「デイリータイムズ」連載・糾弾レポート<第11弾>
伏魔殿 整理回収機構(RCC)の正体
「罪と罰」を問う

ジャーナリスト・今西憲之
 《金融サービサー(RCC整理回収機構、債権回収会社)による目をむくような酷い取り立てが全国的に起きています。銀行の貸し手責任を問う会は立法措置を含め金融被害者の救済を訴え、金融庁や国会などへ要請活動を続けています。被害現状を改善するためには、とくに国策回収会社のRCCの問題姿勢を質すことが喫緊の課題となっています。RCCからの被害状況を把握する上で注目すべき月刊誌連載「整理回収機構(RCC)糾弾レポート」があります。
 出版社は「デイリータイムズ」(DAILY TIMES)です。筆者はジャーナリストの今西憲之さんです。連載はすでに10回を越えていますが、順序不順、タイムリーな話題から順次紹介致します。第1回目は「糾弾レポート 第11弾」から始めます》

「悪代官」のイジメさながらのRCCによる
債権回収手口
スト
・今西憲之
【2005年8月号掲載】《国民の税金で債権を買い取り、税金から報酬を得ているRCCの対応は、高飛車かつ脅しめいたもの。少なくとも彼らの回収に直面した人はほとんどがそう感じている。親方日の丸の特権意識のなせる業は今も昔も変わらないようだ》

高飛車なRCCの「回収手口」

デイリータイムズ2005年8月号
 「RCCって、時代劇に出でくる悪代官という言葉がぴったりな国策会社です」
 と憤慨するのは、東京都武蔵野市に在住する脇本肇さんである。
 地元で40年間、畳屋を営んできた脇本さん。老舗の畳屋として、熟練した腕とその信用で長く店を続けていた。引退後は弟子に店をまかせながら伝手伝いをしていた。突然、紛争に巻き込まれたのは、1996(平成8)年のことだった。 岡山県出身の脇本さん。地元に親族から相続した借家20軒の土地と建物を所有していた。その物性に抵当権が設定され、1億5000万円の融資が実行され、脇本さんや息子などが連帯保証人になっていることがわかったという。
  融資元は岡山県信用組合。借りたのは脇本さんの親族。地元の“名士"として通った人物だった。
 調べると、融資は91(平成3)年に行われていた脇本さんはまったく知らない融資。脇本さんが生まれ育った本家に犬切なものを保管しておけばいいという考えから、印鑑や住民票を岡山市に置いていたため、それを悪用されたというのだ。
 民事裁判で係争したが、印鑑が押されてあると一審では岡山県信用組合が勝訴し、脇本さんは控訴した。だが、岡山県信用組合は2001(平成13)年に経営が破綻。地元銀行に事業譲渡された。
その際、脇本さんの債権についてはRCCに継承されたのであった。
 「岡山県信用組合もかなりうるさく言ってきました。けど、RCCと比べたらたいしたことなかった。耳そろえて、すぐに払えとRCCは高飛車でしたよ」
 と脇本さん。
 第三者に名義や印鑑を勝手に利用され、不動産まで抵当権設定されるなどした内容を伝えた。一審の裁判についても細かく説明して窮状を訴えた。税金で設立され、運営されるRCCなら、ある程度の理解が得られないかと考えたのである。
 しかし、RCCは「払え」の一点張り。抵当権設定されている、岡山県の貸家については競売申し立てをしすぐにでも競売になりそうだという。RCCの要求はそれにとどまらなかった。  
 脇本さんが続けてきた畳屋。店舗兼自宅はi20坪の土地と建物。老後のことを考えて東京都三鷹市に築30年近いマンション1室と千葉県に100坪ほどの土地を所有し、賃貸物件として貸し出し
ている。RCCはそれらの物件を要求し、さらに3000万円を現金で支払うことを和解条件にしてきたのである。
 前述のように、1億5000万円の借金の担保と連帯保証。その中には、武蔵野市の自宅や三鷹市のマンション、千葉県の土地にはRCCの抵当権は設定されていない。RCCはそれまでを手中にしようとしているのだ。それも、直接の債務者ではない、連帯保証人に。
 長く築いてきた自宅をとられてしまうというのは、脇本さんのこれまでの長い人生で最大のショックだった。自分の腕一本で築いた自宅兼店舗。現役を退いた後も、あとをついだ弟子に店舗を貸して、収入を得ていた。
 「自分のこれまでの頑張りがすべて否定されたよう寸、本当に悔しかった」

 不透明なRCCの「不動産売却」

 RCCとのその交渉は今年3月ころから数回仁渡って行われたという。 RCCの中野坂上にあるオフィスでの交渉。とりわけ強行だったのは、50歳くらいのRCCの弁護士だった。

 「裁判になると損するから、払いな」
 厳しい口調で弁護士は言ったという。
そこで、脇本さんは 「元々、RCCはいくらで私の債権を買ったのか教えてほしい。国の税金でできた会社なんだから開示する義務がある」
 と尋ねた。すると、RCCの弁護士は
 「金額は言えません。商売やっている人が商品の仕入れ値、教えることができないのと同じですよ」
 という変な理屈を並べたという。税金を使って債権を買い取り、税金から報酬を得ていることを棚にあげて、白分たちの都合のいい主張ばかりを緩り返すのだ。
 それでも、拒否する脇本さんと、同席した脇本さんの弁護士。あまりに、ひどい対応に脇本さんの弁護士がキレてしまい
 「もういいよ帰りましょう」
 と席を立ったという。すると、RCCの弁護士は追いかけてきて
 「決断するのはあなたですよ。家もとられてしまいますからね、このままでは」
 と捨てぜりふを吐いたそうだ。まさに「脅し」である。
 こんなケースは脇本さんだけではない。記者に助けを求めてきたケースで言えば
 「もう、買い主見つけたから、細かいことごちゃごちゃ言わないで、早くRCCに差し出せよ」
  「RCCはいねば国策会社。国相手になんぼ、文句いうてもアカンぞ」
  こんな口調で脅されたというのは、大阪の借務者Aさんだ。
 RCCから約3債円の債務の交渉をしでいるという。Aさんによれば「もう土地の買い主は決めているというのですよ。その3債円について、RCCが要求している不動産とはまったく関係なく、抵当権設定もされていない。そんな状況にもかかわらず、先に買い主をみつける なんて、神経を疑う」
 Aさんの弁護士によれば、RCCの不動産売却にづいては、非常に不透明な入部分か付きまとうという。
 「適当に3社くらい入札させて売却が決まるようです。社員がよく知っている不動産業者に声をかけ、いわば形だけの入札とも噂されています。だから、異常に低い値段で落札される。それが不動産の下落をより顕著にさせるのです。そんな物件を紹介したRCCの社員には、不動産業者から見返りのお礼があるという噂がもっぱらです」
 これでは、職務を利用した背任行為ではないのか。
 国会でRCCのあり方を追及している中津川博郷議員(民主党)は言う。
 「RCCは無担保の債権は1000円で買っているというのが私の国会の質問で明らかになりました。どんな金額でもほとんど1000円です。脇本さんの場合、担保はありますがたぶん数万円とかで買い取っているんでしょう。それも連帯保証人で、親族が勝手に借金したと係争しているものに、こんな取り立てはとんでもありません。
いつも個々めケースには答えられないと逃げますが、山のようにこんなケースがあり、一つ一つに回答していたら収拾がつかないから言えないのでしょう。RCCのや
っていることは『側喝』という以外にない。国民にためにならず、ただ苦しめるだけの会社だ」