、債権譲渡における債務者の同意
民法では、債権譲渡は、原則自由とされていますが、他の債権者に対抗するためには、債務者の同意もしくは債務者に対し債権譲渡を通知しなければならないとされています。ただし、根抵当権付き債権は、継続的な取引のため、債務残高が一定しないため、これを譲渡するためには、元本確定する必要があります。従来は、元本確定には、債務者の合意が必要でした。しかし、元本確定は、銀行取引が打ち切られることを意味しますので、債務者は、元本確定には同意しないことが多いのです。政府金融庁は、元本確定についての債務者の同意が、政府のすすめている「不良債権の迅速な処理」、「債権の流動化」の障碍になっていると考え、平成15年に民法を改正し、金融機関が一方的に債務者に元本確定請求(取引終了通告)をすれば元本確定ができることにしてしまいました。銀行は、ヨリ容易に債権譲渡が進められるようになったのです。もちろん、金融機関は、債務者にどこに債権を譲渡するかも事前に知らせてくれません。しかし、債務者にとって、債権者が誰に変わるかは、重要な問題です。債務者の同意を要件とすべきです。
債務者の同意が得られずに債権の処理ができなくて困るという問題については、いくつかの解決策があると思います。ひとつには、債務者の側で債権譲渡予定価格以上で買取る先を見つけることにするのも一方法です。

