銀行・金融被害多発の根源
  
印鑑と連帯保証人制度の問題点にメス

 衆院財務金融委員会(2004/04/23)で中津川博郷議員が追及
 連帯保証人の責任を軽減し包括保証を禁止せよ!

 2004年4月23日開らかれた衆議院財務金融委員会で中津川博郷議員(民主)が銀行・金融被害多発の根源になっている連帯保証制度の重要な欠陥問題を取り上げ、政府当局に質問しました。
 中津川議員は、印鑑問題や連帯保証制度の見直しとして、連帯保証人の責任の軽減と包括保証の禁止を強く求めました。制度の見直し実現は金融被害者の救済と被害の再発防止に貢献するもので、中津川質問は各方面の注目を集めています。

 衆議院財務金融委員会の会議録から中津川質問の全文を、以下紹介します。

■衆議院財務金融委員会・会議録(2004年4月23日)
【出席委員】 
   委員長 田野瀬良太郎君
   理事 西野あきら君 理事 萩山 教嚴君
   理事 村井  仁君 理事 山本 明彦君
   理事 島   聡君 理事 長妻  昭君
   理事 上田  勇君
      江崎洋一郎君    木村 隆秀君
      熊代 昭彦君    小泉 龍司君
      河野 太郎君    七条  明君
      田中 英夫君    谷川 弥一君
      中村正三郎君    萩生田光一君
      林田  彪君    原田 令嗣君
      平井 卓也君    増原 義剛君
      松島みどり君    宮下 一郎君
      五十嵐文彦君    吉良 州司君
      小泉 俊明君    鈴木 克昌君
      武正 公一君    津村 啓介君
      中津川博郷君    西村智奈美君
      藤井 裕久君    馬淵 澄夫君
      松原  仁君    村越 祐民君
      吉田  泉君    谷口 隆義君
      長沢 広明君    佐々木憲昭君
    …………………………………
   
   財務大臣         谷垣 禎一君
   国務大臣        
   (金融担当)       竹中 平蔵君
   内閣府副大臣       伊藤 達也君
   財務副大臣        山本 有二君
   財務大臣政務官      七条  明君
   政府参考人
   (内閣府政策統括官)   小平 信因君
   政府参考人
   (金融庁検査局長)    佐藤 隆文君
   政府参考人
   (法務省民事局長)    房村 精一君
   政府参考人
   (財務省理財局長)    牧野 治郎君
   参考人         
   (日本銀行理事)     白川 方明君
   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

【中津川博郷議員の質疑内容全文↓】

○田野瀬委員長 次に、中津川博郷君。
○中津川委員 民主党の中津川博郷でございます。
 きょうは、財務金融委員会で質問の機会を与えていただきありがとうございます。久しぶりにこの委員会で竹中さんとまた質疑ができるということで、いろいろ、特にきょう質疑をしたいのは、銀行に対する法規制ということを中心に絞っていきたいと思うんですが。
 その前に、最近は景気回復、あるいは地価上昇、物価上昇、企業の業績回復、株価上昇というようにいいニュースが新聞紙上躍っておりまして、これは大変結構なことだと思っております。思い返しますと、小泉政権になったとき、株価は日経平均一万四千五百円、そして七千円台まで下がりまして、今一万二千円ぐらいのところですか、あと二千五百円ぐらいまだ足らないわけでありまして、ここで喜んでばかりはいられないわけでありまして、ぜひ橋本内閣の二の舞にならないように、あれは政策を間違えてがくっと失速しましたから、それを一番懸念しております。結局、小泉内閣は何もやってこなかったわけですから、何もやらない方がいいのかもしれませんけれども。
 とにかくまだまだ消費というものは低迷をしておりまして、今、厚生労働委員会でも議論しております年金の問題とか、日本人は将来に対して不安、不信でいっぱいでありますので、これを取り除かない限り、景気は本当によくなった、明るくなったということは言えないと思います。
 こんな時期に、私たちは、バブルと、その後のずっと続いてきた長いデフレ、これがもたらした負の遺産に対して、今もう一度真剣に向き合わなければいけないと思っております。
