「デイリータイムズ」連載・糾弾レポート<第6弾>
伏魔殿 整理回収機構(RCC)の正体
「罪と罰」を問う

ジャーナリスト・今西憲之
“危ない会社”と一蓮托生のRCCの公共性はどこにある!?
【2005年3月号】 RCCとの取引で急速に業績を伸ばしたと囁かれる「不透明な管理会社」の存在。過去には国会質問の場でも名前が挙がり、社内ではタブーとさえ言われるというこの企業とRCCの関係とは?「特定の弁護士」の紹介で始まったといわれる両社の関係は、果してRCCに求められる高い公共性に沿うものと言えるのだろうか? 
CCで業績を伸ばした管理会社
 「おまえ、何やっとるんや」
 派手なスーツに身を包み、いかにも「その筋]といったいでたちの男が凄む。
 「調べてますねん。A社のことを」
 そう答えると
 「ごちゃごちゃいらんことするな。誰の許可もろうて調べとるんや」
 と男はなおを声を荒らげる。
「誰かの許可、いるんですか。調べるのは自由でしょう」
 「じゃかましい、出ていけ。もの分かりが悪いやつや。ワシを誰やと思うてるんや」
 「どちらさんですか。じゃ、名刺下さい」
 「もう、ええ。とぼけよって。今度、見つけたら承知せんから、忘れんな」
 そう捨てぜりふを吐き、男は子分らしき別の男と一緒に高級乗用車にふんぞり返るように乗り込み、立ち去った。
 これは整理回収機構(以下RCC)が所有権を保有している大阪市内のとある不動産物件で実際にあった話。派手な男に反論していたのは、朝日住建の元幹部社員で、中坊公平元社長を東京地検に刑事告発、起訴猶予に追い込み、弁護士廃業宣言をさせた内部告発者の増田修造氏である。
 「相手はいかにも、やばそうな感じの人。怖かったですけど、RCCという会社がこんな連中に仕事をやらせているのかと思うと、びっくりでしたわ」
 と増田氏は振り返る。
 増田氏が調査していたのは、RCCが保有する大阪市内の不動産物件。その管理を担当しているのが、A社という大阪府内に本社がある株式会社である。
 商業登記簿などでA社のことを調べると、最初は有限会社として登記され、その後何度か社名変更をしながら、数年前に株式会社になっていた。
 民間の信用調査会社でA社について調べてみると 「RCCの管理を定期的に受注。安定した経営状況。財務良好」という内容の記載がある。RCCの仕事を受注することで、業績を伸ばしているというのだ。
 増田氏が冒頭に対峙した男性はA社の幹部社員と思われる人物なのである。

過去には国会でも追及

 「RCCでは、A社に関する話は一種のタブーですよ」
 そう現役のRCC社員は声を潜めて教えてくれた。
 A社は数年前から、RCCが所有する不動産物件の管理業務を請け負うようになった。実際、RCCが所有する大阪府内の不動産物件を見て回ると、白地に赤のA社の看板がよくみられる。増田氏が調査したところ、関西から四国まで、多数の不動産物件を管理していることがわかった。
 そこを見ても、RCCとは親密な関係にあるようにうかがえるA社。しかし、その幹部社員と思われる人物は冒頭のような態度。現役社員は「タブー」という、謎に包まれたところがある。
 RCCの仕事を手掛けたことがある、ある法曹関係者が、断片的に本誌の取材に応じてくれた。
――A社とはどんな会社なのか?
 「不透明な会社だ」
――不透明とは具体的に?
 「得体が知れないということ。調べてもよくわからない」
――なぜ、そんな会社をRCCは使うのか?
 「A社は特定の弁護士とよく仕事をしておりその弁護士の紹介で、RCCの業務を請け負うようになった」
――仕事はどうなのか?
 「う−ん、トラブルが生じたこともあり、良好とは言えない」
――なぜ、そんな会社を使うのか?
 「その弁護士は元検察最高幹部の一人で、関西では1、2を争うとされる大物弁護士と非常に懇意で政治力もある。その
関係ではないのかという気がする」
――RCCは公共性が極めて高い会社。税金で仕事をしている。問題はないのか?
 「私、個人としてはそう思う。住わない方がいい。実際に国会でもこの会社が不透明な得体が知れない会社ではないかと、質問されたこともある。その後、急に『A壮を使うな』とお触れが出だのは、RCCでは知られた話ですよ」
――現在は使っていないのか?
 「いや、それまで管理していた物件は継続しているように聞いている。管理業務以外でもさまざまな形でかかわっているようで、RCCで食っているようだ」

 求められる一層の透明性


 そこで、A社について調べてみた。商業登記簿の社長の住所は何度も移転を繰り返していることがわかる。大阪市内のマンションの住所に訪ねてみると不在。大阪府内の戸建て住宅に行くと、監視カメラが何台もとりつけられて、インターホンを押しても不在。近所の人に聞くと、週に1、2回しか帰って来ないという話たった。会社に電話をしてみたが担当者不在でまったく取材に応じる気配もない。

RCCに不屈の戦いを挑んだ廣畑幸治氏
 RCCと長く戦ったことがある、廣畑幸治氏(本誌04年11月号参照)は不動産会社を経営している。
 「どう伝A社はRCCが売却する不動産物件とも関係しているのではないか」(廣畑氏)。
 RCCは所有する不動産物件を市場で売却し、破綻金融機関や旧任専の処理をしているのだ。RCCに関係する不動産物件は、数えきれないほどある。
 「不動産業界の噂としてですが、そこに利権があるらしいですよ」とも、廣畑氏は請す。
 かつて、国会でも、RCCが不動産物件を売却したり、回収金額が多い時は社員や業者に還元されることはあるのかという趣旨の質問がなされた。
 不動産にまつわる業務といえば、登記もあれば売買、その手続きなどさまざまなものがある。
 「不動産物件が安い、相場以上に安い。それはRCCが相場を知らず、安く売りはしめたことが一因とよく業界では言われる。なぜそうかというと、相場を知らず、特定の不動産業者の言いなりになったからだとささやかれています。A社はRCCのそんな裏事情の弱みを握ったことで、仕事をするようになったという情報もあります」
 とは調査した増田氏の見解だ。
 前述のように、管理業務を請け負うただの民間業者が国会にまで俎上にあがった。RCCの社員までも「不透明」な会社であることを認めるのである。
 RCCには多数の業者がかかわっている。
 「たぶん氷山の一角」と増田氏。一層の透明性が求められるのではないか。