B、連帯保証人の保護

、包括保証問題
 昨年、民法が改正され、今後、極度額のさだめのない包括保証契約は、無効とされることになりましたが、これまでの包括保証契約は有効とされるため、現在包括保証で苦しんでいる連帯保証人の救済にはなりません。
ところで、銀行取引に、包括保証が常態化したのは、バブル以降です。もちろん、企業の当座貸越に経営者が、包括保証をすることはよく行われていましたが、バブル期以前は、個人向け融資は、特定取引だったので、包括保証はなかったのです。ところが、バブル時に、銀行が、融資高を増やすために、個人向け融資に力を入れ、とりわけ不動産担保の大型フリーローンによる過剰融資に走ったが、大型フリーローンは、当座貸し越しであるため、追加融資が幾度も行われ、必然的に銀行は、連帯保証人からは、包括保証を取る必要がありました。しかし、銀行内部では、与信枠は定めていたのかもしれませんが、主債務者にも、貸付限度額は知らさ バブル期以前は、個人向け融資は、特定取引だったので、その連帯保証をめぐるトラブルも、ほとんどが、保証意思の有無が争点で、説明義務はあまり問題にならなりませんでした。ところが、バブル時に、銀行が、融資高を増やすために、個人向け融資に力を入れ、とりわけ不動産担保の大型フリーローンによる過剰融資に走ったが、大型フリーローンは、当座貸し越しであるため、追加融資が幾度も行われ、必然的に銀行は、連帯保証人からは、包括保証を取る必要がありました。しかし、銀行内部では、与信枠は定めていたのかもしれませんが、主債務者にも、貸付限度額は知らされていないことが多いのです。ましてや、連帯保証人に知らされたケースは、皆無と言ってよいほどです。そもそも、バブル期以前は、銀行が個人に融資するのは、住宅ローンやアパートローンなどの特定取引であり、企業に貸し付けるような当座貸し越しをしていませんでした。だから、誰でもが、個人への貸付は、当然特定取引だと考え、連帯保証を引き受けたのです。ところが、後で、銀行から、予期せぬ金額の債務の弁済を請求されて、よくよく聞いて見ると、包括保証をさせられていたことがわかり、びっくりすることになるのです。勿論、びっくりするだけではすみません。博多で、内科医を開業していた医師のばあい、いとこに頼まれ、1000万円の借入の連帯保証になったところ、それから、10年近く経ってから、銀行から、4億円のいとこの借金の請求をされて、夜も眠れない日が続き、それが原因で、精神科に入院するまでに追い込まれたケースもありました。
銀行は、いずれのケースでも、包括保証の意味も説明していません。だから、最近の連帯保証をめぐる裁判は、包括保証のリスクについての説明義務をめぐってトラブルになっているケースが多いのです。
 みずほ銀行から、訴訟を起こされたAさんが署名した旧富士銀行の保証書は、とてもわかりにくいものです。一読して、内容を理解することは難しく、国会でも、幾度も問題にされ、竹中金融担当大臣(当時)も、見てもわからないねと答えたということことが伝えられています。しかし、裁判では、そのようなわかりにくい保証書でも、連帯保証人は、注意深くよめばわかるはずだし、わかった筈だという理由で負けています。
今、不良債権の処理は第2ステージに入り、つまり、担保処分が終わった後、連帯保証人への取り立てが始まりました。
これまで、当会が主張してきたように、一口に不良債権と言っても、不良債権を生じさせた原因が、債務者の側にあるのか、あるいは、債権者の側にあるのか、或いは、不可抗力によるのか、それらを分類した上で、不良債権の処理ははかられるべきです。ところが、政府、金融庁は、そのような区別をせずに、銀行に対し、不良債権処理の大号令をかけ、銀行も、生き残りをかけ、その不良債権処理のために、みずからの責任は棚上げして、押しつけ過剰融資の被害者の自宅などに不当な競売をかけてきたいます。しかし、競売が一巡して、なお残債権が残ってしまっています。そのために、残債権を今度は、連帯保証人から回収するために、連帯保証人に対して、裁判をかけ、裁判所の庇護のもとに、勝訴判決を得て、銀行やあるいは債権を買い受けた金融サービサーは、連帯保証人の自宅に競売をかけたり、給与の差し押さえなどの強硬手段に打って出てきています。あらたな2次被害が続出しているのです。
 ましてや、連帯保証人に知らされたケースは、皆無と言ってよいほどです。そもそも、バブル期以前は、銀行が個人に融資するのは、住宅ローンやアパートローンなどの特定取引であり、企業に貸し付けるような当座貸し越しをしていませんでした。だから、誰でもが、個人への貸付は、当然特定取引だと考え、連帯保証を引き受けたのです。ところが、後で、銀行から、予期せぬ金額の債務の弁済を請求されて、よくよく聞いて見ると、包括保証をさせられていたことがわかり、びっくりすることになるのです。勿論、びっくりするだけではすみません。博多で、内科医を開業していた医師のばあい、いとこに頼まれ、1000万円の借入の連帯保証になったところ、それから、10年近く経ってから、銀行から、4億円のいとこの借金の請求をされて、夜も眠れない日が続き、それが原因で、精神科に入院するまでに追い込まれたケースもありました。
銀行は、いずれのケースでも、包括保証の意味も説明していません。だから、最近の連帯保証をめぐる裁判は、包括保証のリスクについての説明義務をめぐってトラブルになっているケースが多いのです。
 みずほ銀行から、訴訟を起こされたAさんが署名した旧富士銀行の保証書は、とてもわかりにくいものです。一読して、内容を理解することは難しく、国会でも、幾度も問題にされ、竹中金融担当大臣(当時)も、見てもわからないねと答えたということことが伝えられています。しかし、裁判では、そのようなわかりにくい保証書でも、連帯保証人は、注意深くよめばわかるはずだし、わかった筈だという理由で負けています。
今、不良債権の処理は第2ステージに入り、つまり、担保処分が終わった後、連帯保証人への取り立てが始まりました。
これまで、当会が主張してきたように、一口に不良債権と言っても、不良債権を生じさせた原因が、債務者の側にあるのか、あるいは、債権者の側にあるのか、或いは、不可抗力によるのか、それらを分類した上で、不良債権の処理ははかられるべきです。ところが、政府、金融庁は、そのような区別をせずに、銀行に対し、不良債権処理の大号令をかけ、銀行も、生き残りをかけ、その不良債権処理のために、みずからの責任は棚上げして、押しつけ過剰融資の被害者の自宅などに不当な競売をかけてきたいます。しかし、競売が一巡して、なお残債権が残ってしまっています。そのために、残債権を今度は、連帯保証人から回収するために、連帯保証人に対して、裁判をかけ、裁判所の庇護のもとに、勝訴判決を得て、銀行やあるいは債権を買い受けた金融サービサーは、連帯保証人の自宅に競売をかけたり、給与の差し押さえなどの強硬手段に打って出てきています。あらたな2次被害が続出しているのです。
 当会は、包括保証契約をした連帯保証人に対しては、破産手続きにおける免責に準じた免責基準を導入し、救済すべきことを提言しております。
 そのほか、当会は、連帯保証人の保護として下記の点についても法規制すべきであると考えております。