 銀行の問題に入るわけでありますが、バブルの時代に銀行が何をしてきたのか。とにかく貸し付けて担保をとる、そういう過剰融資、提案融資、それがどういうようなことをもたらしたかということであります。
 とにかく土地などの資産を持つ個人に対して、土地担保を過剰に評価し、過剰に貸し付けた。借りてくれ借りてくれということで、銀行は熱心であります。支店長が本当によく来て、そして営業をして、とにかく節税対策にもなるんだ、マンションをつくれとかいうようなことで過剰融資、提案融資がたくさんなされてきた。
 そして、バブル崩壊後、その融資が担保割れを起こして債務超過になったわけであります。何かわけもわからぬうちに巨額の借金を背負い込んだたくさんの人たち、銀行や保証会社から容赦のない取り立てによって土地や自宅を差し押さえられ、競売にかけられ、一切の、身ぐるみはがされてしまった。これは日本全国の現象であります。競売、夜逃げ、倒産、こういう連続のこの数年間でありました。
 それで裁判に訴えます。しかし、これが不思議なことに、大体借り手の責任ばかりが強調されて、貸し手の責任というものがほとんど考慮されてこなかった。これは現実です。これは、今この瞬間にもこういう過剰融資に関する悲劇というものは多数存在しているわけであります。不良債権処理が終わったとかいろいろ言われておりますが、バブルの悪夢は終わっていないんですね。まだバブルの夢の中と言っても過言ではないと思います。
 私も地元が下町なものですから、中小零細、個人商店主の方がたくさんいます、代々そこに住まわれたそういう人たちが。本当にしばらくぶりに行ってみたら、全部平地になっていたというような状況が今も続いているわけであります。
 そこで、冒頭に申し上げました銀行の金銭の貸し付けに対する規制についてお伺いしたいと思うのであります。
 数年前に、社会的に商工ローンが問題になりました。その結果、平成十一年に貸金業の規制等に関する法律というのが改正されまして、以後、貸金業に対しては、保証人へのその都度の書面交付の義務づけが行われるようになったわけであります。改正前は保証契約締結時のみの書面交付が義務づけられていたものが、根保証契約において債務者に追加融資が行われた場合は、その都度保証人にも書面交付をすることが義務づけられたわけであります。これは消費者保護の観点から遅きに失したということでありますが、当然の改正であります。俗に言うサラ金とか、消費者金融と言われるものでありますが、そこで、私は常々不思議に思っているんですが、現在、銀行にはこういうような法規制というのはあるのかどうか、まずお答え願いたいと思います。
○伊藤副大臣 お答えをさせていただきたいと思います。
 今委員御指摘のように、平成十一年に貸金業の規制法が改正をされたわけでありますが、銀行につきましては、保証人への書面の交付を一律に義務づける明示的な規定というものは定められておりませんけれども、銀行法上、貸し出しを含む業務全般につきまして、顧客の知識、経験及び財産の状況を踏まえた重要な事項の説明に関する十分な体制整備を義務づけているところでございます。
 これを受けまして、金融庁といたしましては、事務ガイドラインにおきまして、金融機関が貸し手としての説明義務、説明責任を果たすよう、内部管理体制の強化を促進する観点から、第三者との包括根保証契約は、保証人の要請があれば債務者の借入残高等の情報を提供する、あるいは契約書等の書面の交付、こういうことにつきまして、金融機関による与信取引に関する説明体制等の検証を行う際の着眼点といたしているところでございます。
○中津川委員 伊藤さん、よくそうやって自信を持って言えますね。何が十分な、銀行を、消費者、借り手の立場に立っている、自民党の、与党の議員さんたちも本当にそう思っていますかね。そう思っていたら、こんな問題は出ないじゃないか。ガイドラインじゃないですか。運用上の問題じゃないですか。何で貸金業に規制があるのに銀行に対してはないんですか。これは率直な疑問ですよ。前から私は思っている。そう思っている方は党派を超えてたくさんいますよ。どうですか。これは法改正するべきじゃないんですか。
○伊藤副大臣 先ほどお答えさせていただきましたように、私どもとしては事務ガイドラインの中で整備をさせていただいて、このガイドラインというのは極めて規範性の高いものでございます。そして、内部管理体制の実効性に問題がある場合には、必要に応じて報告徴求をいたします。そして、報告徴求をして、その内容を精査して、これは問題だという場合には業務改善命令を発出する、こういう形になっておりまして、このような仕組みの中で監督上しっかり対応して、いろいろな問題が生じないように私どもとして厳正に当たっていきたいというふうに考えているところでございます。
