「デイリータイムズ」連載・糾弾レポート<第12弾>
伏魔殿 整理回収機構(RCC)の正体
「罪と罰」を問う

ジャーナリスト・今西憲之

平成の悪代官と呼ばれる整理回収機構RCCの罪
特別座談会(前編)

【2005年9月号】 国策会社でありながら、血も涙もない取り立てを行い続けるRCC。その横暴
な手口には、多くの債権者が苦しめられている。衆議院議員の原口一博氏と佐々木憲昭氏、そして弁護士の椎名麻紗枝氏が「血も涙もある回収」とは口ばかりで、国民の犠牲の上に成り立っている、RCCの極悪非道な罪を問う――。
再生に成功した企業はわずか0・1% 弱者は突き落とされて立ち直れない

デイリータイムズ2005年9月号
司会 ここ最近、整理回収機構、RCCの横暴、過酷な取立でなどが、社会問題化しつつあります。そこで、本日は皆様にRCCの問題点について徹底討論したいと、お集まりいただきました。本当に国策会社かと信じがたい現状のように感じます。

左から原口議員、佐々木議員、椎名弁護士
佐々木憲昭 RCCはパンフレットで3つの理念を掲げています。契約の拘束性の追及、つまり約束通り払えということ。
次に、人間の尊厳の確保。3番目が企業再生。とりわけ中心とならなければいけないのが、血も涙もある回収。   
原ロ一博 どれも、できていない。強いものはより強くなり、弱者は立ぢ直れないまでに突き落とされる。
“RCC送り”の過酷さが国会でも何回も問題になりました。
佐々木 それは数字でわかる。今まで33万件、RCCに行っています。再生できた企業はと聞けば350件。0・1%です。1000件に1件しか生き返らない。
司会 まずそれを具体的な事例を検証しようと思います。椎名先生は個別事案にお詳しいですが、いかがですか?
椎名麻紗枝 私は銀行の貸し手責任を問う会の事務局長をしております。中坊さんは社長時代、過酷な取立てをしないと私の前で言い、当時の久保亘大蔵大臣も同じ認識でした。しかし、RCCのやり方は、自分が正義だとどんどんやります。
 先日、ある不動産会社の社長が自分の口座から1億円引き出して強制執行妨害で逮捕された。預金を引き出すのは債務者の権利。社員に給料を払い、得意先にも支払いがある。それが逮捕です。
原口 様々な方からも取引先がRCCに逮られて自分たちがどうなるのか、倒産した、廃業を余儀なくされたなんていう例を聞いた。
椎名 まったく借金をみたこともなかったAさんという人がいます。いとこに勝手に印鑑を押されて信用組合からの借金の連帯保証人にさせられ、組合が破綻して、RCCに送られた。RCCの強引な取り立て。息子さんや娘さんは心労もあってか大病を患い、息子さんはガンで抗がん剤の治療に280万円もかかるという状況。
 そこでRCCが言ったのは、自宅を除くすべての不動産プラス3000万円を支払えば、自宅だけは勘弁してやる。3000万をどうやって用意しろというのか。
佐々木 血も涙もあるって言う以上、債務者というよりも被害者というほうがいいかもしれない。RCCはこれらの方々からもっと事情を聞くべきです。RCCの基本は回収ではなく、人間の尊厳の確保ですよ。
椎名 Aさんは1審では敗訴して、現在は控訴審です。しかし、RCCは控訴審も絶対に勝つんだとばかりに、強制執行してきた。もし、控訴審で逆転判決が出たらどうするのでしょうか。その判決にしても、はっきり言って、銀行員はうそばっかり言っても、裁判所は信用できると判決を書いている。総じて、銀行員の法廷の証言は信用できない。
佐々木 東京の大田区の下町の信組が破綻して、あの時もパニックになっていた。RCCにいくと死刑判決だと。なんとかRCCに送られたくないと、いつもは工場で油まみれで仕事している方々から、必死の思いの相談がたくさんありましたよ。
椎名 Aさんの場合は、抵当権を設定していないものまでRCCは競売をかけ返済を求める。こんなこと、どんな悪徳銀行でもありません。ある人は、連帯保証人となった息子の給料を差し押さえ、ロ−ンを組んでいる自宅を仮差押する。公務員のようなカタい仕事している場合なら、これだけでクビです。とれるなら手段を選ばない、闇金融でもやらないことまでRCCはやっています。もう主債務者は、言い方は悪いが、すべてを差し出すことを余儀なくされダシガラでとれない。そこで、連帯保証人にいく。RCCの取り立て、
第ニステージだと考えます。
司会 RCCは他人、債務者には厳しいが自分にとても優しい。それは原口議員がお詳しいのではないでしょうか?
原口 RCCの不動産物件の管理は特定の会社が大量に受注しています。ある時、関西でB社という会社がRCCの別物件をたくさん手がけていると聞き、調べた。すると得体の知れない不透明な自己競落がある。また、RCCが売却する不動産も、ある特定のRCCにコネがある不動産業者ばかりに集中しているという事実もあります。今年春には九州で元社員が逮捕され、一審で実刑判決まで受けています。国会で私かそのことを質問するためにRCCに資料を要求したのですが、出しません。おまけに、その社員を雇っていたという使用責任がRCCにあるとして、被害者に弁済をするというよそれは国民の税金です。そして、ご存知の通り、RCCの創業者的な存在である中坊公平元社長が大坂府堺市の土地取引で詐欺的な回収を企てたと、起訴猶予という処分が下されています。がけの土地に抵当権を有し、それをタテに他の債権者を騙した事案というか犯罪まがいのこと。しかし、それに関与した社員はまだRCCで管理職として仕事をしているそうです。
佐々木 国民の損失を最小限に、二次負担をかけませんと言っていたRCC。それなのに、自分で仕事をやらず、なぜか債権回収会社に債権を売却している例もあるようだ。