b、保証契約における適合性の原則
人生経験において未熟で、また経済的にも自立していない学生などの若者や、貯蓄や年金を老後の生活資金にしようとしている高齢者は、いずれも資力において、また判断能力において、成人と比べて、劣るものですから、これらの人に保証人の責任を負わせることは不適当です。
 ちなみに、債権者の利益を考慮する見地から、民法450条1項は、保証人の条件として、「債務者が保証人を立てる義務を負う場合に於ては其保証人は左の条件を具備する者であることを要する
1、能力者であること
2、弁済に資力を有すること」

と定めていますが、これは、債権者の利益のために、無資力な保証人を排除しようとするものですが、保証人の保護の見地から、保証人にも「適合性の原則」が認められるべきです。

、債権者の連帯保証人保護義務
 連帯保証契約は、債権者は、一方的に利益を得、連帯保証人は、一方的に不利益を受けるという相互性のない不公平な契約です。契約正義と言った観点からは、契約自由、自己責任、契約拘束力の原則をそのまま、適用してよいはずはありません。
 商取引であれば、契約をするのは自己の自由な意思決定にもとづき行うものですから、その結果についても、自己責任がともないます。契約するかどうかの意思決定に必要な情報は、自己責任で集めるのが原則であり、それを怠り、自分の予期しない結果を招いたとしても、詐欺、脅迫などの事情がない限り、契約の拘束力を免れないとされます。ところが、保証契約は、保証人にとっては、主債務者のために行う無償のいわば一方的に義務を負担する片務行為です。片務契約である保証契約に、契約当事者が相互に権利、義務関係(双務関係)を律する「商取引の原理」を適用することは妥当ではありません(平野裕之著「保証人保護の判例総合解説」信山社、7ページ)。
 保証契約がされた力関係、専門的能力、主債務者に対する経済的影響可能性、情報取得可能性などを考えると、債権者には、可能な限り、保証人の利益を保護すべき義務を認められるべきです。そして、これが尽くされたばあいに、またその尽くされた限度に応じてのみ、自分の本来負担すべきリスクを保証人に転嫁することが許されるものです。債権者と保証人との間で、交渉力、情報面での対等性が実質的に確保されていない状況下において、債権者側で作成、使用された契約書(約款)が用いられたばあいには、保証契約の内容について、保証人に開示され、保証契約の内容を明確に認識できる機会が与えられなければならず、保証契約を締結するかどうかの決定にとって重要な情報を得る機会を与えられずに、締結された契約には保証人は拘束されないと解すべきです。とりわけ、交渉の経緯を考慮しても、保証人が予測できないような契約条項(不意打ち条項)は、保証契約の内容とはならないものです(前掲書)。

A、義務の内容
 (保証契約を締結する際の債権者の義務)
@.保証意思の確認
一般に保証契約書に保証人として、署名捺印したからと言って、他人の借金を自分が肩代わりしなければならないことを十分認識しているわけではありません。主債務者はもちろん、保証人には迷惑をかけないと言うのが常だし、また銀行も、形だけだからと説明することが多いのです。銀行は、保証人に保証の意味を十分に説明した上で、保証する意思があるかどうかを確認する義務があります。