○中津川委員 私は常々思っているんですが、日本という国は銀行性善説なんですよ。昔から、銀行というのはまじめでおかたいというイメージの代名詞でしたね。金貸しというと、何か血も涙もない悪いイメージというのがありますが、銀行員というのは信頼と安心感。銀行に就職したというと、よかったねと昔は言われたんです、何か今聞くと、大変なところに就職しているねと言われるというふうにこの間言っていましたけれども。
 確かに、明治以来、日本が発展していく上で銀行が大きな役割を果たしたことは、私も異論はありません。それは恐らく、性善説というものをそういうことがつくってきたんだと思うんです。まさか銀行が庶民を泣かすとかだますとか、悪いことは絶対にしない、これは普通の考えですよ。しかし、実際は残念ながらそうではなかった。銀行は考えられないことをやっているんですよ、竹中さん。
 それは、今お話ししました商工ローンで問題になった根保証よりも範囲が広い包括保証なんというのがあるんですよ。バブル期に多くとっていたんです。恐ろしいんですよ、これは。地獄ですよ、地獄。
 これはちょっと説明したいと思うんですが、資料一から三、皆さんのところに届けてあります。これは実際にあった話であり、実際の数字であります。
 「返済状況集計表」と書かれていますが、この融資を受けられたAさんは、平成元年当時、世田谷区に時価約四十億円と評価される土地を所有していました。資産家であったものの、一主婦です。そのAさんに対して、平成元年から三年の約二年間に、旧富士銀行から目が飛び出るような巨額な金額が貸し付けられているんです。愛想のいい支店長と担当の者が一日じゅう来たと。
 資料の借入金額を見てください。私なんか見たこともない数字が並んでいますが、これは幾らなのかすぐにわからないでしょう。足し算が大変なので、私、計算してきましたが、本人に対して十八億三千百万円、そして、夫や夫の会社への融資を加えると、何と総額で二十五億八百万円貸し付けているんですね。そのうち、変額保険、株式購入資金、その利払いのための融資が十五億四千五百万円です。土地持ちの資産家であるとはいえ、一主婦ですよ、収入のない主婦です。こんな短期間にこのような巨額を貸し付けた、これは高利貸しですよ。銀行も銀行、大銀行の富士銀行さんですよ、これは。驚きますね。
 私は、その手続とか説明についても甚だ疑問を感じているんですが、それにも増して問題だと思われていることは、銀行の主張によると、主たる債務者の子供は相続人であるという理由だけで、彼から連帯保証、それも包括保証をとっているんですよ。その当時、この一人息子は学生さんですよ。にもかかわらず、銀行は包括保証をとった。しかも、契約当初、約六億円のアパート改築資金以降の融資については、保証人の当の息子さんには銀行から一切通知、説明はなかった。また、後に行員は、息子さんを連帯債務者にする気はなくてね、払えなければ不動産を売却すればいいじゃないですかと、大方ほかのところでもこんなようなことを言って、におわせて、認識を示したそうです。
 その後の経過は御想像のとおりでありまして、バブルが崩壊して、あっという間に地価が暴落をして、Aさんは瞬く間に払い切れない巨額の債務を背負うことになったんです。
 これは特殊な例じゃないんです。数字が大きいだけの話で、似たような話がごろごろしている。
 そこで大臣にお伺いしたいんですが、このような問題融資で包括保証をめぐるトラブルは非常に多発していると申し上げましたが、これはやはりバブル期の銀行の提案融資、過剰融資に大きな問題があったんじゃないですか。
○竹中国務大臣 今お話を伺う限りにおいては、深刻な問題であるなというふうに思います。ただ、個別の事例については、今、私ちょっと判断できません、承知しておりません。
 また、包括保証、包括根保証をめぐる問題等々について、銀行の過剰融資があったかどうか、これは、それぞれ現実にそこに問題が生じているわけでありますから、まさに当事者間の問題が生じているという意味では、その当事者である貸した側、借りた側、それぞれケース・バイ・ケースでありましょうが、やはりそれなりの問題があったということなのだと思います。
○中津川委員 大臣は、いつも質問をすると個別の問題は答えないと言うんだけれども、個別が集まって全体になるんですから、一つ一つの個別のケースが大事なんですよ。
