「デイリータイムズ」連載・糾弾レポート<第9弾>
伏魔殿 整理回収機構(RCC)の正体
「罪と罰」を問う

ジャーナリスト・今西憲之
  懲りないRCC(整理回収機構)の極悪な取り立て
  と厚顔無恥な体質
【2005年6月号】社会常識を逸脱したRCCの回収業務。それも当然と言い放つRCCは社員の不祥事を国民の税金で補填する。一体この集団は何なのか!?
 裁判所まで手玉にとる気で威光をふりまわすRCCの存在をこのまま認めていいのか!!


  本人死亡10年後に突然の返済要求


 「日栄よりひどい」
 吐き捨てるように話すのは、大阪のある弁護士だ。ひどいと言われているのは、整理回収機構(以下、RCC)。
 日栄(現在はロプロに社名変更)と言えば、6年前に、銀行が貸し渋りの際に、商エローンで業績を伸ばし 「目ん王売れ、腎臓売って払え」 と脅迫的な取り立ててで、社会問題化したことが今も記憶に新しい。

 国民の税金で設立され、国民のために回収業務を遂行しているRCCがひどい取り立てをしているというのだ。
 「社会常識などどうでもええ、トコトンとったれという姿勢が日栄よりひどいという形容詞になってるんです」
 と前出の弁護士は話す。
 確かに、うなずける話だ。それは、RCCの債権取り立ての非情さは、国会でも問題視されるようになってきた。
 今年2月16日の衆議院予算委員会。民主党の中津川博郷議員はこんな例をあげた。

 <(ある家庭で)青森銀行からお金を借りてお父さんが亡くなった。遺族が相続放棄すれば(借金は)自分のところにかかってこないということなんてすが、知らなかった。銀行も教えない。結局、青森銀行はお父さんの不動産を取り上げ、息子さんに弁済を求めた。その一つとして競売も申し立てる。その物件は相続で得たものじゃなく、息子さん夫婦の共有所有。第一抵当権は住宅ローンでまだ残金がある。そんな物件に強制競売>

 前出の弁護士が言うように、トコトンという姿勢がみてとれるのである。その一端を具体例でここに紹介する。
 関西在住のA子さんは、年配の女性。 「国の税金でつくられ、国民のためという会社にこんなことされるとは、信じられませんでした」
 と今もふんまんやるかたないという表情で話す。ご主人はクリーニング店を長年経営しており、平成2年に死亡した。
 過去の破綻していた金融機関と直接の取引はなく、RCCとかかわることもなかった。それが、突然、1通の手紙が届いたのは、平成13年の年があけて間もないころだった。
 差出人はRCC。主婦であるA子さんは、よく意味がわからなかったが、どうも保証人になっているので債務を支払えという内容であることだけは理解した。だが、なぜRCCからそんな手紙が来るかわからない。保証人となっているご主人は死亡して10年以上になるのだ。
 調べると、ご主人が非常勤役員をしていたB社が昭和61年ごろに、2億円借りた際に、連帯保証人となったのだ。この2億円は、関西の信用組合が日本長期信用銀行(以下長銀)の代理としてB社に融資したものであった。
 しかし、信用組合も長銀も相次いで破綻。B社の債権はRCCに移行したのだった。そして、B社は経営状況が芳しくなく、平成11年ごろ、支払いが滞った。債権はRCCに委譲され、保証人に返済を求めてきたのだ。
 だが、A子さんにとっては寝耳に水。ご主人がB社の2億円の保証人になっていることは知っていたが、死亡後10年以上も経過して請求がくるとは思ってもいなかった。そこで、B社に相談してみた。
 「おかしい。借金の時には不動産担保をご主人から提供してもらっていた。しかし、死亡した時に保証人として有効ではないので、不動産担保も放棄。新たに私の妻を保証人に立てているのです」
 ご主人と長年、信頼関係にあったB社の社長はそう説明した。すでに、保証人ではなく取り立ての対象とならないのである。
 それをRCCにA子さんは説明した。するとRCCは<金銭消費貸借契約証書>と書かれた書類を提示してきたのである。連帯保証人には、確かにA子さんのご主人の名前が出ている。
 「名前は抹消している」
 「いや、書類のまま」
 双方の話し合いはかみ合わず、RCCは民事裁判に訴えてきた。B社の社長は弁護士の事情聴取にこう答えている。
 「A子さんのご主人が死亡した時に、信用組合の理事長らも出席。融資の契約から死亡したことで関係がなくなるので、脱退を申し入れました」
 その結果、不効産担保となっていた自宅の抵当権設定が外された。抵当権抹消を証明する書類もA子さんに渡された。
 「もちろん、それは物だけでなく保証人として効力も消えるものと理解していた。
それは信用組合も同じです」 とB社の社長はそう答えている。

