みずほ銀行は、Gさんの競売を即刻取り下げよ。
   みずほ銀行の弁護士への手紙
                         2007年11月16日発
                             弁護士 椎名 麻紗枝

前略
 貴職から、平成19年11月12付け「ご連絡」と題する書簡をいただきましたが、Gさんらの意見をふまえ、これに対して、下記のとおり回答申し上げます。
まず、貴職の書簡によれば、任意売却したばあいには、年14パーセントの遅延損害金は、減免を検討することは可能であると書かれてありますところから、Gさんらは、みずほ銀行が、基本的には、従来の態度をなんら変えていないと判断いたしました。
また、同書簡が、みずほ銀行の譲歩できるのは、年14パーセントの遅延損害金の減免だけと言われていることからして、当方が貴職に提案したGさんの義弟への売却も、実質、拒否されたことだと理解いたしました。
私は、Gさんからは、Gさん一家が従来どおり居住できることがみずほ銀行との和解の条件であると念を押され、みずほ銀行との交渉を依頼されているのです。
 もちろん、私も、Gさんが上記和解の条件を出されていることは、しごく当然だと判断して、みずほ銀行との交渉をお引き受けしたものです。
 みずほ銀行は、わが国のトップメガバンクであり、みずほ銀行も、顧客第一主義を標榜している銀行です。Gさんの母親に対する本件貸付については、みずほ銀行は、法的責任はともかくとして、道義的責任は大いにあり、みずほ銀行も、これを反省して、当然、妥当な解決をはかることを期待したからです。
なぜならば、みずほ銀行は、Gさんの母親に本件融資をするにあたって、母親の年収が約60万円くらいしかないことを承知して、300倍以上の高額を貸し付けたものです。 当初から、みずほ銀行は、Gさんの母親に対する貸付は、潜在的不良債権であったことがわかっていて貸したのではないですか。
 さらに重要なことは、本件融資は、みずほ銀行の側から、Gさんの母親に対して、相続税の不安を煽って、相続税対策の目的で、本件融資を勧誘したことです。
 Gさんの母親としては、みずほ銀行からの執拗な勧誘さえなかったならば、あえて本件のような高額な融資をうける必要はなく、また、融資を受けることなど思いおよばなかったからです。明らかに、本件融資の必要は、Gさん側ではなく、みずほ銀行にあったのです。
 それにもかかわらず、金融事情が変化したからと言って、みずほ銀行が、返済条件を変更し、無理な返済を要求するのはあまりに身勝手ではないですか。
 しかも、Gさんの自宅は、みずほ銀行からの本件融資で買ったものではありません。
まさに、みずほ銀行から説得されたように、Gさんの母親が本件融資を受けたのは、長年住んでいた自宅を相続税の支払いのために、手放すことがないようにという目的だったのです。それが、みずほ銀行から、本件融資の返済のために、自宅を競売にかけられるなどというのは、誰が考えても、社会的公正に反します。
 貴職も、弁護士として、みずほ銀行の言い分が妥当だとお考えですか。
 なお、貴職は、特定調停を提案されております
が、特定調停を申し立てても、競売が停止するわけではありません。
特定調停の管轄裁判所から、特定調停にともなう、競売の一時停止の仮の措置の決定を得なければなりません。それには多額の保証金の供託が必要です。裁判を前提とした競売停止の仮処分とは違って、債権額の70パーセントという高額ではないにしても、Gさんのばあいの仮の措置の保証金は、4000万円以上の保証金の供託を命ぜられることになると思います。Gさんには、現在そのような資金を用意する手だてはありません。
貴職は、当方が、前回の手紙で、Gさんの義弟に本件不動産を買い取ってもらう話をしておりますことから、義弟からその保証金を借りたらよいと思っていらっしゃるのかもしれません。しかし、Gさんの義弟も、みずほ銀行との話がついたら、金融機関から借りて買い取るということで、現在、義弟が、そのような手持ちのお金は持っているわけではありません。
 貴職は、みずほ銀行側は、無条件では、競売を取り下げないと述べておられますが、みずほ銀行は、競売を取り下げたら、どのような損失を生じるというのですか。
 競売を取り下げたからと言って、抵当権までが消滅するわけではなく、依然、みずほ銀行の債権は、抵当権によって保全されています。もし、万が一、Gさんとの話し合いが成立しなかったばあいには、みずほ銀行は、再度、競売を申し立てられるでありませんか。
 みずほ銀行が、損をするとしたら、200万円くらいの競売手数料だけです。
 それにひきかえ、競売が強行されれば、Gさん一家は、生活破綻、さらには、優美さんの生命など、とりかえしつかない被害の発生が懸念されます。
 Gさんのケースは、マスコミも、また国会でも大きな注目を受けております。みずほ銀行が、Gさんの競売を取り下げれば、みずほ銀行の社会的評価が上がるでしょう。
ぜひ、貴職には、みずほ銀行に、人道的な立場から競売を取り下げるようご説得いただきたくお願いするものです。
                       敬具