 包括保証の内容を皆さんにぜひ見ていただきたいと思いまして、資料四を持ってまいりました。これは、Aさんへの融資に際して実際に旧富士銀行が使用した保証書なんですが、資料四であります。この左側の一の欄ですね、「内容」として記載されている、「本人が別に差し入れた銀行取引約定書第一条に規定する取引によって、貴行に対し現在および将来負担するいっさいの債務。」こういうふうに書いてありますが、私、これを十回読んだんだけれども、なかなかわからなかった。大臣、わかりますか、これは。
○竹中国務大臣 ちょっと済みません、今いただいて目を通しているところなので、よくわかりません。
○中津川委員 頭のいい大臣ですから、エキスパートですから、大臣も今見たということで、これは二、三行の、いいですか、もう一回読みますよ。「本人が別に差し入れた銀行取引約定書第一条に規定する取引によって、貴行に対し現在および将来負担するいっさいの債務。」私、文学部ですけれども、ちょっとこんな日本語はわからないね。本当にわからなく書くのね、契約書というのは。役所の仕事もそう。わからなくすることが大事なんだというような。
 それで、これを見てください、いいですか、一番が包括保証なんですよ、二番が根保証なんですよ、三は特定保証なんですよ、ということが私もわかったんです。それで、普通の人が見ると、この包括保証の意味は絶対わからない。根保証の意味だって何となくわからない。しかし、「現在および将来負担するいっさいの債務。」なんというのは、ちょっと考えて、ああそうかと、例えば延滞金とか何かそんなものかなと取り違えてしまって包括保証人になってしまうというケースが、たびたび、たくさんあると思います。
 包括保証がどれほど恐ろしいものであるか、竹中大臣はわかっているのかわかっていらっしゃらないか、僕はわかっていると思うんですけれどもね。これは、いいですか、将来負うかもしれない借金まで全部一切を無制限に保証するということなんです。ある人の借金をエンドレスで、限度レスですよ、保証するということで、想像できますか。まともな感覚なら絶対に引き受けない、引き受ける人なんていないですよ、これは。まさに悪魔の契約ですよ。こんな契約が保証書には当たり前のように入っている。しかも、一番上にあるんですよ、これは。選択で、一番上に、何となく押しちゃいますよね。私なんかも人がいいものですから、一番上に押すと何かいいのかなと思って、銀行を信用していたら余計押しちゃいます。大臣、いかがですか。
○竹中国務大臣 これは、私は法律の専門家でもありませんし、解釈権もありませんけれども、民法の第四百四十七条第一項において、「保証債務ハ主タル債務ニ関スル利息、違約金、損害賠償其他総テ其債務ニ従タルモノヲ包含ス」というふうにされておって、一般に、保証債務が主たる債務に関する利息、損害賠償を包括する趣旨の保証契約を締結すること自体が法律上は否定されていないという状況になっているんだと思います。
 ただし、ここは現実の判断として、今申し上げたのは法文にそういうのがあるということを申し上げているわけでありますけれども、そうしたことについて、問題が、社会的に認識されている問題は一方であるというふうにも承知しておりますので、そうしたことを含めて、今法務省において御検討をいただいているというふうに承知をしています。
○中津川委員 きのうレクを受けまして、こういう包括保証というのが外国にあるのかどうかと、調べ切れないということで、知る範囲の資料を出していただくということでありましたけれども、私の聞き及び調べ及ぶところでは、外国には余りこんなのはないんですね。
 私のところには、連日、金融被害者の方がたくさん来ます。トラブルですね、そんな話をしますと――当時の背景を考えると、土地は下がらない、土地担保至上主義で保証人の保証能力というのを軽視していた、収入がなくても土地がこれだけあると。ですから、これはあくまで形式的なそういう判断で保証人を決めていた、そう思うんです。例えば子供を保証人にしたというこのAさん、まだ学生だったんですからね、そこでさらにこの問題が現在深刻になっているんですよ。
 そして、そういう包括保証による多額の連帯保証債務に関して、保証人は実際もう弁済不可能な状態がほとんどです。となると、解決の仕方は自己破産、そうでなければ債務免除の方法を考えるべきだ、この二つだと思うんですが。
