< 「金融トラブル連絡調整協議会」の行方と私たちが望むADR>
融資型変額保険被害者の会 西原 良治
融資と一体化した変額保険の大きな被害者が顕在化したこともきっかけとなって、去る2000年5月に「金融商品販売法」が制定されました。その際、付帯決議がつけられ、この法律で日の目を見なかった裁判外紛争処理制度に対する早急な結論が、当時の金融監督庁の宿題になりました。いわばその宿題を果たすためにつくられたのが、「金融トラブル連絡調整協議会」です。
この協議会は公開だったので、当初私たちは傍聴に行きました。協議の内容から目的は金融商品の苦情や紛争を合理的に処理するための、既存の処理機関間の情報ネットの整備であるように感じられました。
しかし今年の1月半ば、この協議会の成果品が金融庁から「金融分野の業界団体・自主規制機関における苦情・紛争解決支援モデル(案)」という形で発表されました。内容は情報ネットに
とどまらず、理想的と称する解決のための手続きモデルが示されています。そこでは苦情と紛争を区別し、それぞれの解決支援機関の組織、責務、中立性、専門性等をうたい、申し立ての受理・審理手続き、企業側の受諾義務等、一通りの第三者機関らしい内容が並べられています。しかも冒頭の「基本理念」という部分では、次のような立派な文章が書かれています。
《ADR(裁判外紛争解決機関)が信頼性を高めるためには、公正中立で透明性の確保が肝要。このモデルは実際の解決支援を行う場合の規範をしめしたものである。》
《同種の苦情等の再発、拡大の(対症療法的)解決ではなく、当該苦情等の真の原因を解明することによって、同様のトラブルの未然防止が必要である。》―以上要約―
こうした基本理念の現状実施できる理想的な内容を、とくに業界団体が設置する期間を対象として強調しているのですが、一読して例えば「銀行よろず相談所」が、このモデルに従って本気で自主的に取組むとはとても思えませんでした。
このモデル(案)に対しては国民から広く意見を求めるということだったので、私たちとしてあらまし次のような意見を送っておきました。
一 苦情・紛争の処理ではなく「解決」とした点はよいが、解決と解決支援の違いがわからな
い。
二 融資型変額保険のように二つの業界の提携によって発生した大規模な紛争は、業界の
自主規制機関で解決できるはずがない。
三 当面国家行政法第三条の委員会に準じた機関が必要。
四 ADRの特徴は、現行法や判例に拘束されずに、社会的規範や良識にもとづいて双方が
合意する点にある。このことがモデルの中で強調されていない。
五 斡旋・調停案を消費者側が受諾し、業界側が受諾しない場合は、英国のオンブズマン制 度のように裁定を拒否できないような片面的拘束性を持たせるべき。
六 この解決機関を裁判の前段階として位置づけないこと。また、このモデルは各金融業者
の上位機関に適用し、適切な執行力を持たせること。
ADRが健全に機能するためには、同時に司法が消費者の立場を理解した公正さを持つことだ、と私は思います。