A.説明義務
 消費者契約法は、説明義務を努力義務としてしか規定しておらず(同法3条)、また、金融商品の販売等に関する法律も、預金などについては、金融機関の説明義務を認めているが、融資は、金融商品の販売とはみなされていないため、説明義務が規定されていません(同法3条、2条)。また、銀行法も、預金などについては、銀行の説明義務を規定していますが、融資については、直截的には説明義務を定めていません。同法12条の2の第2項で、これ以外のものについては、内閣府が定めるところによるとして、政令に委ねています。
 03年から、金融庁も、事務ガイドラインを改正して、銀行に対し、与信取引についても、顧客に対する説明義務を徹底させるよう指導しています。

B、保証契約書交付義務
銀行の契約書は、これまで主に差し入れ方式でした。契約書は、当事者双方が互いに署名して契約するのに、銀行との契約書は、一方的に、債務者あるいは連帯保証人が、契約書に署名捺印して、銀行に差し入れする形式のものが多かったのです。しかも、最近まで、銀行は、その契約書の写しさえ、債務者や連帯保証人に交付しないことが多かったのです。ところで、ノンバンクについては、貸金業の規制等に関する法律で、書面の交付を義務づけされています(同法17条1項)
 また、平成12年に、商工ローンの根保証が社会的な問題になり、保証人に対して、その都度、貸付の内容を明らかにした書面を交付しなければならないとされました(同条4項)。
しかし、銀行取引については、契約書の交付を義務づける明文の規定がないのです。

C.主債務者との取引状況、信用状態についての情報提供義務
主債務者の債権者との取引内容、実績または主債務者の信用状態などについて過去どのような状況であり、現在どのような状態にあるのか、債権者は自分の把握している情報を一切提供すべきです。特に契約締結の際に、既に主債務者からの債権回収が危ういことが明らかなばあいは、警告し、それでも保証する意思があるかを確認すべきです。情義的な関係から保証をするようなばあいには、債権者が主債務者の経営状態などにつき、調査し、情報提供して、はじめて保証人へのリスク転嫁が許されるというべきです。
D.その他、保証の意思決定に重要な事項の説明義務
ります。
E.熟慮期間を与えるべき義務
 連帯保証契約は、時として、連帯保証人の生活を破綻させてしまうリスクの高い契約です。しかし、連帯保証契約の特殊性は、無償制、情誼性だけではなく、軽率性もあげられます。連帯保証人は、よもや、他人の借金を自分が肩代わりして支払わなければならなくなるようなことはあるまいと考え、安易に保証書に署名してしまっているケースが多いのです。だから、連帯保証人には、家族、知人あるいは専門家にも相談できるだけの熟慮期間を与えるべきです。

(契約締結後の債権者の保護義務)
@、解約権の告知義務
前述したとおり、金融機関は保証契約の締結前と契約締結後、保証期間が到来する6ヶ月前に保証人に対し、解約権を行使すれば保証契約は解約できることを告知する義務をもうけるべきです。
A、連帯保証人に不測の損害を被らせることのないよう債権管理を適正に行う義務
債権者が、(連帯)保証人に無断で、担保を解除したばあいには、担保解除したことにより債権回収ができなくなったとしても、その分については、連帯保証人には請求出来ない(民法504条)。
これとパラレルに考えるならば、債務者から、担保物件を売却し、債務弁済の申し出があったのに、債権者がそれを放置し、売却が遅れ、債務が増大したばあいには、その増大した債務については、連帯保証人に請求することはできないとすべきです。
B、主債務者の信用状態の悪化があったことを債権者が知ったばあいには、保証人にこれを通知する義務
 債権者が、主債務者の信用状態について調査して、悪化したことがわかったばあいには、その事実を通知し、以後の取引について連帯保証する意思があるかどうかを確認することが必要です。もし、これを怠った場合には、以後の取引から生じた債務については、連帯保証責任はないとすべきです。