 このAさんの息子さん、こういう親の苦労を見て、銀行に不信を持ちながら、弁護士になったんですよ。弁護士になった。立派ですね。大変な努力をした。そして、今、銀行は自己破産しろと言ってくるんですよ。自己破産をするということは、法律的に弁護士を廃業しなきゃいけないことになる。当時彼は学生だったんですよ。そして、努力して弁護士になった、法律の専門家になった。正義感もある。しかし、最初四億か五億の保証が、包括根保証で今三十億とも四十億とも、わけがわからないくらい多い。
 こんなような銀行の意地悪、自己破産しろということだけじゃなくて、こういうようなケースはやはり債務免除の手段とかいろいろ人を生かす方法というのを考える。クールな竹中さんでありますけれども、どうですか、大臣の考えを、私は今いろいろお話ししましたが、ぜひお聞きしたいと思っています。
○竹中国務大臣 これは御理解いただけると思いますけれども、今のケースに関して、債務免除すべきかどうかというようなことは、これはちょっと私の立場で申し上げることはできないというふうに思います。
 ただ、これはそれこそ、それぞれの個別の事情に基づいて、当事者間でしっかりと話し合っていただく、場合によっては司法の力をかりてその決着をつけていただく、基本的にはそういうような法律行為の問題であろうかと思います。
 ただし、その際に、当然のことながら、銀行としては、やはり社会的に責任ある立場として、一方で預金を預かっているわけですから、債権は回収できるものは回収しなければいけない、そうでないと預金者にも迷惑が及ぶ、そういう意味での銀行の社会的責任がございます。しかし、一方で、生かすものを生かして、それで将来の債権額をさらにふやすというのも、これも経営の一つの判断でございましょうから、そこは銀行として、まさに銀行業を担う、そういう免許を受けた者として、しっかりとした判断がなされるべきであろうというふうに思います。
○中津川委員 相変わらず血も涙もない、クールな発言であると思いますが、とにかく気の毒ですよ、気の毒。
 お父さんが土地を持っていた、銀行が金を貸した、おまえもいたから一緒に判こを押しておけ、一番上のところへ押した。あるいは本人が押したかどうか、おれは、本人は押していない、お母さんが押しちゃったと。こういう問題を、竹中さん、しっかりやると国民は理解できますよ。こういうようなケース、本当の一つのケースで、私の身近なところなんです、自己破産させて弁護士をやめさせればいい、そんなことで片づく問題じゃない、それを申し上げておきます。
 そこで、今、判この話をしました。時間が押してきましたので、資料五「ハンコが凶器になる」というのがあります。この判こを、凶器といったって、判こを使ってプロレスみたいに顔をつっつくのじゃなくて、そういうことじゃない。これは詳しく資料を読んでいただくとわかると思いますが、私たちの、前に山田議員がこのことについて質問をし、それに関連をして、私もその後の進捗状況というものを確認したかったものですから、きょうあえて質疑をさせていただいたわけであります。
 ある日、全く身に覚えのない巨額融資の連帯保証人に自分がなっていることを知らされる。契約書を見ると、保証人欄には勝手に自分の名前が使われ、自分の判こが押してある。銀行は、判こがあるんだからこの契約書は有効だ、金を払え、そういうふうに言います。契約書を証拠にどんどん裁判を起こす、判こがあるから。しかも、ほとんどの場合、裁判で九九・九%に近い、これもデータを求めたんですが、なかなか正確なのが出ないということですが、全部銀行が勝っているんですよ。
 旧三和銀行、今のUFJ銀行です。争っている杉山さんの場合は、絶対に間違うはずのない自分の名前が間違っているのに、それでもみずからの意思で保証人になったのだと銀行側は主張しているわけですね。判こを押させればこっちのもの、そういう思いですよ、銀行は。兄弟から判こを貸してくれと言われて、貸したら連帯保証人にされてしまい、金を払えと言われたと。裁判に際して、兄弟は無断で判こを押して筆跡も偽造したことを認めていたにもかかわらず、裁判所は判こが本人のものであることを理由に保証書を有効であると判断し、五億円支払えという判決を出した、こんな判例もあります。
 実は、民訴法二百二十八条四項というのがあります。冒頭に申し上げました、昨年の二月、山田議員が予算委員会で質問をしました。その際に森山法務大臣が、これは古い法律であって、改正を検討する対象になり得ると言ったんですね。改正を検討する対象になると。前向きですね。日本の民訴法の歴史が動いたというふうに、この私の資料の筆者の山田さん、これも山田さんですが、これは朝日関係の人です、この人が書いています。
