「ディリータイムズ」連載糾弾レポート<第1弾>
伏魔殿 整理回収機構(RCC)の正体
「罪と罰」を問う

ジャーナリスト・今西憲之
取立て屋と化した伏魔殿RCCの正体
  【2004年9月号掲載】債務者を無視して自らに都合の良い取立てを行ってきたRCC。その悪事の巣窟、詐欺のデパートは、名うての弁護士を揃えて完全に伏魔殿と化している。 「詐欺的回収」も厭(いと)わないこの組織の強引な取立ての本質は一体どこにあるのか? いま、RCCの「罪と罰」を問うー。
 「起訴猶予」という名の犯罪

ディリータイムズ2004年9月号
 あちこちで車は炎上、リコール隠しで多くの人の人生を奪い、めちやめちやにした不祥事のデパート、三菱自動車。6月29日に企業倫理委員会を新設したという発表があった。5人がそのメンバーとして選出されていた。私は驚きが隠せなかった。
 委員長・松田昇(元最高検刑事部長、前預金保険機構理事長)、委員・村和男(弁護士、前整理回収機構常務執行役員)という2人の名前を三菱自動車のホームページに見つけたからだ。
 エイプリルフールの冗談かと心底思った。
 「三菱自動車はまだまだ不祥事が山積み。ちょうど、隠すにはいいメンバーやないか」
 作家の宮崎学氏は、ブラックジョークで笑いをとった。この2人の名前で三菱自動車の「体質」が、実によく読み取れるのだ。
 この2人がつい先日までかかわっていたのが、整理回収機構(以下RCCとする)。旧任専の処理のため、平成8年7月26日に弁護士の中坊公平氏が社長に就任、国策会社と呼ばれたRCC。松田氏はRCCの100%株主である預金保険機構の理事長であり、村氏は執行
役員という立場だった。
 私は、中坊氏がRCCから去り、昨年(2003年)10月には大阪弁護士会に退会届を提出したきっかけとなった大阪府堺市の土地を舞台にした「詐欺的回収」を追及してきた。
 昨年10月、東京地検特捜部は法的には不起訴であるがそれは「起訴猶予」にあたるという判断を下した。犯罪は成立するが、個人的利得にしていないと不起訴の理由を説明。つまり「犯罪」なのだ。
 私が追及した大阪府堺市の「詐欺的回収」は、RCCでは「泉北ホテル」と呼ばれていた案件だった。(別掲記事参照)

 43億円と33億円のカラクリ

 私の手元に3枚のペーパーがある。Aは43億円とある。B(2枚)は26億円と7億円で、合計すると33億円だ。日付を比べると43億円は平成9年12月Bの2枚にはRCC社長の中坊氏の印鑑が押印されている。
 先に43億円の売買が決定している土地。だが、RCCはなぜか33億円ですと虚偽の書類を作成している。その書類を、RCCは明治生命と横浜銀行に行使することで、泉北ホテルの抵当権抹消を同意させた。
 なぜ、RCCは43億円を33億円とする「二枚舌」を使ったのか。明治生命や横浜銀行より有利な条件で資金回収を目論んだ。そして回収した金は、返済として充当されたのだった。
 松田氏は、ロッキード事件で田中角栄元首相に手錠をかけたことでも知られる敏腕検事。預金保険機構を辞めた後に弁護士登録をした。村氏も弁護士だ。
 中坊氏は元日本弁護士会の会長、内閣特別顧問まで務めた、いわばミスター弁護士であり、国民から正義の味方と呼ばれた。3人とも、法のプロフェッショナルであることは疑いようがない。
 村氏は広報担当の役員でもあった。
 私の質問に、「明治生命と横浜銀行から担保抹消同意書をとっている。問題ない」と説明した。
 担保抹消同意書をとる過程をその後問うと、「詐欺的回収とは何だ。抗議する」と言ったきり、いつしか取材に応答しなくなった。
 松田氏は国会の委員会に「詐欺と言われると、どうなのか」とごまかすばかりだった。最高検の刑事部長である。
 この事案が詐欺かどうか、時の首相を逮捕したキャリアの持ち主がわからなかったとは思えない。
 そして、中坊氏はどんな弁明をしてきたのだろうか。泉北ホテルは社長直轄案件とされていた。すべて中坊氏に報告をあげ、指示を受けなければならなかった。これは中坊氏のいくつもの著書に記されている。
 「部下が勝手にやった。知らなかった」
 中坊氏はそう説明した。責任を部下に押しつけたのだ。
 それが預金保険機構やRCCでこの3人はずっと「詐欺的回収」を認めず「不適切だった」と言うばかりで、根本的な解決をする意思もうかがえなかった。
 ましてや、RCCは住専法や預金保険法で犯罪と思料される場合は、刑事告発義務を負っている。中坊氏は大阪弁護士会に退会届を出したことで幕引きをはかり、松田氏や村氏は、謝罪もなにもないままに退任。無責任なこと、この上ない。
 なおかつ、中坊氏は「無給」だといいながら、社長就任から平成9年3月まで、国民の税金(RCC)から報酬を得ていた。それは、昨年(2003年)10月の大阪弁護士会への退会届を提出したとの記者会見の時までウソを突き通していたのだ。
 いかにひどい連中か、とんでもない組織であるのか、預金保険機構やRCCが税金の無駄遣いをしているのか、国民のためになっていないのか、よく理解いただけよう。嘘をついて、多額の金を回収。「不適切」と言いわけして逃げまわった。だが、その手法は東京地検によって「犯罪は成立]と認められた。泉北ホテル案件では、東京地検への告発案件以外にも、RCCの法に触れる行為があった。次回には具体的な手法を検証する。

■事件概要
 整理回収機構は、債務者の朝日往建が所有する、大阪府堺市の「泉北ホテル用地」の売買を計画。その過程で、RCCより高順位の抵当権者である、明治生命や横浜銀行に対して、本当の売却金額44億円を33債円と伝えて、担保抹消に同意させた。そして、RCCは不当に回収金額を増やした。一昨年、刑事告発され調べていた東京地検特捜部は、昨年10月に不起訴と発表。しかし、「外形的に犯罪は成立する」という 「起訴猶予」という見解を明かした。

◆整理回収機構・RCC
 平成8年、住宅金融債権整理機構として発足。預金保険機構が100%の株式を保有するため、「国策会社」と呼ばれる。その後、組織改編を経て、整理回収機構となる。中坊公平氏は初代社長。現在の3代目社長、奥野善彦氏も弁護士。業績が芳しくないこと、産業再生機構の新設などで役割、存在意義が問われている。