 買い取った大手銀行の不良債権を転売、その後はすべてが「闇」にまぎれる


司会 最近では大手銀行が不良債権減らしのためRCCに債権を売り、RCCが取り立てる、または債権をまた別の会社に売却する例がありますね。
佐々木 とにかく不良債権はRCCにまわす。銀行は経営者を支援、支えながらく回収するという本来、不可欠な使命を放棄している。
椎名 大手銀行がRCCに債権を売却している話ですが、筆頭は東京三菱銀行ではないか。東京三菱の幹部がRCCの役員だったこどもあるからか。結構高い値段でRCCに買い取らせ、それを、再度自社の債権回収会社に買い取らせる。
原口 これで表向きは不良債権は処理された形にはなる。しかし、結果は先送り。隠しただけで積極的解決にはならない。
椎名 株主総会、連結決算などの対策ではないでしょうか。
佐々木 いま、債権が買取などで移勤した場合も、まったく債務者には知らされず、急に手紙が届いて驚く債務者が多い。
ある日突然、横文字のサービサー(債権回収会社)から手紙が届いでどうなるのかと、不安げな人が多くいる。確かに、通知の義務は必要ないと法にはあるそうです。しかし、血も涙もある回収なら、通知すべきだと思います。
椎名 その関係で申しましたら、RCCは絶対に債務をいくらで買ったかいいません。回収交渉に同席して、一度、債権の購入額を教えろと迫ったら、商売だって仕入れ値段を教える人はいないでしょうとRCCの弁護士は言いました。それが国策会社で仕事する弁護士の言う言葉かと驚きました。私はあこぎな取立てを規制する方法として、いくらで買ったかという債務者の情報を開示する法規制を考えていただきたい。
原口 私はRCCに対して、闇と手を結ばないということが重要だと申し続けていた。しかし、債権の購入全額も闇の中。それが先日の国会で、担保のない債権を1000円で購入していることがわかり、平均で600万円も1000円で買った債権で回収している。先ほど申しました管理会社も闇。いろんなものが、闇にまぎれている。
佐々木 RCCは小泉内閣の不良債権処理を銀行に代わってやっている。その影で中小零細企業はどんどんつぶれ、小泉内閣は不良債権処理が進んでいると、喜んでいる。つぶれた中小零細企業は被害者ですよ。重要な社会問題と、とらえる必要があると思いますね。
原口 私が先に話しました、大阪の堺市の詐欺的回収についてRCCに質問しようとしたら、そこのけそこのけ、若い議員が何を言うんだとばかりにRCCのお偉い弁護士がやってきましたね。国家権力を背景に、より強引で無茶な手法がまかり通っていいのでしょうか。
                    (以下次号)