 この条項は大正十五年ですよ。八十年近くもたった古いものですね。これはもともと判この重要性というのを法的に補完した意味合いがあったと思うんです。昭和三十九年に、最高裁が本人または代理人の印鑑が押されていれば本人の意思に基づいて作成された文書であると推定されると。要するに判こが押してあれば、契約の見た目だけでなく本人の契約するという意思までも認める判決を出してしまったために、判こを押してしまえばもうこっちのものという傾向を金融機関に助長させたという議論、意見があります。
 さあ、この質疑から一年たちました。私はきょうは期待をしております。森山議員、森山大臣ですよ、こういうふうにやるということを言っておりますので、この進捗状況、現状報告、法務省はさぞかし一生懸命取り組んでいると思うんですが、いかがでしょうか。きょうは、いっぱいこれをインターネットで見ていますからね。どうぞ。
○房村政府参考人 御指摘の民事訴訟法の二百二十八条の四項、「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」こういう規定が設けられておりますのは、一般に日本で文書を作成した場合に、みずからその文書を作成したということをあらわすためには、その方が署名をするまたは押印をするというのが一般的な慣行である。そういうことを踏まえまして、署名または押印をみずからの意思に基づいてしている場合には、後になって、その文書が自分の作成したものでないということは原則として言えない、こういうことを定めております。
 この条文が「推定」となっておりますのは、署名あるいは押印がされた後に文書が偽造される、変造される、こういう場合もございますので、そのような場合には、署名あるいは押印が本人の意思に基づいていても、変造後の文書について本人が作成したと言えないということは明らかですから、そういう場合にはこの「推定」が破れて、例外的に本人が作成したものではないと扱う。こういう、ある意味では文書の成立に関する日本の通常の、いわば常識的な扱いを法律が定めたものでございます。
 そういう意味では、もちろん非常に古い法律ではございますが、文書の作成について、署名または押印によってみずから真正に作成をしたということをあらわすという一般的な慣行そのものは現在においても維持されておりますので、もちろん古い法律でございますので、一般的に申し上げて検討の対象にならないわけではございませんし、そういうことを含めて大臣も検討の対象にはなるということは国会で答弁を申し上げたわけでございますが、基本的には、この中身自体について、現在の慣行を踏まえても、なお現段階において直ちに改正しなければならないという必要性はないのではないかというのが現在の基本的な考え方でございます。
 なお、御指摘のような最高裁判例がございまして、この法律で言っていることは、署名または押印が本人の意思に基づいているというときにその文書が真正な成立が推定されるということでございますが、いわゆる契約書等に印影が押されていることから、その印影が本人の意思に基づいて押されているということを事実上推定していいかどうかという点について先ほど申し上げたような最高裁判例がありますが、この点については、裁判所において、印影が本人の印章によって間違いなく押されているとしても、例えば印鑑が他人に預けられているあるいは相手方が出入りをして知らない間に勝手に使える、こういうような事情がある場合にはその判こに基づいて押されていてもその推定はできないんだ、こういうような判決例も数多くございますので、そこは裁判所がそれぞれの事情に応じて、単に印影が一致しているというだけではなくて、その事情を調べてそういう推定ができないという場合を認定している例も相当数ございますので、そこは裁判所において適切に判断していただけているのではないか、こう思っております。
○中津川委員 長々と言ったけれども、そういうことを聞きたいんじゃないんですよ。大臣が改正の必要があると言った、だから、どの程度役所の中で議論して進んでいるのかと聞くの。あんたたち、いつもできないできないばっかり言って、やる気がない。あんた、大臣の下にいるんですよ、全然きょうの答弁は後退しているじゃないか。後退しているじゃないか。大臣なんだよ、日本の大臣。きのうも、レクが来て偉そうに言うんだよ、こういうのはできない、これはこうだああだって、役人が。だめだよ、そんな答えでは。ちゃんと検討したのかどうか、ちゃんと答えて。それで、どの程度進んでいるのか。それとも、あなたの意思でやらないのか、今の大臣は違った考えなのか、ちょっとそこのところを。これだけマスコミにも載って、これはセンセーショナルになったんですよ。今、時代が違うんだから。判こなんというのは、今はこういう時代で、デジタル化の進歩で判この偽造なんて簡単なんですよ。答えてください。
