「金融取引紛争解決機構」案
 

 【第一 目的】
金融取引紛争解決機構は、消費者と金融商品販売業者の間に生じた金融商品にかかわる紛争を、訴訟外で迅速に解決する事を目的に設立された機関である。

【第二 定義】
「消費者」とは個人をいう。但し、事業として又は事業の為に契約の当事者となる場合におけるものを除く。
「事業者」とは、法人その他の団体及び事業としてまたは事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。
「金融商品」とは、株式、負債の証書、政府及び公共債、集合投資計画、オプション、先物、差金決済、保険、預金、融資、その他投資に関わるあらゆる権利又は利益をいう。

【第三 組織・委員長・委員・議決方法・権限等】
機構は国家行政組織法 第三条の委員会に準じる行政機関であり、総理府の外局と位置づける。
A 機構は委員長および委員をもってこれを組織し、機構の議事は、出席者の過半数をもってこれを決する。
B 委員は消費者団体、業界団体、公益団体より各三名、計九名を内閣総理大 臣が両議院の同意を得てこれを任命する。委員長は委員の互選により選出する。
C機構は所轄事務に関する詳細な規則を制定する権限を有する。
D 機構の委員長及び委員は独立してその職権を行なう。

【第四 所轄事務】
機構の所轄事務は次のとおりとする。
一 裁定人(オンブズマン)を、消費者団体、業界団体、公益団体が推薦する者のなかから同数づつ撰ぶ。
二 苦情の受付、調査、処理等に関わる手続きに関する規則、ならびに、機構の運 営・管理に関する規則を制定する。
三 両議院と内閣総理大臣に年次報告書を提出する。

【第五 裁定のパネル】
苦情処理にあたっては、最低三人の裁定人によるパ ネルを組織する。苦情の内容、質等によりパネルの規模は変わるが、いずれの場合も消費者団体、業界団体、公益団体の推薦した裁定人を同数ずつ配置する。特に構造的・集中的被害のを取り扱うパネルの構築につては別途規則で定める。

【第六 斡旋・調停】
苦情が提起された場合、まず、斡旋、調停を行い、不調に終わった場合のみ、裁定人が決定を下す。調査、斡旋、調停は裁定人以外の他のスタッフが行なうことができる。

【第七裁定人の決定】
裁定人は規則に定められた一定の期間内に決定を下し、書面で両当事者に通知しなければならない。その書面には次の事項が記載される。
一 決定の内容。
二 決定の理由。
三 裁定人の署名、捺印。
四 苦情申立者が書面で、規則に定められた期限内に、決定を受け入れるかどうかを通知すべきこと。

【第八 損害賠償額と業務改善命令の通知】
事業者の側に苦情を生じさせた原因があるとの決定が出された場合、上記の書面に次の事項が併記される。
一 損害賠償額。
二 業務改善命令の内容。
A消費者費が決定を受け入れた場合、事業者に以下を通知する。
一 決定を消費者が受け入れたこと。
二 損害賠償の支払。
三 業務改善命令。

【第九 裁定人の情報請求権】
裁定人は苦情処理にあたって、稟議書、業務日誌、企画書、帳簿等必要な情報や書面の提供・提出を当事者に求めることができる。要請に従わない場合の制裁については、規則で定める。なお、職務上得た情報や書面に関して、裁定人は秘守義務を負う。

【第十 苦情処理に要した費用の負担】
苦情処理に要した費用は、原則として業者が負担する。消費者が故意に解決を遅らせた等相当の理由がある場合以外は、消費者はいかなる費用も請求されない。

【第十一 スキームの構築・運営・管理のための費用】
機構は、スキームの構築並びに運営・管理の費用の一部を事業者から年会費として徴収することができる。

【第十二 事業者の紛争解決義務】
事業者は次の義務を負う。
一 苦情処理窓口の設置。
二 規則に定められた期間内に処理を終了する。
三 消費者が処理結果に満足しない場合には、機構についての情報を提供する。
四 規則に定められた期間、苦情処理の全ての書類を保管する。
五 年間の苦情数、内容、処理結果を機構と両議院に報告する。



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