「デイリータイムズ」連載・糾弾レポート<第23弾>
伏魔殿 整理回収機構(RCC)の正体
「罪と罰」を問う

ジャーナリスト・今西憲之
“国策会社”とは名ばかりか。
RCC、お得意の回収訴訟のやり□
【2006年8月号】
 「何も関係のない過去の逮捕歴を指摘。おまけに起訴されていない刑事告訴まで持ちだして訴訟を有利に運ぼうとする」と、RCCのやり方に怒りを顕わにする原告の一人、大山進氏。RCCのなりふり構わぬ回収訴訟の実態を公開する。


京都市内にある何有荘(かいうそう)
 関係のない逮捕歴等を並べ立て
 訴訟を有利に運ぶ不当なやり口
 直接、争いとはまったく関係ないのに、どの申立書や訴状にも並ぶのは、逮捕歴や違法開発などの履歴が並ぶ。
「極悪人のごとく人を陥れようとするRCCのやり方には憤慨するばかりですわ」
 と怒り心頭なのは、京都市で日本工業という会社をかつて経営していた、大山進元社長である。
 大山元社長は、平成17年2月に詐欺などの容疑で京都府警が逮捕。京都の南禅寺に隣接した景勝で知られる明治時代の邸宅「何有荘」(かいうそう)の売買を舞台にした詐欺容疑などだった。一審で実刑判決を受け、現在は控訴中だ。

RCCに対して怒り心頭の日本工業元社長の大山進氏
 大山元社長と率いていた日本工業とRCCの関係は、旧住専の日本住宅全融から、253億円の債務が認定された平成8年にさかのぽる。
 その全額が不良債権と、当時は認定されていた。また、その後、取引金融機関である兵庫銀行や朝銀が破綻したために、負債は380億円までに増えていた。
そして、今年1月にRCCは380億円の返済を求めて、京都地裁に民事提訴していたのであった。
  その過程で、RCCと大山元社長はさまざまなやり取りがあった。RCCは大山元社長に対して、いくつもの申立や訴訟を提起している。そこに、いつも出てくるのが、冒頭でも触れた逮捕歴なのだ。
 平成17年11月にRCCが大山元社長に対して、破産を申し立てた。破産の申立書に<別紙 申立の理由>という書面が添付されている。
<これまでに複数回の逮捕歴がある>
<京都市内の違法開発に関与した人物> と書かれている。
「ここに、大きな問題がある。逮捕歴と破産のどこが関係あるのか。悪い印象を与えて訴訟を有利に進めようというRCCの汚い手法がみてとれる」
 と大山元社長は言う。
<別紙 申立の理由>には、逮捕歴や違法開発について、具体的記述がある。<昭和4711月(中略)京都市建設局治水課に押しかけて、脅迫、恐喝、傷害の容疑で逮捕された>

<昭和57年、京都市左京区岩倉の一条山の開発工事を下請けし、一条山の山肌を削るなどしたところ、工事中止命令が出された>
<通称「すり鉢池」を上記一条山から削った土砂で埋め立て、宅地造成し、申立外日本工業が自社の上地として登記した。
国は、昭和60年に上記造成地が国有地であることを確認を求めて提訴し(中略)勝訴が確定。(中略)平成10年11月に代替執行により石垣などを強制撤去した>
<平成5年3月、信用組合朝銀京都の関与した導入預金の容疑で逮捕された>
<平成17年2月25日(中略)不動産の任意売却に絡んで、不動産業者から1億円を詐取したとする、詐欺容疑で逮捕>
 刑事事件の証拠書証を読んでいるような内容が記述されているのだ。