○房村政府参考人 先ほど申し上げましたように、大臣が国会で、このもとになった条文そのものは非常に古い時代にできたものですから、古い法律でもあり、検討の対象になるということは申し上げておりますが、それを踏まえて私どもも内部的に検討いたしまして、先ほど申し上げたように、文書の成立に関する一般的な慣行としては、制定当時から現在まで、やはり署名または押印によって文書の成立をあらわすという慣行は大きく変わっていない。また、当面、電子的なものは別でございますが、文書の作成という意味でいえば今後も余り変わらないだろうということから、少なくとも現段階においてこの民事訴訟法を直ちに改正する必要はないのではないかというのが、現在、大臣の指示を受けて検討した私どもの考え方でございます。
○中津川委員 今の大臣はそういう考えということなんですか。森山大臣と今の大臣は考えが違うということですか。
○房村政府参考人 これは大臣が国会で答弁したのを受けまして私どもも検討して、森山大臣にもその検討経過は御報告して、了解を得ております。
○中津川委員 全然後退じゃない。先ほども申し上げました、八十年前、この法律ができたのは。私は、判こが意味がない、無意味だと言っているんじゃないんですよ。今は、デジタル化の進歩によって、先ほども言いました、判この偽造はすぐできる。それから、契約慣習も変化している。今の民訴法二百二十八条の四項は、連帯保証人に実質的な立証責任を、今言いましたね、立証責任を課していると。これは、要するに、自分が押したんじゃないというのを裁判で言えばいいじゃないかというようなことですよね。しかし、いいですか、立証責任なんというのが難しい。
 局長、裁判、私もやったことないですけれども、やった人から聞いてみると、二、三現場を知ってくださいよ。それは、この立証に関しては債務者は不利なんですよ、判こが押してあると。銀行の内部の文書の提出を求めても銀行に拒否されてしまったり、裁判所も提出を命じることをしないことも大きいんですよ。
 アメリカはディスカバリーというのがある、証拠開示という制度があって、自分が不利益な証拠でも提出が義務づけられているんです。竹中さん、お話もいいんだけれども、アメリカ流のBIS規制とかあんなのをやって、日本の銀行ががたっとしちゃったんだから。こういういいのを何で取り入れなくて、変なのばかり取り入れるんだ、あんたは。それがわからないんだよ、いつも。
 日本の金融機関なんて、昔は、かばんを持ってお兄ちゃんが回って、おやじさん、元気って言って目ききで貸していたのが、BIS規制があるから。昔は、自分のやる気とあれがあれば、銀行の支店長だって心意気で貸してくれたんですよ。そういうのはやるけれども、こういう――こういうのをやらなきゃだめですよ、あなた、銀行に対して。
 これは不利益なものでも提出が義務づけられている。だから、日本にはそういうのがないから、借り手は弱いんです。それで文書の提出を求めて、銀行はその契約書を出せばいいんです、それですべてなんですよ。ほかは何にも要らないんです。裁判では、この判こが、本当に自分が押したか、盗まれたか、お母ちゃんが押したか、そういうことであるわけであります。
 きょう、情けないね。日本はまだ判こ社会ですよ。竹中さん、違うんでしょう。だから、アメリカへ行って――判こはいいんですよ、僕も日本の文化、伝統を守る、判こを否定しているんじゃないんですよ。きょうお話ししましたように、契約で大変な悲劇が、今日本は景気がよくなった、株も一万二千円まで来た、もう一息、そのときに、犠牲になっているこういう人たちがいるんだということ。やはりどこかこれは正常じゃないんです。
 きょうは、私は判この問題を、最初は包括保証の問題、こんなのはアメリカにないんですから。あれは各州ごとにいろいろ――こんなのないはずですよ。全部の州を調べたわけじゃないですけれども、ないはずですよ。何でそういう、今日本で必要なものをアメリカ好みの竹中大臣は取り入れないで、日本人が苦しむことを。だから、あんたは敵がいっぱい多いんだ。
 これで終わります。
○田野瀬委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。