B.義務違反の効果

義務違反があれば、金融機関に対して、その損害を賠償請求できますが、説明義務違反があっただけで、直ちに、保証契約が否認されるものではない。よくあることですが、金融機関が、形だけだからと言って、保証人に保証契約に署名させたばあいなどは、保証人には、もともと保証の意思がなかったのだから、保証契約の成立を否認できます。主債務者のばあいは、融資契約の成立が否認されても、金利の支払い義務はなくなりますが、融資金の元本の返還義務は残ります。これに対し、保証契約では、保証契約の成立が否認されれば、保証人は、返済の義務はなくなるのですから、保証人にとって、保証契約が否認される意味は大きい。

C、民訴法228条4項の廃止と連帯保証人の保護との関係
金融機関が、自主的に保証契約が成立していないことを認めてくれることはまずありません。
 連帯保証の成否をめぐって裁判で決着をつけることになります。
本来は、保証契約の存在を主張する金融機関ものが、契約の成立を立証しなければなりません。ところが、民訴法228条4項では、本人または代理人の署名押印ある私文書は、本人の意思にもとづいたものと推定され、契約の成立は推定されるとあります。従って、保証書に本人の署名または押印があると、連帯保証契約を否認する例で反証をあげなければなりません。しかも、第三者に印鑑を盗まれたとかそういう特殊なケースでない限り、連帯保証が否認されることはないのです。
 連帯保証人を保護すべき実体法の義務とあわせ、裁判手続きでも、保証人が保護される仕組みに変えないかぎり、連帯保証の悲劇はなくならないのです。

D.系列保証会社への保証委託制度の廃止
 通常の連帯保証人は、無償ですが、有償の連帯保証人もあります。保証会社による保証のばあいです。保証会社の保証も法的には通常の連帯保証と異ならないが、実際には主債務者のためというよりは、銀行の利益にかなうような役割を担っています。銀行が系列保証会社の保証を付けるのは、おもには3つの理由があります。
 1つは、銀行が、投資目的の融資は不良債権になるおそれが大きいと考え、その債権回収を原告に代行させるためです。競売などの手の汚れる仕事は、保証会社に代行させれば、銀行の手は汚れなくてすむというわけです。
 2つは、銀行が将来顧客との間でトラブルが生じたばあい、顧客とのトラブルを保証会社に肩代わりさせることができます。すなわち、顧客からのクレームがあっても、銀行は保証会社から代位弁済を受けているので、クレームは保証会社に言ってくれとクレーム処理を保証会社に押しつけることができます。
 他方、保証会社は顧客からクレームを言われても、銀行から代位弁済請求を受け代位弁済しただけであるからクレームがあれば銀行に言ってくれと取り合わないのです。 要するに、銀行がクレームから逃げる方便に使われているのです。
 3つは、不良債権隠しです。銀行は、融資金返済が延滞しても、保証会社に代位弁済請求して不良債権を保証会社に付替えることができます。もとより保証会社が代位弁済するための資金は銀行からの借入です。経済評論家は、これを「親からのミルクの補給」と評しています。
 以上のとおり、保証会社との保証委託契約は、専ら銀行の利益のためであり、借りては高額な保証料を負担させられただけで、何らの利益も得ていないのです。主債務者にとって、このような百害あって一利なしの系列保証会社の保証委託制度は、廃止されるべきです。