“国策"とは言うものの
目立つご都合主義の言動



当時“モヒカン山”と呼ばれるほど
無残な姿になった一条山
 しかし、大山元社長が、「何有荘」の詐欺事件で逮捕された時の弁護士作成の最終弁論を読むと、<被告人の有する前科は詐欺、恐喝等の1犯であるところ(中略)判決の日が昭和40年3月31日である> と書かれている。
 RCCが主張する、昭和47年の脅迫、恐喝事件や今回の詐欺事件とはまったく日付があわないのだ。
 そこで、RCCが主張する事件について、新聞記事を検索してみた。
 平成5年3月の導入預金の件では、確かに大山元社長は大山府警に逮捕されていた。しかし、その後の記事を見ると、一緒に逮捕された人物も含めて、処分保留で釈放となっている。大山元社長は最終的には不起訴処分だったのだ。昭和47年の事件も、逮捕はされたが不起訴となっているという。
 つまり、逮捕はされたものの、罪には問われていないのだ。
 「最終弁論に書いた事件だけは、有罪になっています。しかし、後は逮捕事実はあるが、起訴されていない」
 と大山元社長は話す。
 この時、RCCは、逮捕が報道されている新聞記事を証拠として出してきたという。少し探せば、平成5年の事案については、釈放されていることがすぐにわかる。通常2週間の拘留期限がつけられるため、それを目安に探せばいとも簡単にみつかるのだ。そんな初歩的な確認作業も怠っていたのである。
 RCCはこの申立で昨年、大山元社長が逮捕された時の冒頭陳述などについても触れている。おそらく裁判を傍聴していたのではないかと推測される。となれば、最終弁論で大山元社長の弁護人が、自らの犯罪歴について意見を述べているわけで、そこで確認できたはずである。
 大山元社長は、1通の不動産登記簿を差し出した。土砂で宅地造成をしたと指摘されたところの土地だという。読むと、RCCが指摘する「日本工業」名義の土地はどこにも存在しない。大山元社長の個人名があるだけである。不動産登記簿も確認せずに「虚偽」ともいえる理由で、破産を申し立てたことになるのだ。
 「一条山の開発も、うちは請け負ったような契約はないです。モヒカン山と呼ばれる無残な状態になったことが、私の破産事件と何の関係もありませんよ。昭和47年に逮捕されたといいますが、その後うちは怒鳴り込んだはずの市役所の仕事をずっと最高ランクで請け負いました。逮捕されるような悪質なことをしていれば、仕事をもらえるわけがありません。ちょっと調べてもらえばわかることだ」
 と大山元社長は怒りを隠せない。
 このような「逮捕歴」や「違法開発」の記述は、これまで検証した「破産」以外にも民事裁判、保全命令、保全処分などいくつもの訴訟や法的手続きについてもほとんど同じような記述がある。しかし、逮捕歴や違法開発が請求とどのような関係があるのか、触れられていない。
 前出の「何有荘」に絡んだ宗教法人「大日山法華経寺」の解散命令申立書および、所有権保存に開する争いの民事訴訟では、大山元社長は「相手方」にもなっていない。

 「訴外 大山進」として、逮捕歴などが書かれているのだ。
 「訴訟と関係ない人間の逮捕歴まで触れ、しかもそれが虚偽の可能性があるという。RCCが債権に関する民事訴訟を提起したのも、同じ京都地裁。繰り返し、裁判や申立を逮発し、逮捕歴などを書くことで、大山元社長は悪人だと裁判所に印象づけ、債務返済交渉を有利に進める思惑があったのではないか」
 と大山元社長の弁護人はそう指摘する。
 そして、大山元社長の裁判資料を通読すると、こんな記述があった。大山元社長側が
<新設の国策会社>と指摘すると
<「国策会社である」という意味は不明> とRCCが回答しているのだ。
 RCCが国策会社であることは知られている。平成10年3月20日の衆議院大蔵委員会で当時のRCC社長、中坊公平氏は
 「資本金二千億円は金額国出資ということでありまして、国策会社であります」
 と自ら国策会社であることを認めているのである。
 しかし、RCCの別の代理人は「国策会社」という指摘を蹴っているのだ。
 一貫性がない、ご都合主義と言わざるを得ない国策会社である。(続く)