金融サービス規制 英国と日本の比較
 


●ポイント

金融サービス法案制定の遅れについて
  1. 背景:法案の国会提出が2001年1月まで遅れることになり、代わりに金融商品販売法?が2000年1月の通 常国会に提出される。そのカバー範囲は、英国の状況と比して極めて限られており、また内容も経済界からの圧力により骨抜きになっている。金融業者の説明義務は、努力目標にとどまっている。

  2. 金融商品販売法?までの過程:金融システム協議会は2つの委員会から構成され、第一委員会は、21世紀の金融システムの法的枠組をつくる為ワークしてきている。日本が英国と同様の金融サービス法を持つ為には、業際を超え金融機関の種別 によるのではなく金融商品の種類によるシステムをつくる必要がある。金融商品の販売及び販売推進に関わる業者の行動、及び投資信託?スキームの2分野が取り上げられ、各々作業部会がワークすることになった。金融システム協議会は、1999年7月6日の中間報告に続き、12月21日に2度目のレポートを発表し、各方面 からの意見を募る期限を2000年1月14日とした。その間、年末年始休暇をいれて3週間(のみ)である。

  3. 作業部会のまとめた金融商品販売法案草案には2つの柱が掲げられている。金融業者の説明義務と補償責任である。問題となった高リスクの商品に融資をつけての販売についても責任遡及を提案している。ところが、時間の制約という理由で、紛争解決や補償スキームについて盛られていない。その他の、投資家としての適性、依頼なしの電話による勧誘等の重要問題も適切に取り扱われていない。

 法案には1)金融商品、2)金融業者、3)説明義務、4)補償責任、5)不適切な勧誘の5点について盛られているが、英国に比し、ごく一部のことで大変な苦労をしているようだ。
現在FSAの政策コーディネート部がワークしている「英国のFSA規制とガイダンスのハンドブック」を参照する。 英国では、むしろ逆に、さまざまな(業務分野毎の監督)機関の決まりや業際を超えた規制、その他の法的措置等をまとめあげる方向に動いている。 また、“非個人”顧客の保護を継続するかどうかも検討されている。 既存のそれぞれの法制の良い点をFSA の目的にかなうよううまく組み合わせようというのである。
 ハンドブック中のCBソースブックは、主に4部から成る。1)高水準の原理原則、2)ビジネス・スタンダード、3)規制プロセス、4)Redress。2)には、CBルール及びPrudential&市場行動の主要なソースブックが含まれている。ソースブックとは、FSMB(金融サービス市場法案 第1章 ルールづくりにあたっての権力 第4部 ルールとガイダンス)によりFSAに授与された法制上の権力に基づくルールとガイダンスのソースである:ルールづくりのInstrument S.123。
 1986年の金融サービス法には、CBルールが規定され、誤解を招くような発言や慣行、解約ルール、顧客のお金、依頼のない勧誘電話・訪問、広告宣伝に関する制限について定めている。 また、S48では、マーケットメイク(値付け)、情報開示、手数料、チャイニーズウォールについて定めている。 一方、FSMBでは、15部のOffences(違反、セクション341)で誤解を招く言動について定める以外、規定がない。代わりに、詳細をTreasury大蔵省(StatutoryInstrument)もしくはFSA(Rule-makingInstrument)に委ねている。 これは、最初の法制の範囲をフォーカスして基礎的なものにとどめ、将来急速に変化する通 信環境に英国のシステムを適合しやすくしようとしたものである。 大蔵省は、これらの授権に基づき、19項の金融商品販売促進や20項の被規制活動をカバーするOrders(通 達?)をドラフトしている。 同様に、FSAはビジネス・スタンダードのソースブックをCompileしている(110項)。
 日本の金融販売法案?は、最初の法制であるにも拘わらず、かなり詳細のポイントをカバーしている。
 特定の金融商品の法律上のカバーについては、次の法制になるとしても、金融商品の分類についての基本的なスタンスという点が欠けている。法律で個々の金融商品をリストアップするという方法について懸念を表明している向きがあるが、このことは、新商品開発のスピードについていけないと考えているということであり、将来の対応をできる用意がないということである。
 日本の金融販売法案?草案を英国のFSMBと比較すると、前者は後者のごく一部をカバーする内容であるのは明らかである。にも拘わらず、日弁連をはじめとして各方面 から厳しい批判を受けている。

  1. 金融販売法案の欠陥及び短所:日弁連は1月7日に意見書を提出した。第2報告書では、消費者に対する公正より金融システムの効率性を重視する姿勢について改善が見られるものの、更にいくつか検討すべき点があるとしている。


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