社員の不祥事も国民の税金で補填

 裁判で争点の一つになったのがRCCが残していた信用組合の稟議書(りんぎしょ)。そこには、不動産の抵当権を抹消する記述はあるが保証人としての効力については何も記されていない。
 「判例で不動産などの抵当権設定を抹消した場合、当然、人的な保証の効力もなくなるというものがある」
 とA子さんの弁護人は反論した。そして、B社の社長も自らが支払うので、保証人に請求しないでと求めた。
 しかし、一審ではA子さんやその息子らに約4000万円RCCに支払えという判決が下った。A子さんが控訴したところ、約3500万円を一括で支払うと内容で、平成15年に和解が成立した。
 前出の弁護士によれば、この裁判で問題点が浮き彫りになったという。まず一つは裁判所の姿勢。
 「裁判所は最初から『書類がある』というばかり。RCC、いわば国が原告なので、何でも正しいと完全に信じきっており、被告の主張を聞く耳を持たない」
 そして、とりわけ問題視されているのがRCCの姿勢だという。
 「あるRCCの弁護士に聞きました。すると今回のようなケースは『筋が悪い』と普通なら裁判にはしないそうです。しかし、弁護士や担当者のさじ加減で、強引に裁判にかけてとってしまう。先に述べたようにRCCの威光で負けないという見込みの元にやる」
 と弁護士は怒るのである。
 また、この事案は「借金王」が数々いた住専の事案と違い、破綻金融機関。バブル時代は融資を競い、オーバーに貸し付けることは当たり前たった。よく借り手の責任は追求されるが「貸し手」にはなかったのか。健全な経営ができなかったために破綻した金融機関の融資が正常だったのか。そんな視点はRCCにはまったくない。
 「うちは回収さえすればいい」
 という理論だけだ。
 そこまでしてRCCは、回収を極大化しようとするのだろうか。かつて、国会ではRCCの社員や弁護士に成功報酬が約束されているのではないかと追及された。
RCCの答えは「ない」。
 そこであるRCCの関係者に関くとこんな答えが返ってきた。
 「成功報酬がないだけ。実際には、あの弁護士がいくら回収したという資料があり、影で競わせているのです。金額の少ない弁護士は少々無理をしても、回収しようとする。社会常識など無視して、とれるもんはとってしまえという風潮です。RCCという印籠があるので、多少、強引なことやってもとれてしまう。それを実践する弁護上が重宝される」
 それは、法廷外でも同じだという。一般債権でRCCと民間企業や金融機関が重なった場合でも、RCCは自らの主張を強引に押しつける。
 民間企業が月に債権額の5%の返済を認めているのに、RCCはもっとよこせと10%、20%と求めてくる。その結果、債権者は食うや食わずの「生き地獄」を味わうことになる。そんな例がいくつもある。
 前号でも、指摘したがRCC社員による詐欺事件。4月15日に実刑判決が出された。その刑事裁判の中で、RCCが使用者責任を認めて、被害弁済することが判明している。
 民主党の原ロ一博議員は言う。
 「国会で『社員の不祥事を国民の税金で補填するのか』と弁済が本当かどうか追求しました。するとRCCの奥野社長は黙ったまま。さらに『黙ったままなら、補填することを認めたと理解します』と言っても答えません。RCCは国民のためにならない。早く、国としてどうするのか、論議をはじめなければ取り返しがつかないことになる」
 その言葉はRCCにどう響くのだろうか。