「デイリータイムズ」連載・糾弾レポート<第5弾> | |||
伏魔殿 整理回収機構(RCC)の正体 「罪と罰」を問う ジャーナリスト・今西憲之 |
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弁護士の新しいマーケットに過ぎなかったRCCの創設 | |||
【2005年2月号】 37億円もの弁護士の新たなマーケットを開拓した中坊氏は、皮肉に言えば大変な功労者かもしれない。しかし、この時給2万円の暴走集団RCCこそ、糾弾されて然るべきである。そして、繰り返される使い込み問題など、国民を欺くRCCの化けの皮をはぐ日は近いのでは……。 |
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無駄な金を使うRCCの実態 |
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「20億円以上回収する」 RCCは当初、朝日住建にそう「布告」していた。その文書は今も私の手元に残っている。預金保険機構が100%出資している「国策会社」。それは「公文書」にも匹敵するものである。国民に20億円の回収をすると約束したも同然だ。それが、たった1億5000万円だ。それも自らの不始末で目減りしたのだ。ここでもRCCは国民を欺いていたのである。 「RCCでは、表面化はしていませんが交渉の不備で回収が減ったり、無駄な金を使っている例は少なくない」 現役のRCC社員はそう話す。 その一つの例が、弁護士である。 平成13年11月、民主党の衆議院議員河村たかしが、財務金融委員会で質問した。 「弁護士の時給が2万円] 「年間、弁護士費用だけで37億円」 「顧問弁護士(住専などの関与者追求にかかわる弁護士)63名の一人当たりの平均支払額は、2100万円」 いずれも平成12年の実績で、鬼追明夫社長(当時)がそう答えたのである。 「世の中、こんな高い報酬の仕事があるんですか。あまりに驚きました」 河村議員は、そう委員会の中で感想を語っているのだ。 「時給2万円は高すぎる」 こんな話が持ち上がった。そこで、数千円ほど減らしたり、東京や大阪などの大都市と地方で格差をつけたことがあったという。しかし、それでも弁護士への支出が減ったという話は聞かない。 「元々、RCCという会社はなかった。そこに中坊は社長に就任。37億円もの弁護士の新しいマーケットを開拓した。それも、国策会社、いわば税金を投入しているわけで、絶対に払ってくれる。たった1時間でも仕事をすれば金になる。こんないい話、ないじゃないですか。だから、弁護士は中坊を評価し、支援したのです。 それは決して、中坊の主張や行動に賛同したんじゃない」 と、大阪弁護士会に所属するある弁護士はそう説明する。 東京や大阪では弁護士の平均年収がおおよそ3000万円と言われる。顧問弁護士ならかなり近いラインに達することがわかる。それも63人もいるのだ。いかにすごいマーケットであるのか、よくわかる。 その弁護士の「質」がよければまだ救われる。しかし、現職社員に聞くと「10人の弁護士がいれば、9人まではどうにもならない。担当社員が案件を詳しく説明して、やっと理解できる。しかし、対処法など方針を示すことはなく、担当社員から提案があると『それでいい』というだけ」 というから、何のための弁護士なのかわからない。弁護士不要論を語る現職社員も複数いるのだ。 時給2万円のカウントも忠実なのかと言われると、疑念が持ち上がる。RCCの現役社員によれば 「深夜に会社にやってきて、2時間ほど会社にいて、始発電車でどこかに出掛けてゆく。『飲み代になった』とその弁護 士は言い、仕事はほとんど何もしていない」 「一つの裁判に複数の弁護士をつける。本当はひとりで十分なのに」 弁護士への無駄遺いが漏れてくるのだ。 年収2500万円のRCC社長 本誌11月号で、RCCを告発した廣畑幸治さんの場合を振り返ってみる。民事裁判でRCCの顧問弁護士の竹内隆夫が代理人を務めていたという。 竹内は、朝日住建の不適切回収事件のRCC側の弁護士でもあった。事件が発覚後も、廣畑氏の民事裁判では、RCC代理人を継続していた。廣畑氏側から指摘があり、やっと辞任届けを出したのだ。その間、当然、それに関する報酬を受け取っていたと思われる。 竹内は時給2万円で換算すれば、朝日住建の不適切回収の交渉では膨大な「利益」をあげたと思われる。私は一度、不適切回収の内部告発者、朝日住建元幹部、増田修造から交渉内容のテープを提供してもらい、交渉時間をはかってみたが、あまりに長く途中で辞めてしまったほどである。 「何千万円も朝日住建の交渉だけでもらったんじやないでしょうか。返却されたという話は問いたことがない」 現役職員はそう話しているという。 また、竹内と同じく不適切回収にかかわった池田等は、その後出世した。当然、給料もあがったであろう。不適切回収が発覚後、池田も降格されたという。出世した時点での給料は返却されたのであろうか。それを、RCC求めたのか。 厚かましいという言葉がぴったりだったのは、RCCの元役員で弁護士の村和男。役員として報酬を得ながら、RCCの裁判では代理人として名前を連ねているケースがあったのだ。それも別に弁護人がついているにもかかわらず、村の名前がある。この場合も、弁護士としての報酬も手にできる権利が発生するという。 中坊にしても、給料はもらっていないと言いながら、受け取っていた事実をRCCが認めている。また、社長を辞任し顧問となった後も東京のRCCの本社には「顧問室」があり、秘書や専属車両もあったそうだ。ほとんど出社しない人物にである。 RCCの無駄遣いは弁護士だけではない。本誌12月号のRCC座談会では、旧京都支店に非常階段を中坊の鶴の一声で設置したにもかかわらず、1年ほどで引っ越ししたり、大阪支店では特定の地域で仕事をする時は「危険」ということで、意味不明な手当てがつく実態を告発された。 「それを言うなら年俸でしょうか」 と現役社員の一人は言う。この社員は破綻した金融機関に勤務していた。 RCCでは古い部類の社員だという。「破綻した金融機関を辞めた時点で、約900万円の年収でした。RCCでもそれくらい保証されていた。順調に昇給している。破綻金融機関の人を雇った時、前職では1500万円もらっていたとします。そうすると、RCCでもだいたいその金額を保証していた。今はさすがにシステムはかわりましたが」 いかにRCCが充実した職場であるのかよくおわかりであろう。 今年11月、RCCの元社員が福岡県警に逮捕された。2000年5月に集金した2700万円を使い込んでいたのである。つまり4年近くも発覚しなかったのだ。 「不透明な金の流れはよく噂される] とRCC現職社員は言う。 とりわけ、不動産業者からはRCCへの批判が多い。RCCが不動産を売却する場合、当然、業者が関与する。その業者が特定の社員や弁護士となんらかのつながりがあるというのだ。 大阪にA社という不動産と不動産管理を手掛ける会社がある。A社は、弁護士BがRCCの仕事を手掛けるようになって、急にRCCとの関係を深めるようになった。 しかも、有限会社だったにもかかわらず、RCCの物件の管理を次々と受託。不動産の売却にも関与するようになったという。 「A社からRCCや弁護士のBに何らかのキックバックがあるなんて、怪文書が流れたことがあるほど」 と現役社員は声をひそめて話すのだ。 前述したように、国会で河村議員が鬼遣に社長の年収の聞いた。 「お役所の次官以下、同額ないし以下」 と答えている。おおよそ2500万円程度とみられている。 これが正当な金額なのか。 そう遠くない目、答えが出るだろう。 |