C、金融機関の情報の開示
 銀行は、債務者が決算書、確定申告書などを銀行に提出するのは当たり前のごとくに考え、債務者にこれの提出を求めることです。債務者の情報は、ことごとくに、銀行に掌握されてしまっています。
一方、銀行側の情報は債務者や預金者に開示されているかと言えば、そうはなっていません。金融機関と債務者、預金者との間には、極端な情報の偏在性があります。
預金者の立場では、ペイオフが実施されることになった以上は、金融機関の経営内容などの情報は、当然大きな関心があります。預金者に自己責任が求められるためには、正しい情報の開示が前提だからです。しかし、それらの情報は、金融機関からも、金融庁からも与えられません。例えば、金融庁が行った金融機関に対する行政処分についても、金融庁は、風評被害による取付騒ぎを起こるのを理由にして、ほとんどを秘匿しています。
一方、債務者の立場から見たばあいは、債務者の取引についての情報が大きな関心になります。
 ところで、医療におけるカルテについても、かつてカルテは誰のものかという議論もあったが、カルテは患者のためのものであり、医療行為が適切に行われたかを担保するためのものであるとして、患者からの要求があれば開示されなければならないとされています。
それに対し、銀行の情報開示は、きわめて消極的です。
 訴訟で、銀行稟議書、業務日報などの提示が求められても、銀行は、提出を拒むことが多いのです。そういう態度は、かえって、債務者に疑いを深めさせることになります。銀行は、自分の持っている情報も、債務者に開示してこそ、情報の偏在性をなくすことになります。
 さらに、今大きな問題になっているのは、銀行が整理回収機構をはじめ金融サービサーへに売却した不良債権の売却価格についての開示の問題です。
不良債権処理を急がされ、銀行は、無担保債権となった、銀行によっては、担保付きのまま不良債権を金融サービサーに安値で売却し、銀行のバランスシートから不良債権を落としているため、今、不良債権ビジネスが、横行しています。その結果、債務者にとっては、より深刻な状況が出てきています。先述した連帯保証人への過酷な取り立てもそのひとつです。
 債権の額面はともかく、もともと1000円で買い取った債権を100倍も1000倍も取り立てをすることは許されるのでしょうか。
 出資法では、貸金業者が、年29、2パーセントを超える利息をとったときは、3年以下の懲役刑の処罰を受ける規定があり、出資法違反で、逮捕されることにもなります。
しかし、金融サービサーの取り立てでは、出資法では禁止されているよりはるかに高率の取り立てを行うことが平然と行われています。そのために、主債務者だけではなく、連帯保証人までが、先述のような過酷な取り立てに苦しめられているのです。金融サービサーへの売却額が債務者側に開示されれば、金融サービサーも、このような高率の取り立ては行えなくなるでしょう。
 金融サービサーは、これを知らせると、取り立てに支障があると考えているため、売買価格については秘匿して、絶対に知らせないのです。
 銀行は、売却した先の金融サービサーが、過酷な取り立てを行わないよう配慮する責任もあります。したがって、債務者からの目にあまる過酷な取り立ての実情が訴えられたばあいには、買い戻すか、あるいはせめて債務者の求めに応じて、いくらで金融サービサーに売却したかについて情報は開示されるべきです。

(2)立法化へ向けて、国会議員への要請活動の強化
 会発足から、9年を経過し、これまでの会や会員の努力が実り、支援してくださる輪が、広がってきています。連帯保証の問題についても、不十分ながら、包括保証契約は、無効とする民法の改正を実現させました。また、会が発足当初から目標にしてきました金融消費者保護法についても、投資サービス法として、法改正が準備されてきています。しかし、会が、目指したものとは、ほど遠い内容です。今後とも、連帯保証問題、金融サービサー問題に引き続きとりくむのはもちろん、これまで長年取り組んできた「金融紛争処理解決機構などの立法化」や「民訴法228条4項(印鑑偏重)の法律改正」「不当競売の阻止と被害者救済のための緊急立法化」の問題に取り組んでいきたいと考えます。
 これらの問題については、金融消費者保護推進議員連盟や各議員に訴えてきた結果、多くの議員から、関心とこれらの問題解決のための立法化の必要性の認識が高まってきていましたが、前の衆議院解散にともなう総選挙で、残念ながら、会の運動に尽力下さった海江田万里議員、中津川博郷議員、小泉俊明議員議員が落選されてしまいました。今後は、あらたに議員になられた方々に、この問題の理解を深めていただき、会の目標としております金融被害者救済に尽力をいただけるよう働きを強める必要があります。
 当会は、会員一人一人の活動によって、支えられています。会員全員が、会の活動に参加する体制の確立が急務です。是非、多くの会員の方からの積極的なご提言を望むものです。
 以上